うつせみ
2001年 4月21日

             地震予知

 先頃「次回関東大震災」という「うつせみ」をお送りしたところ、三吉野健滋氏(A)と三好昭夫氏(B)から、二つの地震予知研究のご教示があった。共通点は、電磁波検知、実績先行だが理論未完、従って学界では異端扱いでマスコミにも載らない(私は知らなかった)。調べると電磁波での地震予知にも色々あって、電通大早川研究室の次の頁に一覧がある。
http://seismo.ee.uec.ac.jp/front.htm
要は地震の前兆として震源地周辺から、直流から超短波まであらゆる周波数帯で電荷湧出や電磁波放射などがあるという認識に立っている。岩石が歪み振動すると電荷や電磁波が発生するのだろうか。科学は実験と理論の相互作用で進んできた。何時か誰かが理論付けをしてくれるのだろう。

 地震学的手法で予知が絶望的なのは、歪・距離・角度などの測定が局所的過ぎるからではないか。巨大なエネルギーではあるが広大な地域に分布した現象だからもっと巨視的に見ないと見えないのではないか。地上に古代人が描いた巨大な絵が地上に居ては見えないのと同じだ。その点電磁波は巨視的手段で筋がよい。但しなぜ電磁波が生じるかは依然謎だが。

(A)名古屋工業大学・愛知県立大学など中京での研究が記載されている
http://www.neems.ne.jp/
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/4679/ をご紹介頂いた。
雑音を避け観測の便を考えて極超長波(ELF波)223Hzに絞って観測している。遠くからも伝播してくる水平磁界波の東西・南北の2成分と、減衰が大きい垂直磁界波のXYZ 3成分を観測していると、雑音とは明確に区別できる地震前兆の異常放射が、典型的には数日から一週間程度続いた後、地震が発生する。複数の観測点の各成分の波形から震源地の位置や規模が予測できる。観測点から200km以内のM5以上の地震は予報を外していない。全国数十個所に観測所を維持し、契約会員に情報を有償提供している。

(B)2000年の講談社科学出版賞をとった本をご紹介頂いた。
「地震予報に挑む」串田嘉男 PHP新書 2000年9月 pp254
http://www.jpinfo.ne.jp/yatsu/, http://epio.jpinfo.ne.jp/にも関連情報がある。著者は八ヶ岳南麓に「星の村」を開いた天文マニアだ。近年「星の村は休止」の看板が立っているが、地震予知に転向したのか!!

 本来受信できない見通し外のFM放送局に受信機を合わせて待つうちに、流星が空気をイオン化すると電波が反射して短時間微弱ながら受信できる。(流星が周波数を変化させるので受信周波数を僅かに外した受信機で待つと筆者はいうがこれは間違いであろう。使用したCenter Tuning Meterは僅かに外れた周波数が入ると敏感に反応することを利用したに過ぎないと私は思う)この方法で1993年のペルセウス座流星群を観測しているうちに、流星ではない正体不明の波形が観測された後に北海道奥尻島の余震が起こったことに興味を持ち、1995年の神戸淡路地震でまた同じ事が起こって確信したという。以降月額5千円の会員限定で地震予報を流しており、ポカ以外で予報を外したことはないらしい。

 地震が近づくと地表に電荷が生じ、電離層に電荷を誘起するので、見通し外で届かないはずの電波が僅かに反射されて受信可能となる。その受信信号の強度とパタンから予知情報が読み取れる。問題はなぜ地表に電荷が生じるかで、ピエゾだの摩擦静電気だのの仮説の中で、筆者は岩石のMicro-crackで電荷が生じる(なぜ?)という。しかしその当否を言っても仕方が無い。予報が当たっているという事実が大事なのだ。

 当初赤貧のなか夫婦で手弁当でやっていたが、会員や協力者も増えて、1999年末には秋田、2000年には高知に無人観測所を置いて交叉する角度で観測できるようになり、精度が上がっているという。

 (A)は一応は大学の研究予算でやっているが、(B)は生活がかかっているから、その真剣さは全然違う。しかしいずれにせよ伝統的な地震学の手段ではうまくいかない地震予知を、電磁波が解決する予感を得た。 以上