うつせみ
1997年 3月24日

            Employability

 或る米人の文を読んでいたら、他山の石として日本企業の管理者にも役 立ちそうな一文があったのでご紹介しよう。

 少なくとも米国では、幹部・管理者にはEmployabilityが大事だという。部下に人を集めてきて雇う金と権限があることかと思ったら、そうではなくて、「自分が雇われる価値を持ち続けること」が大事で、常に「もし現職が空席で自分が今応募したら雇用される価値が自分にあるだろうか」と自問自答し、不足なら直ぐ磨き直さないと職を失うそうだ。

 米国では現在は組織階層が少なくフラットな仕事環境に幹部は直面しており、従って幹部・管理者の間に雇用継続性に心配が高まっている。一つの会社の中で出世していく時代ではなく、上から下まで全員が、自分のスキルをportable(移植可能、特定の会社でのみ役立つスキルではなく)にし、継続的に磨いておく必要がある。

 雇用市場では最近求職競争が激しくなるにつれ年齢の高い人は就職し難くなっている。中高年の再就職者は、エネルギッシュで若々しくなければならず、新しい環境や仕事に適応できる柔軟性が必要であり、履歴書にもそれを表現しなければならない。

 Quick studyとTeam playerはいつも要求される点である。最近の傾向として組織は融通無碍ではっきりしないことも多く、マイクロソフト、HP、インテルなどではTeam leaderがメンバより下位の人であるなどしょっち ゅうである。それでもteamでやっていける柔軟性が必要である。

 Employabilityをキープする上で必須な点は、業界での最新動向や開発内容に常に接していなければならないことである。単に部下を管理するだけの管理者ではなく、アイディアを出し事業計画を作り皆に納得させるビジョンのあるリーダが求められる。当然コンピュータは使いこなせなければならない。その習得には、報酬はどうでもよいからボランティアなどでスキルを磨くのが一番良い。

 今求人が多いのは、メディア/通信、娯楽および光ネットワーク関連である。それも中小企業のマーケティング、販売、ISに人が足りない。

 結論的に言えば、今求職で前進しようとしたら、活動的で起業精神に溢れていなければならない。以上が米人の文の概要である。

 これは厳しい。日本の幹部・管理者には、最近は大して役に立たないが 過去の業績で出世した人や、年功でのし上がった人や、部下の肩叩きが上手なだけの人が少なくない。歴史と終身雇用制のお陰で現職にあるが、改めて応募して現職に雇って貰える自信のある人は少ないかも知れない。仮定の話ながら一旦辞めて改めて応募してきたら、部下は辞めてくれたことを「ああよかった。これでお守をしなくて済んだ」と手をはたいて喜んでいて再就職どころではないかも知れない。

 しかしそういう幹部・管理者が日本では現実に多いとすれば、それは少なくとも最近のハイテク企業に限っては、日本企業の管理力が米国より劣ることを意味する。

 製造やHowが企業の業績を決めてきた時代には、御神輿に載っていてくれる上司の方が組織の力が発揮できたものである。日本の企業の強みはそこにあった。しかし残念ながら世の中が変って、情報やWhatの判断が企業の命運を分ける時代になってしまった。米国型・シリコンバレー型の企業が強い局面となり、日本の幹部・管理者も米国に学び互角に勝負しなければならないとすれば、上記のような幹部・管理者像には、環境が違うからと言って無視できないものがある。

 我々は規制緩和だ自由化だという。国鉄が民営化されてJRとなり、確かに強靭な企業体となり顧客サービスが向上した。大店法はけしからん、もっと自由化すべきだということでかなり規制が緩和されてきた。しかし一番身近な終身雇用制という規制にメスを入れ自由競争原理を採用しないとWhatの時代には日本経済は強くなれないように思える。こんなことを言えるのも、日本の終身雇用制を飛び出した後だから言えることで、自浄作用は難しいかも知れない。 以上