Dioxin
二酸化炭素のことをCarbon Dioxideという。Di-はBi-と共に2を表わす。だからDioxinも塩素の他に酸素が2つあるのだろうとは思いつつ、そのままになっていた。偶々つけたテレビが2月18日のニュースステーションで、久米宏が「真に申し訳ありませんでした」と頭を下げたDioxin特集を見てしまったので、思い出して調べてみた。絵を描けば早いのだが、以下の説明で絵を思い描いて頂きたい。まずベンゼン基つまり有機化学の亀の甲羅を2つ並べる。2匹の亀の相対した前足同士、後足同士を酸素の共有結合でつなぎ合わせる。確かに酸素が2つ関係している。残りの足4本に塩素を飾る。これが基本で、亀の頭や尻尾を含めて塩素をあちこちにつなぎ変えた一群の化合物の総称がDioxinだそうだ。如何にも水にも溶けず容易に分解もしない安定した構造と見て取れる。
最初は化学工場の副産物として排出されるだけだと考えられていたが、どうもそれだけの分量では説明できなくなり、よく調べたらごみ焼却場から多量に排出されていたという。塩素イオンのある環境で有機物を燃やすと簡単に出来てしまうらしい。煙突の粉塵を除去する集塵装置が事実上Dioxin合成の反応塔になっているとも聞いた。Dioxin騒ぎ以来庭でたき火も出来なくなったという人の話を聞いて、塩化ビニルさえ燃さなければ大丈夫でしょうと言ったことがあるが、モノの本によれば自然界の微量の塩素と反応して森林火災でも微量ながらDioxinは発生するという。
テレビ朝日の最初の報道を私は見ていないが、ほうれん草を検査すると1g当たり0.7pg前後で、市販の煎茶が3.8pgだったのを一緒くたにして野菜ほかが0.65 - 3.8pgと表示したから野菜が高濃度と誤解されたという。久米宏が謝ったのをよく聞くとこの点に関してだけ謝ったのだった。所沢のほうれん草の売上がバッタリ止る騒ぎになってからテレビ朝日は3.8pgは「野菜ではない葉っぱもの」と言っていた。さて「野菜ではない葉っぱもの」とは何かというクイズに首を傾げたが思い浮かばなかった。2月18日のテレビ朝日にはその数字を出した環境研究所の所長が出てきて「お茶の場合はほうれん草と違って洗わないから高い数字が出たのだろう」と言った。煎茶がテレビに映されたのを見た瞬間ウソツケと思った。まずお茶は洗わないというのが信じがたい。例え洗わないとしても1g当たりという分母を忘れて貰っちゃ困る、生のほうれん草とカラカラになった煎茶を同じ尺度で比較出来るものか。案の定翌日の新聞にはお茶の葉を100g摘むと煎茶17gになるから濃度は17%で考えるべきだという話が出ていた。私でも(画像を見て)瞬時に気付くようなことを研究所長ともあろう専門家がなぜ気付かないのか。科学者の心を失っている。私だったらテレビ局に持ち込む前に狭山茶と宇治茶とウーロン茶の比較ぐらいはする。煎茶の値が高かったら驚いて生の葉の検査もするに違いない。科学とはそういうものだと中高生でもまともな子なら知っている。
多分この研究所は科学的な探求をする所ではなく、住民運動やマスコミの御輿に乗っておどろおどろしい数値が出ればよしとしている商売なのではないか。大体検査は自分でやったのではなくカナダの研究所に依頼したと言っていた。テレビ朝日がその商売に載せられたのだと思う。一方、あれはほうれん草じゃなくてお茶だと言えば、今度はお茶が売れなくなることを恐れたらしいテレビ朝日は、埼玉県に下駄を預けて、県が発表して初めて詳細を報道したのが2月18日だった。
これに対して国や自治体や農協やマスコミの対応がまただらしない。テレビ朝日がおかしいと思えばこのようにおかしいと科学的に議論すべきなのに感情論が先立った。議論すべきデータの持ち合わせが無かったとしたら大きな怠慢である。ただ農協は長い間秘匿していたデータを公表したし、国は厚生省と環境庁で食いい違っている安全基準を見直す動きになった。テレビ朝日が袋叩きに遭った犠牲において一歩前進した訳だ。
計らずもテレビ朝日のフライイングで、お寒い現状が分かり一歩前進したのだから、ゴロで駆け上がったニアピンに似て、「結果オーライ」と言える。惜しむらくはもっとカッコ良く処理して欲しかった。以上