徒然に バックナンバー2 平成26年春版

このページのコンテンツはあくまでも私個人の言葉・感想等であります

このサイトは画家なごやひろしとしてのサイトで、まあ”売れない画家のホームページ”といった所でしょうか。 売れない画家だから、まあ見てくれる人も疎らなのですが。 少し弁解しておくと、チャリティー以外は安売りしないので売れないのです。 
 この前、“とあるイベント業者さん”との話の中で、私が出したサムホール展(別な業者さんの企画)の話が出て、なんでもその業者さんは文藝春秋画廊のすぐ近くにあるとかで、「・・結構売れたものもありましたよ・・五千円位からあって・・」、「え!サムホールを五千円で出しちゃうの、僕は文藝春秋さんじゃ位が高いから失礼かと思って十六万としたんだけど・・」、十六万というのは、サムホール=2.5号換算×6万6千円(去年の美術年鑑社号評価額)=165、000円、う〜んやっぱ売れるわけないですね。

(注、この話はあくまで“とあるイベント業者さん”との営業トーク上の話です。 後日届いた同展覧会報告書によると、参加作家様のほとんどは数万円から十数万を提示されておられましたことを念のため、追記いたします。)
 
 それにしてもサムホール5千円とわね、恐れ入谷の鬼子母神。 まあこれまでも、業者さんは明に暗に号五千円を求めているとは思っていました。
 もっとも、私もチャリティー展では最低入札価格を自分では指定しないので、自動的に1万2千円からのサイレントオークションとなっています。 落札価格は通知されないので実価格はわかりませんが、2万前後でしょう。 通常4〜6号の油絵を出品するので、似たようなものなのです。 そのかいもあってか、お陰さまで十年以上毎年出してますが、絵が帰ってきたことはありません。
 
因みに今年の私の絵の希望価格は号あたり6万9千円(2014年度美術年鑑社号評価額による)としているので、サムホール172,500円、20号138万円です。 いかがですか貴方様も1枚。 え? 法外?時代錯誤? いえいえ”売れない画家”というよりは、今はまだお勤めの身”まだまだ売らない画家”ですから、悪しからず。

 ところで、私は割とよく美術雑誌に出す方というか、人がいいので?ついつい営業さんの熱心さに心動かされてしまうのか、ただのアホなのか良くわかりませんが、でも、誌上とは言え、と言うより、本の上ではどれも同じサイズ・条件になり、他の絵描きさんとその作品を見比べると、多少は勉強になるのです。
 また、ごくたまにではありますが、営業さんとのやり取りの中に有益な情報を得ることもあります。 彼らは営業という立場で多くの作家を見、業界を見ているので、ある『一言』をもたらしてくれることがあるのです。
 例えば近年の私の絵は、皆、髪が黄色い女性像(一応金髪白人レディーをイメージしている)ばかりですが、それも、その「ある一言」から考えついたのです。 自分の画歴の中では成績のいい部類で今のところ気に入ってます。 
 それにしても、授業料は高いですが。
 そんな中で、去年は少し趣の変わった2冊の美術本に掲載してもらいました。 「グランオペラ2013edition」と「ザルツブルグ宮殿美術館創設90周年記念芸術選書」と言う本です。
 どちらも日本のある会社が手がけていて、そのある会社さんの話ではフランス及びオーストリアの出版社の発行で洋書とのこと、でも、“とある業者さん”は「○○社さんは○○社ですよ」と行っていますが、ただ、確かに掲載及び編纂にあたってはフランスもしくはオーストリア側の委員の承認もしくは関与が必要なことは、“とある業者さん”も認める所です。
 また、ザルツブルグ宮殿美術館芸術選書の方は、ザルツブルグ宮殿美術館創立90周年記念事業の一貫ということで、同美術館さんが直接監修に携わり、同事業実行委員会が発行人となって発行した、『学術書』とのことです。
 ただ私にとって一つ残念なことは、どちらも、所謂『日本の洋画』が少ないことです。 物故作家は幾らか有名どころを抑えてますが、現存作家ではトップはOさんくらいで、ちょっとさみしいのです。
 みんな稼いでいるのだから、出してくれればいいのにね。 まあ日本ではほとんど一般に売られてないので、宣伝効果がないと敬遠されたのかもしれません。
 それとも、現地委員の方が「造形」を嫌ったのか? どちらがどちらかは分かりませんが、所謂「造形」的作品が見当たらない『日本人作家の本』になっています。
 そんな訳で、最初去年の夏に、グランオペラが来た時は、『なんじゃこりゃ、これじゃ、あの実に甲高い声であまりの熱心な営業にいつも苦労する「ビ・・」と大して変わらない、「ビ・・」さんの“豪華保存版”じゃないか』と思ったのです。 まあよく見ると、もう少しいい本ではありますが。 『まだ「アー」さんの方が有名どころを抑えてるな』、と。
 それから半年経ち、今年の1月になって、「ザルツブルグ宮殿美術館芸術選書」がやってきました。
 こちらの方は、ザルツブルグ美術館さんの所蔵品、かの有名なルーベンスやクリムトなどの作品と日本の作家の作品とか交互に配され、日本の作家も葛飾北斎など浮世絵から始まって現代作家オノヨーコさんまで、実に幅広い収集となっておりました。
 そしてその配置に実に繊細な感覚を感じ、ある格調を醸し出しておりました。
 私には、この本は彼らにとって一つのアート作品で、ある何事かを表現するコンセプトを持って作られたように感じました。 その並べ方にいつかテレビで見たフランスのインスタレーション作家の『ソファーなどを配して室内空間を模し、古着を並る』作品の古着の並べ方に近いある波動を感じるのです。 もっともこの感想、私が絵描きだからで、編集者は『学術的見地』にたって、というかもしれませんが、それはともかく、そこにはヨーロッパと日本の美術芸術の本質的違いが覗われるような気がします。
 しかし、またしても現代日本作家の顔ぶれにはグランオペラと同じ傾向が見られました。 同じ日本の会社が取り扱ったので、それは当たり前で、その傾向はある意味『偶然そうなった』のかもかもしれませんが、でも二つも続くとね。 つい余分なことを考えるのです。 悪い癖ね。
 所で、その本には表彰状なるものがつていました。
 訳文には、「特別芸術大賞」・・我々はこのたび名誉を授けます・・、『さすがは宮殿!名誉を授けると来たぞ』、まあもれなく付いてくるのだろうと思ったのですが、営業担当者は「もれなくではありません。各部門数人の方だけです」と言っておった。 まあ話半分でも「佳作か特選」ぐらいの意味はありそうです。
 それから数日して、今度は昨年のグランオペラの分の賞状が送られてきました。
 正直少し驚きました。 無論本が来てから半年も経っていたせいもありますが、『日仏文化交流芸術大賞』・・貴方は厳正に審査された・・』、「え!厳正に審査しちゃったの?○○万も出して、普通、無鑑査じゃないの?」
 もしかして?、もしかすると、彼らは日仏文化交流をうたいながら、日本の現情を考慮せず、彼らの信念を貫いたのかしら?
 まあね、賞状記名のガブリエル・クロシュナーさんはザルツブルグ宮殿美術館の館長さん、片やジャン=ジャック・ブルトンさんは、昨年9月までフランス国立美術館連盟の会長さん。 「アッパレ!ヨーロッパ」というべきでしょうか?
 私は日本人なのでこれ以上はやめときましょう。
 それにしても残念なのは両本とも日本では一般には手にしにくいところ、特にザルツブルグ宮殿美術館芸術選書の方は、同美術館が他の美術館さんや文化施設に寄贈だけとの話で、今のところ日本では『新国立美術館』さんが収蔵を決定してる位との話ぶり。
 モッタイナイ実にモッタイナイ、日本の作家から集めた金額ぐらいでは到底元が取れそうもないじゃないか?
 いやそれよりも、メートル法を批准して、世界標準のものづくりを志し、ついには、トヨタ車が世界一になるなど、大きく発展してきた日本工業界に対して、ややもするとガラパゴス化を揶揄される日本美術界。
 戦後その始まりに、ややもすると『反西洋的コンセプト』を持って、発達してきたせいもあるかも知れません。 また、「欧米で売りたければ、欧米へいけ」とおっしゃる人もおられるかも知れません。 現に多くのアーチストさんは海外で活動されてます。
 でも、日本は加工貿易立国、海外で何かを売らなくちゃ、暖をとる油もままならない。 モデルさんが風邪ひいちゃうかも?
 どこかで日本も、文化の面において、その伝統的尺度は大切に残しながらも、現在、世界の美術市場の元となっているヨーロッパの美術芸術の価値尺度と整合性をとって行く事が、日本美術界の将来の繁栄にいくらか寄与するのではないかと思います。  そのヒントがこの本の中にあると思うのです。
 こう言っちゃなんだけど、『可愛い』は物体の外見的特徴に喚起される感情で、芸術・美術の本質にはならないぞ。
 もっとも、私ですらそう思うのだから、彼らは少し出来すぎたと思っているかもしれません。 母国の美術家たちを守るため、基本的には仲間内の美術館さんだけで所蔵することにしたのかもね。
 去年、私が会員に入れてもらっている団体の海外展が、フランス・サンジャカップフェラ市で行われ、国内展に出した絵を巡回したのですが、その報告書に、向こう側のコメントが載っていました。
 『洋画のマテリアルや技法・・モチーフが西洋的・・であっても・・欧米作家とは根本的に違う・・フランスにおける今回の展覧会は、こうした意味で日本作家に有利に働いている・・』
 サンジャカップフェラ市はモナコ公国との国境に近く、ある意味地方都市なので、やや保守的傾向が強いせいかもしれません。 また、言い回しがなかなかに難しく、よくわからない言葉ですが、「少し日本人作家とその作品に対して少し『脅威』を感じたらしい」と思うのは考えすぎでしょうか。
 もっとも、美術館で作る学術書なるものが、「そういうもの」なのだけ、かも知れませんが。
 でも、もう一つ関連して気になることが、この本の寄贈先に、『中国及び韓国の各都市の美術館及び文化施設において学術書として活用される』との記述があること。 
 彼らの方が日本の作家よりも貪欲にこの本を活用する可能性があって、また負けるかも?

 最後にもう一度言いますが、これは私個人がその悪い癖で、感じるまま徒然に書いた一文です。 気を悪くなさった方にはここに深くお詫び申し上げます。 申し訳ありませんでした。 くれぐれもお気になさらぬようにお願いします。

 勿論、私も、「かくも素晴らしい本にご掲載賜ったことは、この上ない光栄であります」と思っております。


平成26年2月吉日 徒然に
なごや ひろし