うつせみ
2006年11月14日
             Opal

 日本の国の花は桜、国の蝶はオオムラサキとか、東京の鳥はユリカモメで伊東市の花は椿とか色々あるが、国の宝石があるのを初めて知った。Australiaの国の宝石はOpalだという。女子篭球の代表チーム名はOpalsだそうだ。周知のように英語では第1音節にアクセントがあって「オウパル」という。日本での「オパール」という言い方はLatin系仏語系かも知れない。Opalの語源はSanskritのUpala=宝石だそうだ。Australiaに入った途端にOpalに接することが多くなった。小さなOpalの付いたPinを店のパンフと共に無償で配る販促にも2度も出会った。世界のOpalの95-97%をAustraliaは産出している。ワイフは早速小ぶりのネックレスを買った。遠くから見て派手な赤色が目立つ大型のものに最初は興味があったのだが、胸に当てて比べてから少し小さい石を選んだ。遠慮したのかと思ったら実は「色に深みがあるから」という小さい方が高価だった。大きさよりも石の輝きで値段は変わるものらしい。

 技術屋にはAmorphousという言い方が分かりやすいが、Opalは見るからに多結晶の含水シリカSiO2・nH2Oである。Hexagonal六方晶系またはCubic等軸晶系の150-300nmの結晶を稠密に詰め込んだ形で、水が3-10%含まれている。光の回折と干渉で様々な発色となる。水溜りに浮かんだ油膜の色と似た原理だ。

 一番高価なのはBlack Opalで、地が黒いから発色が映えて深みのある色となる。これに対してLight Opalは透明からほとんど不透明の明るい白っぽい石の中に色が散在する。Crystal Opalは、透明または半透明の地の奥深くから色が見える。Boulder Opalは名の通り鉄分を含んだ赤い岩の中に産出し、赤い岩が残るようにカットされ色を添えている。ワイフはこのBoulder Opalの赤に引き寄せられ、しかし結局Black Opalを買った。産出量で見ると、60%がLight Opal、30%がCrystal Opal、8%がBlack Opal、2%がBoulder Opalだそうだ。

 Doublet Opalは、主としてLight Opalの小片を黒い基板に貼り付けてBlack Opalの趣を求めたもの、Triplet Opalは、その上にガラスや水晶を被せた3層構造なので、Opalは極く薄くて済む。EmeraldやSapphireの再結晶で成功している京セラは、合成Opalを製造しているが、天然にはないPlasticを混ぜているので合成ではなく人造だと言う人もいる。販促で我々が貰ったのはこのようなものかも知れない。

 化石の割れ目にシリカが入り込んでOpal化した化石は、科学的な価値が増す訳ではないが美しいので化石収集家に貴重がられている。

 Opalの価値はまず輝きで決まるそうだ。次に色としては赤やオレンジ色が尊ばれるが、輝きの強い青い石は輝きの劣る赤い石よりも高いという。形としては不定形より楕円のような整った形が尊ばれ、平らなものよりもドーム型の方が高価である。

 1880年代からAustraliaの奥地ではOpalが採取されてきた。Australia南部中央の砂漠の只中にあるCooper Pedy鉱山はかって大量のOpalを産出した最も有名なOpal鉱山だ。Black Opalは、南東部New South WalesにあるLightning Ridge鉱山から産出される。1900年代から高品質なBlack OpalならびにCrystal Opalが採掘され、最近も1980年代に新鉱脈が発見されて8千人が従事している。Queenslandの州都である東海岸の町Brisbaneの西千km(それでも広大なAustraliaでは東部)のQueensland西部にはQueensland Fieldsと総称されるOpal鉱山群が点在しており、Boulder Opalを産出している。半砂漠の鉄分の多いIronstoneの岩の中に鉱脈として入っているのをブルドーザで露天掘りしているそうだ。

 Australia以外では、Mexicoが産地として知られる。米国ではIdahoで白いOpalが薄い層として採掘されるのでTriplet Opalに加工されている。Nevadaからは、量はAustraliaには敵わないもののBlack Opalが産出されるので、Nevada州の宝石として指定されている。

 色と輝きが決まっている他の宝石と比べてOpalは、周囲の光や見る角度によって色と輝きが変わる神秘的な宝石だ。          以上