らんだむ書籍館 |
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表紙 |
目 次
帰去来 帰去来 鵲 柳河風俗詩 柳河 櫨の実 手まり唄 水路 赤い小太刀 水面 紺屋のおろく NOSKAI かきつばた AIYANの歌 牡丹 曼珠沙華 気まぐれ 道ゆき 目くばせ 六騎 梅雨の晴れ間 旅役者 片足 BAN*BAN AIYANの春 白芥子 蟹味噌 蟹味噌 矢部のやん七 筑後柳河 柳河河童で 三瀦󠄀と沖の端 鹹川 林泉の鴨 沖ノ端 生家 沖ノ端の鹹川 夏の三柱宮 水船舟行 鳰 初売 魚市 千石船 童子柳河 町内 柳河風俗 月夜 昼 水郷の朝 城内 或る月夜 蟹味噌 兵児 兵児 柳河の玩具 水郷柳河 水郷柳河 朱欒のかげ 古問屋の正月 四月の巡礼 水路の五月 蛍の塔 BAN*BANの春 BAN*BANの夏 「水の構図」序文 「水の構図」跋文 後記 (藪田義雄) 挿画目次
竹林の火 (表紙) 柳河 (扉) 蟹味噌 水天宮祭 |
本文の一部紹介 |
〔扉〕 柳河
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柳河河童で
柳河、河童( で、)
三池( 、もぐら、)
大牟田( 雀) ( は、)
煤( だらけ。)
菜の花 盛り は
よかばつてん、
瀬高( 狐) ( が)
すぐ化( かす。)
童子柳河
涼しさは 水 豊かなる柳かげ 葦笛吹きて 我等行けりし
夏の照り 葦辺行く子は 魚籠( もちて 何か真顔の我にかも似る)
今ぞ見む 郷国( は 童) ( がどの顔も 我によく似る 太郎によく似る)
〔挿画〕 蟹味噌
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蟹味噌
どうせ、泣かすなら、
ピリリとござれ、
酒は地の酒、
蟹( の味噌) ( 。)
*
臼( で蟹) ( 搗) ( き、)
南蛮( がらし、)
どうせ、蟹味噌( 、)
ぬしや辛( い。)
*
酒のさかなに、
蟹味噌( 噛) ( ませ、)
泣( えてくれんの、)
死んでくれ。
蟹味噌
蟹味噌( といふのを御存じですか。 松毬のついた小さな果や蕨の芽生を)
よろこぶ山国の人には 恐らく想像の外でせう。 九州、ことに筑紫附近では、
マガニといつて 片足だけが大きな蟹が居ります。 それを沢山に捕へて来て、
生きながら搗きつぶし、真赤な唐辛を 指で摘み切つては ふりかけふりかけ、
三日ばかり 漬けて置くのです。 さうして 眼でも足でも甲羅でも 其の儘かり
かりと齧りながら、その痛烈な辛さに 涙をぽろぽろ流して 賞翫するのです。
南国人は これだからうれしい。 私もかういふ空気の中に生ひ立つて来た
のを ほんたうに誇としてゐます。
〔挿画〕 水天宮祭
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赤い小太刀
赤い小太刀をかつぎつつ
JOHN( は しくしく泣いてゆく。)
水天宮のお祭が
なぜに こんなに かなしかろ
悲しいことはなけれども、
行儀ただしく、人なみに
神輿( のあとに従へば、)
金( の小鳥のヒラヒラが)
なぜか こころをそそのかす。
街は五月の入日どき、
覗き眼鏡がとりどりに
店をひろぐるそのなかを、
赤い小太刀をかつぎつつ、
JOHN( は しくしく泣いてゆく。)
* JOHN(ジヨン)とは、他の作品に対する自注によれば、「坊ちゃん」のこと。
(もちろん、大問屋の跡取り息子たりし、作者自身をさしている。)
水郷柳河 (一部抜萃)
まだ夏には早い五月の水路( に、杉の葉の飾りを取りつけ初めた 大きな三神丸) ( の一部を、)
ふと 学校がへりに発見した沖( ノ端) ( の子供の喜びは 何に譬へよう。 艫(とも)の方の化粧部屋)
は蓆( で張られ、昔ながらの廃れかけた舟舞台には 桜の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂)
らした御簾( は 彩色も褪せはてたものではあるが、水天宮の祭日となれば、粋な町内の若い衆)
が紺の法被( に棹さされて、幕あひには笛や太鼓や三味線の囃子 面白く、町を替ふるたびに幕)
を替へ、日を替ふるたびに歌舞伎の外題( も とり替へて、同じ水路を上下すること三日三夜、)
見物は皆 あちらこちらの溝渠から小舟に棹さして集まり、華やかに水郷の歓を尽して別れる
ものの、何処かに頽廃の趣が見えて、祭の済んだあとから、夏の哀れは 日に日に深くなる。
この騒ぎが静まれば、柳河にはまた、ゆかしい螢の時季が来る。
終
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