NHK技研公開に行ってきた。今年は皇太子殿下のご来場も前日にあったという。私のすぐ後に梶山静六氏を案内する海老沢会長が来られたので追いつかれぬように努力した。一般公開は28日から30日までである。
Winkの立場で公開を見るのは3度目になる。最初はチンプンカンプンだったが3年とは恐ろしいもので、大抵の見学者よりは詳しくなった。
順路冒頭にNHKの朝の顔、武内陶子奥様が居たので驚いたがHiVisionでニュース番組をやるとこうなる、というスタジオ機器からディレクタ数名まで揃えた模擬デモだった。感想を聞かれた武内女史が「小じわが気になります」と言ったのは傑作だった。秩父のVTRや中継も含めて本格的である。私がもし電器店主だったら今HiVisionの販売には逡巡する(Digital Adapterが高価に違いないから)と思うし、現に売上げが鈍っているそうだが、民放がHiVisionを返上したがっているのに対し最近NHKのHiVisionへの注力はすごい。BS Digital顧客獲得前哨戦でもあり、NHKへの風当たりに視聴者数で応える戦略もあるに違いない。HiVisionを私は買い兼ねてM-N Converterで見ているが、確かに最近番組が面白くなってきた。
今回の公開のテーマは「テレビにはできないことを」だった。従来のテレビでは出来ないがDigital TVなら出来るとの主張である。実際視聴者から見て従来とは全く違うテレビのイメージになるようなサービスの提案がうまくなされていた。Videoを若干右上に寄せて左と下に隙間を作り、アイコンやデータを表示するスタイルを統一した。そこに郵便番号で引く各地の天気予報や、音楽番組の関連情報検索、選挙速報などをデモした。また7 GBのHDDで40-50分の番組を記憶するHome Server付きの受像機では、見たい時間にニュースを見るような可能性を提示した。最初受像機にHDDなんてと思っていたが、先頃私は秋葉原で13.6 GBのSeagateのHDDをたった\19kで購入したから、一概に否定できなくなってきた。家庭内IEEE1394ネットワーク用の大容量Home Serverも展示されていた。
これらのデータは全てMHEGで送られている。最近NHK技研のXMLへの注力度が目立つというが、まだ仕様未定では装置までは作れない。今年は制作ツールの出展はここにはなく、NHKの子会社からDTPシステムで制作したものをMHEGに変換してScript Templateを貼り付ける展示があった。
Victor, Sanyo, PanasonicなどからHiVision用Digital Adaptorが出展されていて、それでデモが構成されている。Sonyのは組み込みテレビのように見えた。なぜか東芝の受像機出展は見当たらなかった。
階調変調もデモされていた。大雨でHDTVが見えぬほど電波が弱くなったらノイズに強い変調方式(QPSKでデモ)で常に併送する縮退画像に切り替える。昨年のデモは間欠静止画だったが、今年は600 kbpsに圧縮した動画だった。ボヤけてはいるが緊急時にはこれでもよい。
ソフトDownload方式の提案もあった。Java Virtual Machine上で(従ってJava言語で)ソフトを作れば単一ソフトを各機種にダウンロードできるという趣旨だが、「Javaは言語ですね、それがどう役立つんですか?」と質問する人に説明者が吊るしあがっていて、危うく口出しする所だった。隣ではBS Digitalの信号をVHFとUHFの間の空き帯域に周波数シフトする技術と、64QAMに再変調してCATV 2チャネルに載せる技術とがあった。
衛星アンテナの単位素子ごとに遅延線を入れて、衛星の位置がどう変わっても電子的に追随するという位相アンテナがあり、その隣に面白いものを見つけた。信号線の下に置いた液晶に電圧を掛けると電界係数イプシロンが変化してその平方根に反比例して伝播速度が変わるのを遅延線に応用したいとのことだった。信号線の片面が空気だと信号が歪むはずだとか議論してみた。ニュースを読み上げるそばから音声認識で字幕を出す技術とか、HiVisionを数倍上回る800万画素のカメラなどに技術を感じた。
今年はナレータをつけた展示も多く、一般人にも易しく理解して貰おうという姿勢が立派だった。某民放氏によれば、民放が広告代理店と視聴率を向いて仕事をしているのに対し、NHKは最も(財源である)一般視聴者を意識しているとのことだった。NHK技研も変わってきた。 以上