うつせみ
2000年12月 9日

           BSディジタル放送

 いよいよ12月1日からBSディジタル放送が始まった。MediaServe社に身を置く者としては、この日のためにデータ放送業者としての準備で女子社員まで含めてホテル泊りや徹夜で頑張っている姿を身近に見て、肩身の狭い思いをした。MediaServe社のデータ放送も1日目には色々あったようだが2日目からはキチンと形を整えた。当然と言えば当然だが、放送業者としての経験は皆無で新規規格で立ち上げたのだから殊勲甲である。

 東芝のディジタルTVにはITビジョン用にWink Engineを塔載して貰った。これも相当にゴテたが、結果的には見事にまとまった。東芝深谷工場森田氏と米国Winkに大変お世話になった。お世話になりながらこのTVを買わない手は無かろうと、予てから秋葉原を偵察していた。東芝のディジタルTVは画面の周囲にごく僅かな縁があるだけで顔が小さい。私はそのコンパクトさが気に入ったのだが、他社のと並べると貧相に見えるという批判もあるそうだ。32インチと36インチとがあって、36インチは大の男3人以上でないと持ち上がらないというから、2人で持てる32インチに的を絞った。定価430千円のところ、秋葉原の表示価格は378千円で、335千円までまけますよ、と言われた。もしやと思って別ルートを聞いてみるとそれよりはかなり安く買えることが分かり、直ちに発注した。放送開始直前の11/29に配送され、一応動くように接続して行ってくれた。今まで使っていた32インチワイドのアナログTVは秋葉原で25万円だったから、あまり違わないとも言える。日本では米国と対比してディジタル受像機は安く、アナログは高いので、ディジタル/アナログの価格比が格段に小さい。

 今はTVよりもTunerの方が売れていて、注文しても1ヶ月待たされるそうだ。Tunerなんか売れるものかと業界通から聞いて不思議だったが、アナログTVに接続を考えるのは当然である。残念ながらこちらはWink Engineは塔載されていない。アナログ受信機能がTunerには無いからだ。

 今まで使っていたTVは別宅に運んだ。32インチワイドなら2人で持てると聞いて信じていたが、どんな2人なら持てるのか聞き損じた。私と息子が持ち上げた時には、確かに持ち上がるのだが、それをレンタ・トラックに上げ下ろししたり階段を担ぎ上げる勇気は失せ、結局引越し屋に頼んでしまった。引越し屋のお兄さん2人は重そうな顔はしたが苦も無く狭い階段を抱え上げてしまった。無念!! 負けた!!

 さて米人から、60インチ以下じゃ高精細TV(HDTV)も標準精細TV(SDTV)も同じだよと言われていたが、そんなことはない。明らかに精細度が違う。一度 Mark IIに乗ってしまうとCorollaには戻れないような所がある。尤もこの差には、放送局側でHDTV信号をSDTVに変換し、受像機でHDTV画面で見るという変換に起因する画質低下も含まれる。今迄だってSDTVアナログ衛星放送をSDTVで受信するよりハイビジョンで受信する方が汚かった。アナログ地上波とディジタル衛星波と同一番組を流すことがあるが、ディジタル衛星の方が1秒以上遅れるから面白い。アナログ衛星でも遅れたがもっと短かった。しかし時報や時間表示は勿論ズレない。元の時計を進ませてあるだけか、その上タイムスタンプで同期しているかであろう。なお静止衛星の高度は37千kmだから、往復の遅れは1/4秒程度である。

 以前テレビ関係者から「BSディジタルで地上波並みの番組を流してくれれば受像機は普及するが、ハイビジョンのような花鳥風月番組では駄目」との意見を面白く聞いた。私は花鳥風月は結構好きだが、視聴率は稼げないのだそうだ。今回蓋を開けてみると、NHKは旅紀行のような花鳥風月的番組を入れたが、民放は地上波の延長でやっているように見える。視聴率が稼げて受像機が普及すればご同慶だが、ドタバタ番組になぜHDTVが必要なのかと考えてしまった。BSディジタルチャネルは一つの衛星の1/8を使っている。CSチャネルが衛星の百数十分の一を使うに過ぎないのと対比して貰いたい。上質紙のマンガ本である。つまり私には国家的無駄遣いに見えるが、マンガは上質紙でこそ映えると考える人もあるのだろう。

 映像もデータ放送も双方向性もまだまだこれからだ。器が出来てこれから料理の盛り付けを試行錯誤する段階であろう。        以上