うつせみ
2006年12月19日
            Company

 Companyは勿論「会社」だが、語源をたどれば共に(com=con=with)パンを食べることだと受験勉強で覚えた。「同じ釜のメシを食う」ことだなとすぐ覚えた。この原義に近い用法が客船にはある。食事の時、席を決めるRestaurant Managerに「Company Tableを頼む」と言うと、同様に希望した他の乗客と一緒の4人または6人がけの食卓にしてくれるBlind Dateだ。食事の終わりに「同席してくれて有難う」という時には「Thank you for your company.」「We had good company.」という。或る時比人のWaiterに食卓に来る予定人数を尋ねられて「Companyを頼んだがまだお相手が誰も来ていない」と答えたら「Oh, company ! Suzuki, Kawasaki !」とJokeで応じた。オートバイマニアに違いない。

 しかしこのCompanyが可能なのは、昨日下船した米Cruise会社Regent Seven Seas Cruises社=RSSC社の1つの特徴らしい。私共はこのRSSC社の船に67日と48日の2回乗船した以外に本格的Cruiseの経験はないが、他乗客から他社のことも色々聞ける。乗客同士または乗務員との人間関係を大事にするRSSC社は、経営効率をやや犠牲にして船のサイズを抑えている。乗客人数の多い他社の船では、主レストランが2部制になっている船が多いらしい。経営効率的にはごもっともだ。そういう船では食卓に半端な空席のないように、乗客の食卓も指定する船が多いようだ。更に効率を求めてMenuの選択を限定する船もある。乗客は従って例えば6:30pm(または8:30pm)に35番の食卓でA氏、A夫人、B氏、B夫人と毎晩一緒に食事をすることになる。豪華客船として売れているCrystal社の船は2部指定制と聞いた。Queen Elizabeth II= QE-IIを運行するCunard社は最近米社に身売りしたそうだ。QE-IIも遂に米船になったか。このQE-IIでは乗客に4つの階級があって、階級ごとのレストランがあり、席は指定制と聞いた。

 私達は、他船でできないことをという知識と意識は全く無かったが、折角Cruiseに出た以上は色々な人と知り合いたいという気持から、常にCompanyで食事してきた。当然若干の緊張があるので、体調の悪い時などはBy our ownとかBy ourselvesとか頼んで2人だけで、日本語で食事することも偶にはあり、また特定の乗客と仲良くなって今度一緒にと4人で食事することもあったが、大体はCompanyを続けてきた。相手は必ず外人でいわゆる「横メシ」(海外駐在員用語で横文字での食事)となる。大体は6人の食卓で2組の夫婦と一緒になる。偶に4人の食卓がアサインされた時には楽だ。相手の夫婦は当方としか話す相手が居ないのだから、必ず会話になる。6人だと外人夫妻同士の話が盛り上がり当方2人がノケモノになってしまうリスクを負う。今回も1度そういう不愉快を経験した。

 私共は、下手ながらどちらかと言えば米語に慣れているので、米人相手ならあまり苦労しない。それでも米芸能界の話などになるとお手上げだ。相手が日本文化に興味がある場合は楽だ。但しこの際勉強してやろうという気になっているから、能と歌舞伎の違い、下賀茂茶寮の料理、郵政民営化の経緯・背景、健保の問題点、土佐珊瑚の歴史とか、日本に関する正確な情報が評価され、英語の下手さ加減を補う効果がある。

 また相手に外見で良い感じを与えることも重要だ。私はTuxedo 1着、背広1着、色シャツ3着しか持ってこなかったが、ワイフは正装用に和服5式を初め大量の衣装を持ち込み、我が夫婦のオシャレ係を担当した。面白いことに正装Formalや準正装Informalの場合はあまり迷わないのに、意外にも平装Casualの晩は、何度も着替えて内外上下の組み合わせを工夫し、装身具も何度も付け替え、その努力には頭が下がるものがあった。和風に拘ることが評価を高めるようだ。絹の衣装を多用し、装身具もダイヤの大きさや数では負けるが、珊瑚や漆がモテる。但し堆朱の制作法を説明できないと駄目だ。和装を間近で見る機会も質問する機会も少ないようで、和装は大いに点数を稼いだ。おかげで夫の評価も高まった。

 Companyは冒険ではあるがCruiseの醍醐味だ。あなた達と知り合いになれて本当に良かったと本心で言って貰える場合が最高だ。逆にそう言える相手との出会いがこたえられない。              以上