テクノうつせみ 
1998年 5月28日

                NHK技研公開

 今年はNHK技研公開の招待日にご招待を得たのでじっくり見た。

 衛星Digitalと地上波Digitalの仕様が実質的にほぼ決まった様子だ。BSを見ている人は気付いている通り、日本はBS用にch 1,3,5,7,9,11,13,15の奇数8チャネルを国際的に割り当てられている。各チャネルの帯域幅38.36 MHzをぎりぎりに使うと、偶数チャネルの地権を持つ韓国と将来混信するから、従来は中央部の27 MHzしか使えなかった。しかしどうしてもTransponder(Transmitter + Responder 中継器)当たりHDTV=High-Definition TVを2チャネル取りたいのと、Digitalの時代には混信の心配も減るということでBS-4では34.5 MHzの帯域幅を使う。まだ国際的には未承認だが世界の趨勢だから大丈夫という。単位時間に8ビットを送る変調方式を採用すると、この帯域で52.17 Mbpsの信号が送れるので、20-24 Mbpsもあれば充分なHDTVは2チャネル入ることとなった。しかし変調で無理しているので、豪雨などでS/N比が落ちるとDigitalの悲しさでバッタリ何も見えなくなる可能性がある。そこで日頃から若干無駄だがもっと減衰に強い単位時間当たり2-4ビットの変調方式でも映像を同時に送っておいて、いざという時に受像機がそちらに切り替える。そのためにフル映像を送る訳にはいかないから情報量を絞ってある。デモでは1秒ごとのコマ送りになっていた。吉幾三がHDTVで「雪国」を歌っていたのが豪雨のシミュレーションではスライド写真のようになる。しかし歌の方は聞こえているからそれほど違和感はなく、希なケースなら許せる。

 ミソは、時分割で信号を48 Slotに分割し、Slot毎に7種の異なる変調方式が使えることで、どのSlotがどの変調を使ったかはTMCCというHeaderで自己紹介する。従って動的に変調方式を変更することすら可能である。

 ISDNは有名だが、NとBだけの違いでISDB=Integrated Services Digital BroadcastingはNHKが推進するDigital統合TVで、HDTV放送は勿論のことWebから気象庁の天気情報データベースから受像機内の大容量メモリに蓄えられた過去の放送分までリモコン一つで操れる。但しHiVision受像機より10万円位高くなるそうだ。このISDB受像機の各社の試作機をずらりと並べて、コンテンツの準備、送出装置から受像機まで一連のデモをしたのは今年が初めてで、大分まとまったという印象である。送出装置(小向)と受像機(MM研)の1台は東芝製作のものらしい。

 BS-4からのHDTV放送をCATV局で変換し、通常のテレビチャネルの帯域幅の6 MHzに詰め込んで、1本のケーブルにAnalogとDigitalとを混ぜて送る方式も展示してあった。勿論Digital信号を受ける受像機は必要だが。

 商売柄データ放送に注目すると、HTMLおよびMHEGの信号を受像機が受けており、何らかのEngineがあるものと思われる。データの制作や応答処理のシステムはまだこれからと見えた。

 欧米の衛星Digitalが、CS的な多チャネル指向に走る中で、独り日本だけが高品質少チャネル高パワーのBSを指向していることは特筆に価する。因みに日本のCSは、27 MHzの帯域幅で単位時間4ビットの変調方式で30 Mbpsを送り、これをSDTV=Standard TV 6チャネルで共用している。

 地上波Digitalの方は何千本も搬送波を使って分割して信号を送り出すことでノイズ耐力を増し、それらを13 Segmentにグループ化して各々異なる変調方式が使える。5.62 MHzの帯域で23.42 Mbpsを送り、HDTV1チャネルまたはSDTV3チャネルとして使う。送出装置はNEC製作と見えた。

 Digital以外の分野でも多くの展示があり、全部丁寧に見て回った。ポケモン騒動の結果、害のある漫画画面を自動判定して警告するシステムがあった。ニュースの身障者用字幕は米国ではベテランタイピストが実時間で入力するのだそうだが、さすが日本語ではそうもいかず、音声認識と意味論から自動的に文字化するシステムが展示されていた。見ているうちにアナウンサがとちってしまった。するととちったように適当なニュース用語を探してくるから面白い。各社のHiVision受像機とプラズマHiVision受像機をずらりと並べたのはNHKの実力であろう。今年は例年よりも展示が素人向けに易しくなったように思う。良いことだ。       以上