株価
米国NASDAQ=National Association of Securities Dealers Automated Quotations(つまりコンピュータ化市場)を中心に株が揺れている。
東芝在職中に一度でいいから株価を動かしてみたいと密かに思っていたが、遂に果たせなかった。世界初のMicroprogram計算機、日本初のワープロ、世界初のノートブック、何を出しても東芝の株はビクともしなかった。大型汎用計算機事業を営業譲渡して私が丸坊主になっても、株価は微動だにしなかった。要は大勢に影響無しとナメられていた訳だ。
数年前に、顧客損益よりも手数料を稼ぎたい一心のN証券にワイフが騙されてAsian Emerging Countriesの株式投信を買った。我が家の担当事業部制によると、これは私の承認責任だ。その後例のアジア経済危機でこの投信は40%にまで値下がりし、最近やっと77%にまで持ち直してきた。
4月18日の新聞は、Microsoft社共同創立者のPaul Allen氏が、米国司法省との訴訟でリスクが高まったMicrosoft株を、しかもこの株価低迷の直前に巧みに売り抜けて巨利を得たと伝えた。氏の感覚の冴えもあろうが、多分優秀な調査スタフを抱え四方にアンテナを張り、もしかしたらスーパコンで判断しているに違いない。個人では太刀打ちいかない。
10月には某氏の勧めで某氏が関係する米社のNASDAQ上場株を$13で買わせて頂き、その後大分上がったので「あまり欲をかかずにこの辺で」と売り注文を米証券会社にAir Mailで送り、$55で売れたので某氏にお礼を書こうと株価を見たら$38になっていた。後で見ると$55の値がついたのは半日程度だった。こういう偶然もある。
これに味を占め、3月にNASDAQ上場の某社の上場株購入を米証券会社に申し込んだ。事業内容は感心しなかったが、Internetブームで少なくとも上場価格よりは上がるだろうと信じていた。しかし申し込み者多数であなたには100株しか割り当てられませんという。それっぽっちじゃ税金申告が面倒なだけとも思ったが、結局万事勉強と購入してみた。$18で上場した途端に株価の低迷フェーズに入り、一度も$18を超えることなく今半値で推移している。100株しか割り当たらなくって幸だった。
NASDAQの代表的な指数は代表100社の平均NASDAQ-100である。yahoo.comのStock Quotesから引くと、昨99年10月頃から急に一本調子で上がり始め今年3月下旬までに185%にまで上昇した後、4月上中旬にかけて125%にまで下落し、今週150%程度にまで戻したという経緯が読める。マクロに見れば決して異常な動きではないし、昨秋よりはまだかなり高い水準にある。
ところが個々の株価は全く異なる様相だ。わがWink社を見ると、99年8月の上場後$35前後で上下し、11月から上昇して2月に$75のピークを付けてから一気に下降して先頃は$15になってしまった。Winkと似た他社も似た推移をたどっている。しかしSmart Diskという会社(日本社長が内田義昭氏)の株はあまり下降しておらずマクロに見れば横ばいである。Sunは僅かしか下がっておらずGeneral Electric(NASDAQではなく伝統のNYSE)に至っては上がっている。我社を含め「InternetだE-Commerceだ。そのうち儲かるだろう」という会社の株は過剰期待分だけ下降し、儲かっている会社の株は上がってすらいるという極く正常な姿になった。
私がよく利用するInternet書籍販売会社Amazon.comの昨今の株価約$50に発行株数を掛けた時価総額は$20B = 2兆円だ。昨年の売上は$1.64B = 1,600億円だが、果敢な先行投資で損失が$720M、ROS = -44%である。今まで一度も黒字になったことがない。それでも年末には$100以上だった。
昔教養学部の大教室で習った経済学によれば、時価総額が(何時かは)会社の資産総額に略等しくなり、利益の時価総額に対する割合が世の中の金利レベルと略等しくなるはずだった。しかしこの古典的常識は今や通用しない。General Electricのような優良会社の株でも、株価は資産総額や利益から遊離しており、専ら値上がり期待で高値の株を買う形になっている。これをバブルと言うならバブルが常態となっている。
Paul Allen氏は我がWink社の株を公開前に$8で投資してくれた大株主だが、今回売り抜けたのか持ち続けているのか知りたい所だ。 以上