うつせみ
1998年 8月23日

             パソコンを自作した

 夏休みにはパソコンを組み立てるぞと事ある毎に言い触らして決心を固め、有言実行を狙ってきたが、先週目論見通りに自作に成功した。

 携帯用は東芝製に限るが、デスクトップは次の順に安く入手できる。 (1)中古品またはOutlet品 < (2)メーカの販促費で値引きされた在庫過剰品 < (3)自分で組み立て < (4)自分で組み立てる代わりに工房が組み立てたノンブランド完成品 < (5)ダンボール箱のまま指名買いを待つ「ダンボール店」のメーカ品 < (6)パソコンショップのメーカ品。秋葉原のザ・コンピュータ館の手前、昔オームのマハポーシャの信者が勢い良くビラを配っていた辺りで、最近は赤・青・黄色のB4版のビラを配っているのが上記(3)(4)の店で、地図に従って行ってみると、小汚い小さな店に所狭しとパソコンや部品が並んでいる。

 本当のベテランはヤマギワ・ソフト館裏手の「DOS/Vショップ」などに行く。買い物篭を持ってこのマザーボード、このCD-ROMと拾い集めて組み立てるらしい。しかし万一動かなかった時の尻の持って行き場がないことを心配した私は、ビラに従ってザ・コンピュータ館の道路を隔てた南隣の、梯子のような急階段を4階まで喘ぎ登った所にあるTrisalという小さな店で、組み立てキットを指定し、その一部を希望によって取捨選択して15万円払った(CRTは旧機種のを流用, SCSIとModemはジャンク屋で2万円で買った)。繁盛しているからか、在庫を抑えているのか、Pentium II (300 MHz)は売り切れで1週間後に送ると言われた。OSの変わり目に自分で組み立てるリスクを犯す以上は部品は安全サイドをとり、将来性を買ってPentium IIにした(AMDならもっと安い)。お陰で「夏休み」には間に合わず、8月17日月曜に配達された。こうなると週末まで待てる私ではなく、朝は4時・5時に起き、晩は帰宅後少しずつ手掛けて3.5日かけて木曜夜Windows 98まで進んだ。今次々とアプリを載せ環境整備中である。

 最初に箱を開けた時は心配だった。電源つき筐体はMade in China、マザーボードは台湾(ASUS)、マレーシア製らしいPentium IIサブアセンブリ、ビデオボードはカナダ(Matrox)、キーボードは韓国、FDD・ディスク・CDは日本、その他国籍不明のボード類、これらを組み立てて米国の新OSですんなり動くとは技術屋の常識が認めなかったからである。おまけに主要部品の保証期間は10日間だけである。だが結果的にはほとんど何のトラブルもなく動いた。これは驚異的であり時代を感じた。

 メインフレーム時代に、新任の生産部長が来る度に「なぜF/T = Final Test = 調整が必要なのか、部品を組み立てれば動くはず」と言われて何度も説明に窮したことを思い出す。またSord社の椎名社長が「香港の安いボードを輸入して組み立てたい」と言われるのを森田副社長と私で「品質問題を起こしたら元も子もない」と止めたことを思い出した。

 苦労が無かった訳ではない。一番の傑作は、サウンドボードをどういじってもCD-ROMに音楽CDを入れた時の音が出ないので悩んだ末、結局モデム動作音などのスピーカとは別にサウンド用のスピーカが必要と知ったことだった。スピーカが無くては音は出ない訳だ。

 そもそも組み立てを思い立ったのは、冒頭の(2)を狙ってWindows 95後送特約付きのWindows 3.1 Pre-installマシンを安く買って重宝してきたが、性能・機能に不満が出てきたので、Windows 98を機にもう一度(2)をやろうか(3)にしようかと悩んだ末(3)にした次第である。その理由はもう買い換えは嫌だと思ったからである。自作ならマザーボードだろうがCPUだろうが換骨奪胎して将来ともアップグレードできる。

 Windows 98 + 新BIOSの一番の美点はOnNowである。スタンバイすると一見電源が落ちて、しかしキーボードに触れると即刻立ち上がる。

 パソコン部品メーカはみなWeb頁でQ&Aから最新ドライバの提供までやっている。マザーボード内蔵の3月版のBIOSを早速入れ替え、Webから入手した7月版に更新した。Flash Memoryだから書き直せるのである。

 モノ作りが好きでパソコンに若干の土地勘がある人には、趣味と実益を兼ねた面白いホビーだと思う。ボケ防止には最適だ。     以上