トレーニングでの怪我について




 私自身が過去に経験したトレーニングでの怪我についてまとめてみました。間違った練習方法の一例として読んでいただければ、と思います。



目 次

  1. ベンチプレスによる肩の故障

  2. スクワットによる膝の故障



ベンチプレスによる肩の故障



 私がトレーニングを開始したのは、大学1年のときでした。高校時代に空手部で鍛えていたため、入部してすぐに70kgを1回挙げることができたのですが、2〜3年目にかけて100kgの壁をなかなか越えることができずにあせっていました。このときに、ひどく肩を痛めたことがありました。腕を肩より高く上げられないくらい、ひどい痛みでした。

 今考えると、原因の1つはベンチプレスのフォームにありました。当時は、正しいブリッジに関する知識が全くありませんでした。大会で他の選手がブリッジを組んでいるのを見て真似してみたこともあったのですが、とてもベンチプレスがやりずらく、好きになれませんでした。当時は少しでも記録が落ちるようなことはやりたくない心情でした(周りにライバルが大勢いたのであせっていたんだと思います(^_^;)。肩甲骨も絞めず、肩を全く固定しない状態で、フルレンジでトレーニングしていました。このため、ベンチプレスといっても肩に大きな負担がかかっていたことになります。

 2つ目の原因はトレーニング量の多さからくるオーバーワークでした。当時は、胸で3種目(フラットベンチ、インクラインベンチ、ダンベルフライ)、肩で3種目(バックプレス、サイドレイズ、リアレイズ)、上腕三頭筋で2種目(フレンチプレス、プレスダウン)を組み合わせて、週2回行っていました。セット数も各種目3〜5セットと多く、全種目フォーストレップまたはチーティング付きで追い込むようにしていました。ほとんどの種目で酷使される肩は、簡単にオーバーワークになってしまったものと考えられます。雑誌の影響で、超回復は48時間で起きる、筋肉が大きくならないのは練習量が少ないからだ、と本気で信じていたので、練習量を減らすこと=筋力低下という恐怖心から、練習量を減らすことができませんでした。あの頃は、プロビルダー達がステロイドの使用を認めるようなコメントはしなかった時代で、雑誌に載っているトップビルダーの練習メニューを真似して練習していました。

 3つ目の原因は1レップスしかできない高重量を毎回使用していたことでした。少しでも記録を落とすのが不安で、毎回のようにMAX重量を用いていました。今思うと、筋肥大には意味のない練習で、腱や肩の中の小さな筋肉などをひたすら痛めつけるという無駄な努力をしていたことになります(;o;)。

 結局、練習をしばらく休むことと、練習量を一時的に減らすことで回復したのですが、学生時代は同じような練習を続けていましたから、常に肩に痛みを抱えた状態で、それが普通だと思っていたものでした。今では、全く痛みがない状態をキープしつつ記録を伸ばせていますから、いかに練習方法が間違っていたかということがわかります。ベンチプレスで記録を伸ばそうと思ったら、ブリッジを習得することと、筋肉の小さい肩のオーバーワークを防ぐことが重要だと考えています。

 今にして思うと回復力の個人差というものを実感できる経験でもありました。当時、同じようにトレーニングしても記録を伸ばしてゆく人がいたからです。当時部員は20名くらいだったでしょうか、2人くらいはこのトレーニングでも記録を伸ばしていたように思います。しかし、うちの大学はスクワットやデッドリフトに比べて圧倒的にベンチプレスが弱かったことにも、練習方法の問題が現れていたのでしょう。






スクワットによる膝の故障


 学生時代には、スクワットで少しでも記録を伸ばそうと、ボトムで膝のばねを使って上げていた時代がありました。扱っていた重量は100〜120kg程度だったと思いますが、ひどく膝をいためてしまったものでした。一番ひどいときには、階段の昇り降りするときに激痛が走り、一段ずつ痛みをこらえなければならなかったくらいの状態でした。

 原因は、スクワットのフォームにありました。バーを首の付け根付近に置き、膝を前に出しながらのいわゆるハイバースクワットを行っていました。このスクワットで、しかもヒップジョイントを膝頭より深く降ろすフルスクワットをしようとしていましたから、膝を目一杯曲げた状態まで降ろす必要がありましたし、だからこそ膝のバネを使ってしまうフォームになっていったのでした。大腿四頭筋に効かせるフォームで、高重量のフルスクワットを行おうとしたところに、練習方法の矛盾がありました。当時はこのあたりの話をまったく理解しておらず、またパワーリフティングのスクワットのフォームが非常にやりずらくて嫌いだったということもありました。ベンチプレスでも同じでしたが、体に馴染んだ楽なフォームを止めて、フォームの矯正を行うということはなかなか決断できないものです。しかし、一時的に使用重量が落ちても正しく高重量を扱えるフォームをマスターするということはとても大事なことです。

 もう1つ、膝を悪くした原因として、挙上の途中で膝を内側へ絞めるようにしていたこともありました。挙上の途中で膝を絞めると、膝をロックするような状態になります。ボトムで膝のバネを使い一気に立ち上がり、止まりそうなところで膝を絞めると、より重い重量が扱えました。しかし、このフォームは人体の構造に対して非常に無理のあるものでした。膝は一方向にしか曲がらない関節ですので、挙上の途中で膝にひねりを加えたりすると一遍に壊してしまうことになります。

 極端に膝のバネを使うことは控えるようになったものの、このフォームでのトレーニングは、『パワーリフティング入門』という本に出会う社会人2年目くらいまで続けていました。当時160kg×3レップスが練習重量としては最高でしたが、この重量を扱うと膝が痛くなり、1ヶ月以上スクワットができなくなるという状態でした(^_^;。今では、200kg×3レップスくらい扱うことがありますが、膝の痛みはほとんどありません。いかに間違ったトレーニング方法が記録の壁を作ってしまうかという悪い見本のような経験でした。

 また、あれほど痛かった膝も、今ではうそのように痛みがなくなっています。手術などしたわけではありませんが、ちゃんと直るんだということに、人体の力を再確認したような気がしています。