テクノうつせみ
2000年 8月27日

            Microsoft.NET

 6月22日に開かれた Microsoft Forum 2000で、CEOを下りてChief Software Architectとなった Bill Gates氏が21世紀の最初の十年間にMicrosoft社が進める壮大な"Vision & Roadmap"をぶちあげた。その構想の総称を Microsoft.NETと書き、Dot-Netと読む。

 ソフトウェアの歴史は、ハードウェアから始まる下位インターフェースを上位ソフトウェアで包んで新しい上位インターフェースを提供し、次の段階ではまたその上位に...という繰り返しで、どんどん下位部分を隠蔽してきた。Microsoft.NETもその延長線上で、コンピュータ群とインターネット通信の上にこれらを覆う新インタフェースとしてNew Generation Internetを構築する。何で覆うのかと言えば、XMLで覆うのである。現在は同一PC上でもInternet参照とOfficeなどのPCアプリ実行はほとんど別世界になっているが、これを一体化するのだと理解してもよい。

 今日のインターネットは世界の3億人が活用する巨大な図書館で、大きな情報革新を世界にもたらした。それに乗り遅れそうな人との間の溝"Digital Divide"をどう埋めるかという議論が沖縄サミットの議題になり、既にどうしようもなく乗り遅れた人が大真面目に議論した。

 Librettoの最新機種が秋葉原で幾らで買えるかは二三のサイトを当たれば直ぐ分かる。すごいことだ。しかしもう一歩進んで秋葉原で一番安い価格の店がどこかを自動的に見付けて表示するサイトを構築しようとするとこれは容易ではない。現行Web頁のHTML言語は、人間には分かり易い画面を表示するが、マシンにはどれが価格でどれが型番なのか分からないからだ。これを改め、価格にはというTagを付ければコンピュータ処理が楽になるという考えでXMLが生まれた。というTagが後で欲しくなればユーザが自分で定義して使えることが特徴だ。

 このXMLを使って、インターネット上の(許可している)複数サイトを連結(Federationという)して統合的に参照でき、最低価格や日別変化を計算でき、ユーザの好きな書式で表示し、注文などの書き込みができ、(権利者は)値段の差し替えができるような世界を構築しようというのがMicrosoft.NETである。現行Webサイトとそれを参照するクライアントが(物理接続は違うが論理的には)放射状の中央処理型であるのを止揚して、網の目型の分散処理を指向すると捉えることも出来る。

 同じ伝で、会社のPC、自宅のPC、携帯PCと3台使いこなす人が、そのどれからでも、このPCをあのPCにつないでとかの意識無しに、来週のスケジュール表をいじって矛盾を来さない世界を構築しようということでもある。当然Privacyや個人確認・認証が重要になるので、"Information Agent"が働いてその管理を司る。

 .NETのためにMicrosoftは Windows.NET, MSN.NET, Office.NET, Visual Studio.NET, bCenter for.NET(SOHO用ソフト)などのMicrosoft.NET Productsを開発する。Office.NETに含まれるXMLベースのBrowsing/通信/文書作成の統合ツールUniversal Canvasは、Internet上の(許可された)文書やデータを自由に取り込み流用できる。なおこれらのソフトウェアはPCショップで箱を買ってInstallする形から、オンラインで都度ダウンロードして使うサービス形態に移行する。ソフトウェアだけでなく、旅行であれ介護であれサービス業がMicrosoft.NET上に花開く。

 そういうサービスアプリを作り易いように、Microsoft.NET Building Blocksが用意される。例えば、個人認証、メッセージのやり取り、個人別環境整備、XMLデータをWeb上で格納するデータベース、この時間は外からの接続は拒否するとかの時間管理、Web上のリソースの検索管理、使用状態に応じたソフト常駐管理や自動改版、などである。

 壮大な構想と感心しつつも、これでまた一段とユーザのMicrosoft依存が進み、Webが広まるほどMicrosoftが儲かる構図になった。独禁法の関係はどう影響するのだろうか。かってNetscapeもこういう世界の構築を目指し、但しOSは何でもいいよと言っていた。だからMicrosoftの不倶戴天の敵になってしまった訳だ。結果的に随分違う世界になりそうだ。 以上