大豆イソフラボンが女性ホルモンの役割を担う 更年期を迎えた女性の味方 2002.9.27 |
更年期を迎えた女性の味方 京都大学名誉教授 家森幸男 みそ、豆腐、納豆、豆乳などが海外でも健康食として注目されています大豆に含まれるイソフラボンが、更年期障害や骨租しょう症の予防に効果があることがわかってきました。東京・日本橋の三越劇場で開かれた「日経健康セミナー21」(第十九回、主催・日本経済新聞社、後援・厚生労働省、協賛・マルサンアイ) 脳卒中や骨折を防ぐ 寝たきりの原因は脳卒中、骨租しょう症による骨折の順で多く、一方、痴ほうの主な原因は脳血管性痴ほうという、脳卒中が形を変えたものです。 寝たきりや痴ほうも大豆で予防できます。女性は閉経を迎えると、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など血管の病気を引き起こす血圧、血清コレステロールの数値が上がりますが、日本や中国の女性は、欧米の女性に比べて大きな上昇は見られません。大豆をたくさん食べているからです。 大豆の胚(はい)軸部分にはイソフラボンという女性ホルモンに非常によく似た物質があります。実験の結果、イソフラボンには イソフラボンの効果 @ 血圧の上昇を抑える A 骨からカルシウムが抜けるのを防ぐ B 肥満を抑える などの働きがあることがわかりました。更年期を迎えて体内で女性ホルモンを作れなくなった女性にとって、イソフラボンはその代わりを担ってくれるのです。 血液循環をよくする 沖縄の長寿を支えているのは、大豆を中心とした食生活にあります。しかし同じ沖縄出身者でも、ハワイへ移住した人はより長寿になり、ブラジルに移住した人は短命になるという調査結果が出ました。この寿命の差は環境、とくに食べ物によるものです。 ハワイでは豆腐やニガウリ、サツマイモなど沖縄の食材がすべて手に入ります。しかも食塩の摂取量が一日6cと少なく、動物性たんばく質も適度に取っています。一方、ブラジルでは、シェラスコという焼いた肉に岩塩をつけて食べる肉料理が中心です。このコレステロールと塩の組み合わせが実は問題で、血液中にコレステロールをどんどん吸収してしまいます。その結果、動脈硬化になりやすく、この地域では肥満や高血圧の割合が高くなっています。 しかし、このブラジルの更年期を迎えた女性に豆腐100cを毎日食べてもらう実験を行ったところ、3週間という短期間でも血圧、血清コレステロール値がともに下がるという結果が得られました。 これは血管を拡張したり、血液をサラサラにしたりする一酸化窒素(NO)を作り出す遺伝子の働きを、イソフラボンが助けるためです。血圧が下がるだけでなく、血液の循環がよくなることで心臓や腎臓などあらゆる臓器の機能が高まり、肌も若々しく保たれます。 野菜も忘れずに取る ここで重要なのは、野菜を十分に取らなければ、このNOが活性酸素に破壊されてしまうという点です。野菜には活性酸素を撃退する抗酸化栄養素が含まれます。沖縄をはじめ世界の長寿地域の食生活を見ても、野菜や果物をたっぷり取っているという共通点があります。 長生きには骨の健康も欠かせません。女性の骨は更年期とともにもろくなりますが、イソフラボンは骨を破壊する細胞の働きを抑え、骨粗しょう症を予防してくれます。さらには乳がんの抑制効果もあります。 乳がん細胞は女性ホルモンの一種、エストロゲン(E)を取り込んで増殖します。イソフラボンはEの代わりに細胞の受け口(ER)に入り込み、がんを引き起こす内分泌かく乱物質とERの結合を阻止します。イソフラボン自体はEの1000分の1程度と微力なので悪影響はなく、結果的に乳がんの発生が抑えられるのです。 冷奴にたっぷりの鰹節 しょうゆではなく鰹節(かつおぶし)をたっぷりかけて食べると、体にいいですよ。鰹節に多く含まれるアルギニンというアミノ酸がイソフラボンで、一酸化窒素ができる原料になりますから。 豆乳にカスピ海ヨーグルト いま流行の「カスピ海ヨーグルト」のタネに豆乳を1対10の割合で加えれば、翌日にはヨーグルトができあがるし、生臭さも消えますよ。ちなみにカスピ海ヨーグルトは家森教授がグルジア共和国から持ち帰って日本で紹介したもの。 年齢に関係なく効果がでる 年齢に関係なく、食べ続ければ必ず効果が表れます。 豆腐100c、納豆1パックが1日の目安 心筋梗塞を防ぐには豆腐なら100c、きなこなら20c、納豆は1パック50cが目安です。毎朝ヨーグルトにきなこをまぶして食べれば、一日の摂取量がおいしく簡単に取れます。 最後に運動は欠かせない カルシウムとビタミンKとビタミンDを一緒に取ることが大切です。それに骨に刺激を与えるうえで適度な運動も欠かせません。 |