このページは冷却CCDカメラは使用していません。1997年のオーストラリア観望旅行の体験記です。
掲載した写真は自慢できる代物ではありませんが何かの参考になれば幸いです。
この記事の一部は飯能天文同好会の会報に掲載したものです。
4月30日(ツアー1日目)
私もついに南天の星空を堪能することが出来ました。‘97年4月30日〜5月5日までK星座館のオーストラリア・スターウオツチングツアーに参加したのです。6名という小人数でしたがそれなりに小回りの利いた旅をすることが出来ました。往路の機中泊は、がら空きで離陸後は3席を一人占めで横になって寝て行きました。高度1万メートルの夜明けは素晴らしく正に天国に浮かぶ感じで飽きることなく眺めていました。
5月1日(ツアー2日目)
シドニーからの入国も無事に済み大阪から別便で到着したSumie氏と合流、早速
シドニーから北北西ニュ−サウスウェールズ州のクーナバラブランえと出発しましたレンタカードライバー兼ガイドはSato氏とMr.Wister氏、約500Kmの行程は一寸疲れ気味で半分は寝ていました。夕刻やっとロッジに到着、夕食もそこそこに観測地の村営飛行場えと出かけました。クーナバラブラン中心より約10Kmの飛行場は待合室以外は灯かりはなく、その待合室の灯かりも自由に消せる信じられないほどの貸し切り状態で観測ができるとは・・
空も周囲も十二分に暗く気が付くと天空には天の川が岸辺もくっきりと静かに流れ、南十字星、石炭袋、エータカリーナ星雲、大マゼラン星雲、小マゼラン星雲など目の悪い私でも肉眼ではっきりと確認できました。何はともあれ早速機材のセットにかかりました。今回のツアーの為に購入したスカイメモR、はたして極軸の設定はうまく行くのでしょうか?
さて南極星である八分儀座はと探せども初めてなので簡単には見つかる筈はありません。極軸望遠鏡のパターンにあるσ星、χ星は何処にまた台形を形作るτ星、υ星はと探すこと十数分やっとのことで探し当てました。星図を見たら5等星台の星ですがなかなか見つからないものです。同行のベテランIto氏に観てもらったところ「まちがいない」とのことやれ一安心とその日の予定の撮影を始めました。
時刻は 21時を回っていました。透明度の良い空を眺めながらの撮影は快適でこんな経験は初めてでした。
そうこうするうちに22時15分頃突然稲妻のようにあたり一面明るくなり見回すと北北東の方向に束ねた花火を打ち上げた(打ち下ろした?)ようなうす緑色の火柱を観ました。「何だこんな時に花火を揚げて!!」「照明弾かな?」とわいわい騒いでいたのですが、これは翌日になってテレビで「隕石が落下した!!」との報道があったそうです。「翌翌日ベテランIto氏は、新聞を買い集めその一紙The
Northern Daily LEADER紙のトップに「Quick as a flash」というタイトルで一面一頁を埋めているのを見つけました。」隕石落下に遭遇しながらその時は気の回らないものです。
5月2日(ツアー3日目)
朝は小鳥の囀る声で目を覚ましました、空は透きとうるような快晴でした。
ガイドのSatou氏,mr,Wister氏の案内でCOONABARABRAN SHIRE COUNCILを表敬訪問をしました。村長さんは会議中で会えませんでした。雑談の中で、なんとガイドのMr,Wister氏はこの村の元助役さんだったそうです。村営飛行場の貸し切りはこんなところにもあったようです。
予定していたサイディングスプリング天文台訪問が案内者の都合で一時中止になっのでWarrumbungle
National Parkへカンガル―とコアラを見に行くことになりました。 サイディングスプリング天文台へ行く途中の外輪山の中の谷のような感じの公園でした。カンガルーの家族?が数組園内を飛び回っていました。野生のカンガルーをまじかに見るのは初めての経験でした。
コアラは何処かとあちらこちらと探し回りやっと谷間の岩陰のユーカリの木の上に1頭みつけました。地上10数メートルの木のまたにちょこんと座り込み居眠りをして
いるようでした。
夕刻、 Warrumbungle National Park Roadにある地元のアマチュア天文台Skywatchを訪問しました。入り口の広場にはこうもり傘の骨のお化けのような大きな電波望遠鏡が有り広い敷地にゆったりとした配置でドームと建屋が並んでいました。台長さんは星好きなアマチュアだそうで、終日一般に開放しているようです。当日は地元の人が10数人見学にきていました。へール・ボップ彗星が見えるとのことで皆んなでドームに入り40cm位の(口径を聞くのを忘れた)反赤でかわるがわる観望しましたが天候が悪くそれなりの姿でした。
観望終了後Okahashi氏は台長に頼み反赤にカメラを取り付けへール・ボップ彗星の撮影となりました。台長の好意と気さくさが感じられました。
その後突然に夜のサイディングスプリング天文台を訪問出来ることになりました。どうやらSatou氏がSkywatchの台長に頼みUniversity
of New South Walesの職員を紹介され特別に夜の見学となったようです。
Warrumbungle National Parkを通り抜け天文台の入り口に行くとUNSWの職員(名前を忘れてしまった)が迎えにきて我々の車に乗り込み自分で運転を始めました、この天文台は標高約1200m、中間点からは車のライトは点燈禁止でサイドの窓を開け手持ちのライトで車を操りながら登ってゆくのです。現場の職員でなければできないことです。
やがて案内されたのはUniversity of New South Wales Automated Patrol Telescope(UNSW・APT)でした。口径75cm
F=2 のべーカー・ナン・シュミットカメラで、焦点に冷却CCDカメラ 770×1152ピクセル(13.325mm×25.92mm)を取り付けて
2°×3°の範囲をカバーするSurvey用のカメラでした。即応体制が採られているようです。
早速スライディングルーフを開きカメラをセットして準備を始め、まずインターネットでその日の天気図を広げ予報を調べて観測に入るようです。
やがてケンタウルス座のA星を導入してくれて画像処理の実演をしてくれました。この時たまたまドイツの牧師で銀河の権威だといわれる方が2人同席しており議論をしていました。私には参加する知識が無いのを痛感しました。(残念・・)
OSはUNIXを使用しており、ソフトはMCCDと記されていました。 その高速性能は目をみはるものがありました。
二時間足らずの見学でしたが、私にとって大いに参考になりました。こんな現場は見るのも初めてで、後になりあれもこれもと質問すれば良かったのにと後悔しました。こんなチャンスは二度と無いであろうに・・
下山途中展望台から数箇所の山火事がみえました、ユーカリの木が自然発火するのが原因で、雨が二三回降れば消えるそうです。この辺では度々有ることで現地の人は気にしていませんでした。さすがオーストラリア大陸だと感じました。
その夜の天候は次第に回復し全天快晴となりました。シーイングは最高で私はこんな星空は見たことがありません、しかしItou氏によると昨年の8月のSWツアーの時には及ばないとのことで季節の違いは大きいのかなと思いました。
それにしても昨日の星の数より更に多くの星が増えたようで戸惑いを感じるほどでした。天体観望の経験も知識も浅い私にはなかなか目的の星座が見つかりませんでした。そんなことがスカイメモRの極軸合わせにも表われ昨日初めてにしては簡単に合わせられた南極星の八分儀座σ星、χ星、τ星、υ星が見つからず小一時間もかかってしまいました。
その間に写した星座は見事に流れて失敗しました。
昨日見た南十字星、石炭袋、エータカリーナ星雲、大マゼラン星雲、小マゼラン星雲などはさらに明瞭度を増していました。
この日は同行のWatanabe氏より8mmと16mmのズイコーフイッシュアイを拝借出来たので貴重な経験をすることが出来ました。
恐る恐る撮影した結果が下の円形星野写真です。ただ写したという感じですが魚眼レンズの魅力はすごいものです。周囲の暗さが更に引き立ててくれたようです。現在は製造中止とか・・
夜半過ぎにはさそり座、射手座も姿を現し私の好きな南斗六星、M22、が天の川の岸辺に遊び対岸には干潟星雲M8も認められ文句のつけようの無い星空でした。
この夜の条件は私には二度と来ないような気がして撮影の合間に仰向けになり充分に堪能しました。
5月3日(ツアー4日目)
今日はSidingSpringObservatoryを訪問しました。
右の写真はその入り口です。
正面に見えるドームは The Anglo Austrarisn Telescopeです。
この丘陵には8基のドームが立ち並んでいました。
この場所は高度約1200Mでクーナバラブラン村から見ると外輪山のように
みえるところです。
右の写真はThe Anglo Austrarisn Telescopeドームの内部で口径4Mの反射望遠鏡です。
ここの天文台の最大の望遠鏡だそうです。
夕方早めに観測場所の空港へ行き南天に回ったヘール・ボップ彗星を
観ることが出来ました。
群雲のなかの彗星はやけに大きく見えました。
この日も時の経つにつれ快晴となり観望予定の三日間ともに快晴に
恵まれました
機会があれば何度でも行きたくなるところです。