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石橋 教 編輯 「友蘭詩・第三輯」



表紙(書名は筆記)



東宮殿下御製



友蘭詩・第三輯 列名


 東京 岡本 黄石
 東京 南摩 羽峰
 仙台 勝間田蝶夢
 仙台 毛利 竹南
 仙台 片野 栗軒
 東京 山田 新川
 大阪 緒方 南湫
 大阪 外山 軽雲
 京都 小野 湖山
 東京 岡本 随軒
 大阪 広瀬 保水
 讃岐 久保 蘿谷
 備中 池上 秦川
 大阪 山田 松堂
 讃岐 馬場 桂堂
 播磨 永富 撫松
 伊勢 松田 藤園
 近江 北脇 漁舟
 備後 村上 雨江
 摂津 摩島 虎峰
 土佐 三浦 一竿
 土佐 渋谷 香北
 琉球 柴田 小石
 備中 柚木 玉村
 京都 小☐ 華城
 京都 永松 豊山
 近江 久保 南陽
 土佐 渡邊 白鷗
 讃岐 三谷 象雲
 讃岐 山下 確堂
 播磨 内田 忘斎
 大阪 野田 石城
 仙台 伊達 翠雨
 摂津 永田 聴泉
 大阪 川上 泊堂
 河内 氈受 楽斎
 信濃 並木 梅源
 信濃 岡村 杏堂
 参州 澤野 江舟
 安芸 村上 桃村
 大阪 片岡 黄山
 豊前 藤井 愿亭
 奈良 箕輪 金波
 備中 井手 八洲
 日向 日高 紫岳
 伊予 益田 麥船
 大和 吉田 双峰
 摂津 今西 黄谷
 讃岐 椎名 南浦
 讃岐 奈良 松嶂
 土佐 濱田 石軒
 土佐 小野 峨洋
 河内 河野 尚友
 備中 大橋 晩翠
 土佐 宇田 滄溟
 土佐 山本 弘堂
 土佐 本田 天耕
 筑前 栗田 臥雲
 筑前 栗田 石癖
 大阪 矢野 五洲
 京都 谷 如意

  計 六十四家
  詩 二百五首



 明治 26 (1893) 年。(発行年月の記載は見当たらぬが、作品題等の記述から推定)
 活版印刷。
 縦 24cm、横13.5 cm、線装、本文 38葉。



 本誌の通覧、及び漢詩関係参考書での当時の状況調査からすると、この 「友蘭詩」は、大阪在住の漢詩人・石橋 教(号・雲来、弘化3(1846)年~大正3(1914)年)が主宰していた詩社の、作品発表誌のようである。

 この第三輯には、この輯のみの特別記事と思われるが、冒頭第一頁に、「東宮殿下御製」が掲載されている。 これは、当時の東宮(皇太子)たる嘉仁よしひと親王(すなわち 後の大正天皇)の近作の詩で、宮内省から報道機関等に下付されたものと思われる。
 次に、 「友蘭詩第三集列名」が掲げられている。 目次に相当するもので、本文を構成する作品の 作者一覧である。 (これは、ほぼその通りに 下欄右側に配置した。)

「本文の一部紹介」 としては、まず ① 上記「東宮殿下御製」詩を掲げ、次に ② 特徴ある作者の詩、または作品として特徴ある詩、を掲げることとする。



本文の一部紹介


   東宮殿下御製
  赴晃山途上所見  (「日光」の合成字)山に赴く途上の所見
  
  茅屋柴門隔碧河  茅屋 柴門 碧河に隔てらる
  轔々聲裡鐵橋過  轔々たる声裡 鉄橋を過ぐ
  一望田圃皆靑色  一望の田圃 みな 靑色
  白鷺紛々雅趣多  白鷺 紛々(あちこちに見えて) 雅趣 多し



  〇 小野湖山 (名は愿、京都に在り)

  弔贈正四位梅田雲濵追次其絶命詩韻
  贈正四位梅田雲濵を、その「絶命詩」を追次して弔う。
 ここに「絶命詩」とは、鹽谷 温「興国詩選・皇朝篇」中の 「訣別」の詩を指していると思われる。 起・承・結の各句末が「追次」(次韻)されているからである。

  男児何敢説寒飢  男児 何ぞ敢て寒飢を説きしか
  致力尊王与攘夷  力を致せしは 尊王と攘夷
  贈位千秋恩典重  贈位は千秋 恩典 重し
  斯心果是聖王知  斯の心 果たして 聖王知れり


  〇 小野華城 (名は善、京都の人)

  滊車過函根山
  滊車にて函根(箱根)山を過ぐ

  直穿山腹洞門通  山腹を直穿して洞門を通じ
  白日點燈過暗中  白日に点灯して暗中を過ぐ
  穏坐上知函嶺嶮  やすらかに坐し 函嶺の嶮を知らず
  火輪車似駕仙風  火輪車は 仙風にるがごと


  〇 片岡黄山 (名は哲、大阪の人)

  偶成

  苦吟存稿幾千詩  苦吟して稿を存する 幾千詩
  句欲驚人無一詩  句の人を驚かさんとたるは 一詩も無し
  三十余年何所得  三十余年 何の得る所ぞ
  従今誓上作新詩  り誓うは 新詩を作らざること


  〇 松山小牧 (名は鐵心、淡路津名の人)

  幽荘(世を避けた住居)

  容膝草堂渓水阿  膝を容るる草堂 渓水の阿(くま。曲折した所)
  柴門上鎖白雲多  柴門 ざさず 白雲多し
  午眠何結黄梁夢  午眠 何ぞ結ぶや 黄梁の夢(いわゆる 「邯鄲の夢」)
  風竹吟聲駆睡魔  風竹の吟声(風にそよぐ竹の音) 睡魔を駆る


  〇 宇田 滄浪 (名は友、土佐高知の人)(気象学者・宇田道隆の父)

  納涼詞

  日落夏山靑一螺  日は夏山に落ちて 靑一螺(とがった青い山がのこる )
  夜涼燈影漾微波  夜涼の燈影 微波にただよ
  家家團扇邀明月  家家 団扇にて明月をむか
  唱遍江南白苧歌  唱遍となふるは 江南 白苧の歌


  〇 谷 如意 (名は鐵臣、京都の人)

  聖駕回蹕于京都大本営恭賦記事
  明治天皇の旧都来臨は、京都人にとっての 大きな関心事であった。

  山収嵐瘴海収瀾  山は嵐を収め 瘴海(毒気を含む海)は瀾(あらなみ)を収む
  萬歳聲傳萬国歓  萬歳の声 伝わりて 萬国よろこ
  無限薫風吹大纛  無限の薫風 大纛(はたぼこ)に吹き
  六龍回蹕入平安  六龍(天皇の乗物) ヒツ(先ばらい) を回して平安に入る。




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