ギアの使い方

目　次

1. スーパースーツ

2. バンテージ

3. ベンチシャツ

4. パワーリフティングにおけるギアの歴史

• スクワットやデッドリフトで使用する、特殊な繊維でできたつりぱんのことです。
• 各メーカの特徴は以下の通りです。

  1. タイタン社
     • しゃがんだ姿勢から立ち上がる動作（ボトムポジション）が、非常にすばやく軽くなる。ただし、後半は自力で立ち上がらなければならない。
     • どちらかというと、ワイドスタンスで膝が前に出ない人に向いている。
     • デッドリフトでも、浮きさえすれば引ききれるタイプの人に好まれる。
     • 破れた場合、３ヶ月以内であれば無料交換してくれる。

  2. マラソン社（ゴールドメダルスーツ）
     • 下からの弾みはほどほどで、途中から背中を引っ張る方向に力が働く。
     • マラソン社のザンガス氏がスーパースーツの生みの親であり、世界で最もポピュラーなスーパースーツである。

  3. クレイン社、インザー社
     • 効果はゴールドメダルと似ているが、生地が柔らかく、痛みや痣ができるのを避けたい人に向いている。

• スーパースーツの使い方は以下の通りです。

  1. シーズンオフにはスーツ類は全く使用せず、筋肉作りを目指す。
  2. 大会８週間くらい前から、バンテージだけを使用する。
  3. 大会６週間くらい前から、スーツ類を腰までつけて使用する。（バンテージ＋スーツ腰）
  4. 大会３、４週間くらい前に、肩までスーツを上げてフル装備で練習する。（バンテージ＋スーツ肩）
  5. ３、４でスーツを着ながら、自分の体にぴったり合うように足、腰、肩の部分を縫い縮め、試合当日に体にフィットするようにする。

• ＩＰＦ（国際パワーリフティング連盟）のルールにより、縫い縮めて調整できる個所は決められています。
  • もともと縫製されている個所を、外側につまんで３ｃｍまで縮めてよい。（３ｃｍを超える場合は、超える部分を切り取ればＯＫ）
  • 肩ひもは、一番高いところを縫い縮めてＯＫ。（この場合も、縫いあわせた部分の長さが３ｃｍを超える場合には、３ｃｍに収まるように切り取ること）
  • スーツ類は、裏返して着てはいけない。

• 縫い縮める手順は以下の通りです。
  1. 最初にまずスクワットをする。
     • まず着てみる。簡単に着れるようであれば緩すぎるので、サイズを１つ下に変更してもらう。
     • １、２セットスクワットをすると、生地が延びてすこし緩くなる。ある程度生地を伸ばしておいてから、チューンアップへ移る。
  2. 足と腰の部分を縮める
     • ピーキングの初期には、スーパースーツを腰までつけてスクワットを行う。このときに、足と腰の部分の調整を行う。
     • スーパースーツはお尻を押し上げるものである。したがって、ばねを強くするために尻・腰の部分を縫い縮めるとともに、ばねの力を逃がさないために太ももの部分がずり上がらないように足の部分も詰める。
     • 最初は２ｃｍ程度縮めてみる。ミシンを使い、糸にはニット用ストレッチ糸を用いる。
     • 一度詰めたらスクワットをし、緩かったらまた縫い縮める。このサイクルを２、３回程度繰り返す。
     • きつくしすぎると破れてしまう、目安としては、脚とスーツの間に指が入らなくなったら限界である。
  3. 肩ひもを縮める
     • ピーキングが進んだら、スーパースーツを肩までかけてスクワットをする。ここで、肩ひもの調整をする。
     • 自分であげられるほど緩い場合は、４〜５ｃｍ程度縮めてみる。
     • 人にあげてもらって余裕があるようであれば、２ｃｍ程度縮めてみる。
     • 周りの人が頑張ってあげられるくらいが、トップクラスの丁度良いきつさである。
     • 初心者はフォームが乱れないように、ある程度緩めにしておく必要がある。
  

• スーパースーツを効かせるためのスクワットのポイントは以下の通りです。
  • スーツ＋バンテージで平均４０ｋｇくらい記録を伸ばすことができる。効果的に使えば５０ｋｇ以上まで記録を伸ばすことが可能である。この差は、主にフォームによるものである。
  • スーツはきつい方が効果があるが、自分の最良のフォームが崩れてしまうと、損をする分が出てきてしまい、記録を伸ばせなくなる。
  • スーツの効果を最大限得るためには、スーツにのしかかるような（＝スーツを押し破るような）気持ちでしゃがむことが肝心である。

• 特殊な繊維でできた細長い包帯のようなものです。長さは２ｍまでと決められています。膝にきつく巻くと、膝を曲げるときにバネのような働きをするので、より重い重量を上げることができるようになります。
• 固いバンテージを強く巻くほどバネが強くなりますが、痛くてしゃがめなくなります(^_^;。どこまで我慢できるかが、バンテージ選び・巻き方のポイントになります。
• 『アイアンレッドラップ』（黒地に赤ライン３本）が最も固いバンテージです。しかし、使いこなせる人はなかなかいないようです。
• 『ブラックデビル』『ホワイトデビル』は一般的な上級者用です。
• 『ダブルゴールドライン』（白地に黄ライン２本）は、上級者を含めて最も多くの人に使用されているベストセラーです。
• 『メガラップ』（真っ白）はややソフトで初心者向きです。世界の因幡さんも愛用しているそうです。
• ベンテージの巻き方は下記の通りです。
  
  
  1. 膝頭のすぐ上で、まず一巻きする。
  2. バンテージが１／２ずつ重なるように、５巻き程度足先へまいてゆく。
  3. 膝頭を通るように十字に巻いて、巻けなくなったら先端をすでに巻かれたバンテージの間に挟み込んで固定する。

• 特殊な繊維でできたＴシャツのことです。｢前へならえ｣のように腕が前方に無理矢理突き出されるように力が働いており、これに逆らうようにバーベルを降ろすと、布がばねのように働いて、より重い重量が扱えるようになるものです。
• 各メーカの特徴は以下の通りです。

  1. インザー社
     • 胸からの弾みが大変効果的だが、最後のフィニッシュは自分の上腕三頭筋に頼る感じになる。
     • 肩と三頭筋が強い選手（ヨーロッパの選手など）に好まれる
     • 値段が高いほど、布が堅くなる。

  2. クレイン社
     • 大胸筋が強い選手に向いており、日本人の多くの選手が使用している。
     • インザー社の特許の問題で、アメリカ国内で生産することができず、どこの国で作っているかは、クレイン社の社長しか知らない。（ちょっと不思議ですね(^_^;）
     • パワーハウスが、クレイン社から販売を依頼されている。

• ベンチＴシャツの使い方は以下の通りです。

  1. シーズンオフにはスーツ類は全く使用せず、筋肉作りを目指す。
  2. 大会４〜６週間くらい前から、ベンチＴシャツを着用する。
     • バランスを崩すおそれがあるので、必ず補助者をつけること。
     • まだシャツは緩くてＯＫ。重量が軽くて胸に付かないときは、下がるところまでで止めておく。
     • この時期は、生での練習を重視すること。
  3. 大会が近づくにしたがい、袖の部分と胸の前の部分を縫い縮め、フォームを崩さず、｢ポン！｣という感じでバーが押しあがるように調整してゆく。
     • ベンチプレスが１００ｋｇ以下しか上がらない人は、この時期においても生の練習を行うこと。そうしないと、大会前に筋肉が落ちてしまう。
     • ただし、ベンチＴシャツを使った練習だけで疲れてしまう場合もあり、何度か大会を経験する中で、自分にあった調整法を見つける必要がある。

• ＩＰＦ（国際パワーリフティング連盟）のルールにより、縫い縮めて調整できる個所は決められています。
  • もともと縫製されている個所を、外側につまんで３ｃｍまで縮めてよい。（３ｃｍを超える場合は、超える部分を切り取ればＯＫ）
  • ベンチＴシャツの胸の部分、縫製されていない上腕部分の縫い縮めは、完全に禁止である。
  • スーツ類は、裏返して着てはいけない。
  • ベンチＴシャツは、ベンチプレス以外で着用してはならない。

• 縫い縮める手順は以下の通りです。
  1. 最初にまずベンチプレスをする
     • まず着てみる。人に２〜３分かけて着せてもらえるくらいが丁度良いきつさである。
     • ２、３セットベンチプレスをしてみる。自分のＭＡＸ重量まで重くしないと胸まで降りないようではきつすぎる。
     • ある程度生地を伸ばしておいてから、チューンアップへ移る。
  2. 胸の付け根を縮める
     • 腕が前方へ出るように、腕の付け根の縫製してあるところを、少しずつつまんで縫い縮める。表につまんでも、裏につまんでも良いことになっている。
     • 何回も縫うと縫い目がたくさんできるが、これもルール上問題はない。
  3. 上腕部分を縫い縮める
     • 腕の部分がずり上がってしまうと、せっかくの生地のばねが逃げてしまうため、腕の部分もきつくなるように調整する。
     • 腕は縫い縮めるとすぐにきつくなるため、最初は１ｃｍ程度で十分である。後は、様子を見ながら少しずつ調整する。
  

• ベンチＴシャツを効かせるためのベンチプレスのポイントは以下の通りです。
  • もっともきついところに降ろすのが、バーを降ろしてゆくポイントである。降りにくいからといって軌道を変えてはいけない。
  • ベンチＴシャツは、袖の長さがひじまでであり、上腕三頭筋のサポート機能はない。したがって、しっかりとブリッジを組んで、バーの動く範囲を小さくすることも重要である。

• スーパースーツ

  1970年代後半	アメリカ、ロサンゼルスのジョージ・アンガス氏が初めてスーパースーツの販売を始める。丈夫な木綿のような生地であり、破れ易く、１０ｋｇ程度の効果しかなかった。日本では、1978年の全日本大会の頃から着用され始めたようである。
  1980年代	生地の改良、縫製の改良で破れにくく、効果の大きな商品が市場に出回り始める。

• ベンチＴシャツ

  1980年代半ば	アメリカでベンチＴシャツが登場する。しかし、ＩＰＦが使用禁止とする。
  1990年代	ＩＰＦから使用が許可されるとともに、生地の改良、縫製の改良で破れにくく、効果の大きな商品が市場に出回り始める。

• バンテージ

  1970年代	スクワットの記録を伸ばすために、薬局で販売されている包帯を膝に巻く選手が現れる。試技のたびに、ビリビリと破れるようなものであった。
  その後	アメリカでパワーリフティング用に開発されたものが、日本へも輸入されるようになる。

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