うつせみ
2006年11月12日
           Great Barrier Reef

 Australiaの東北部Queenslandの東に広がる海はCoral Sea珊瑚海だ。州都はBrisbaneだが日本ではCairnsが有名だ。この両市の間の、陸地から百数十km沖合いの南北2,600kmに世界一の珊瑚礁群、世界遺産Great Barrier Reefがある。通常は海岸から観光船で2-3時間沖合に出て、珊瑚礁の縁に浮かべてあるLive AboardsとかPontoonとか呼ばれる海上基地に到着する。そこで飲食、日光浴をしながらScuba Diving、Snorkel Diving、ガラス底の船などで珊瑚礁を観察するのが観光コースだ。

 我が客船Mariner号はGreat Barrier Reefの近くで一旦投錨し、乗客の半数近い266名が観光船に乗り移った。Mariner号はその後Beetlesの故George Harrisonが別荘を建てた小島、Hamilton島に移動して行った。

 珊瑚礁はキノコ状に海底から立ち上がるものもあるというが、多くは浅瀬と海側の断崖から成っている。浅瀬には小魚が、断崖には大きな魚や亀が住み、多くの生物を育んでいる。観光船は間もなく、一見して浅瀬と分かる白っぽい海の色に近づき、その縁に浮かぶ海上基地に接岸した。エアコンの効いた船で休憩したり飲食をし、鉄製2階建ての海上基地で海遊びをしたりのんびり日光浴をするという仕掛けだ。

 私共は真っ先に半潜水ボートに乗った。水上部分は潜水艦に似せてタワーがあるが、要はガラス底の船だ。半時間かけて珊瑚礁の縁に沿って往復する。干満の条件を聞き忘れたが、珊瑚礁は2m前後の水深、海側は深さ十数mだった。珊瑚の多様さには驚く。色々な種類が重なり合うように混在している。水深の関係で全て青く見えてしまうのが残念だったが、よく見ると色とりどりだ。大小の魚が泳いでいる。1.5mほどの大きな魚が通り過ぎ、海亀が甲羅を翻して行った。

 海上基地には地下室のように水中に入れるUnderwater Viewing Chamberがあり、ガラス窓の目の前を沢山の魚が行き交う。30cmほどのYellowtailed Fusilierというヒレの黄色い灰色の魚が最も多く、時々Napoleon Maori Wrasseという額が前方に突き出た2mほどの巨大な魚が通る。腹の下にはコバンザメが付いている。Wrasseはベラだと辞書にあったが、日本に居るベラとは大きさも姿形も全然違う。端のやや浅い所にはStriped Bristletoothという10cmほどの白黒縦縞の魚が群れている。

 水着は持ってきたが着替えたりは面倒だと迷っていた。しかし水は透明で綺麗だし、皆が泳ぐのを見ると泳がないと損という気がしてきて、10年ぶりかに更衣室で海水パンツになった。ワイフは見学するという。皆を真似てSnorkelとFlipperをつけ、水深20cmくらいに金網を張った水泳基地から海に出た。瀬戸内海で育った私には水中眼鏡以外は邪魔に感じられた。バタ足を前提とするFlipperは、私が少年時代に身に付けた立ち泳ぎや平泳ぎの蹴り足には向かない。Flipperをワイフに預けて伸び伸びと快適に泳いでいたら、監視ボートがやってきてFlipperを付けろという。「無い方が快適なんだ」と抗弁したが規則だと叱られた。深い所から珊瑚礁まで行ってみると、先ほど半潜水ボートで見た景色が間近に見えた。

 引き上げの時間になった。船長にMariner号はどこに移動したのかと聞いたら、360度水平線と思った一角によく見ると極く薄い島影があり、あのWhitsunday群島だと教えてくれた。時速40kmほどの高速でもその群島のHamilton島まで2時間掛かった。私共は船室に戻ることなくすぐランチに乗り換えてHamilton島に上陸した。椰子並木の美しい島で、名なり功遂げた豊かな観光客が行き交う。一戸建てや低層集合住宅の別荘が島の斜面をうめ、内陸にはClub Medを含むホテルや高層マンションがあった。不動産屋を覗くと4千uの別荘地が3億円、150uのマンションが43百万円など、日本並みの値段が書いてあった。この美しい島は例の有名な作り話を思い出させた。椰子の木陰でボンヤリしていた現地の青年と白人との会話だ。「こんな所でボンヤリしていないで何か働いたらどうか」「働いてどうする」「社会や会社に貢献すれば金が貯まる」「貯めてどうする」「静かなリゾート地でゆっくりできる」「今の私と同じことをするためにそんな回りくどいことをするのか」                  以上