テレビが本格的に変貌し始めた。私自身がその変貌のごく一部に貢献しようともしている。10月早々の幕張の日本エレクトロニクスショーの家電コーナには2度出かけ、2度目は4時間かけて勉強した。
エレショー家電コーナの目玉は次の4つと理解した。
1.DVD、2.Internet TV、3.PerfecTV、4.IT Vision
みなテレビがらみであり、ディジタル技術である。
DVDに説明は要らない。実際松下電器のシアターでは、DVD VTRをPRするイメージテープが流れる前をモデルが無愛想に歩き回るだけだった。
Internet TVのキーポイントは二つある。(1) Browserをテレビの小さなハードウェアに詰め込むこと、(2) URL入力を嫌うテレビユーザに容易な操作性を提供することである。この(1)は大手の本格的なBrowserを敬遠し、AccessやApplixなどコンパクトなBrowserを採用することで実現できる。(2)は実は自己矛盾である。Web頁の世界を自由に飛び回るには、どこに飛ぶかを指定するURLは必須である。しかし暗号のようなURLをテレビユーザが好むはずもない。そこでInternet TVの各メーカは自らWeb頁を制作し、HyperlinkするだけでURL入力が必要ないほど内容を充実させたWeb頁の小宇宙を作り出そうとしている。しかし私はInternet TVはそんなに実用化されないのではないかと思うようになった。珍しいし(パソコンより遥かに)安いから最初は飛びつくが、仕様制約がやがて興味を減じ、使わなくなるかパソコンにやはり乗り換えるかのどちらかに二分しよう。表計算ソフト付きワープロと同じ運命であろう。しかしメーカとしては、実用の如何に関わらず珍しさでしばらく売れれば何の文句も無い。
PerfecTVは、伊藤忠・物産・日商岩井・ソニー・NTTテレマーケティングなどの出資で10月1日から始まったDigital TVで、テレビ70 ch、ラジオ100 chを提供する。BSと同様なTunerとParaboraを新たに購入すれば年内は無料で、来年から有料で見られる。Hughesが今年米国で始めた同様の DirecTVが日本に来年100 chを持ち込むと言われている。今AnalogのSkyPortもDigital化してSky Dとする計画があるし、例のMr. Murdockと孫氏が同様のJ-Sky Bを日本で始める計画もある。日本の空が何百チャネルもの電波で埋まる。これらは、電話線を利用した回答機能(Polling Up-Link)を持っているらしいが、当面は双方向性よりも放送自体の普及と採算化が先決であろう。
Intertext TVはIT Visionとも呼ばれる。現在のTV放送つまり地上波のAnalog放送に電話線で双方向性を与える。これに私が関与するWink社のソフトウェアが利用されているが、Wink社のソフトはDigital TVであれ、携帯電話であれ、もっと応用範囲の広い存在である。IT Visionは、TVセットメーカ、NHKを含むテレビ放送業者、銀行・商社・NTT・広告会社などから成る研究会が中心になって進めており、10月1日からテレビ東京が「独立IT Service」の放送を開始した。これは放送内容とは無関係ながら、天気、プロゴルフ、クイズ、株価の文字放送を常時流し、聴視者側でリモコンで操作選択した情報を表示する。10月5日(土)6:30 pmから毎週同時刻に、「連動IT Service」が放送される。10月5日には、タレントがこの番組中どちらの服装を着て欲しいかの二択、スニーカのどちらが欲しいかの二択、タレントの次のコンサートでどの楽器を演奏して欲しいかの三択、と3回の選択機会があり、21千人が投票した。但しまだIT Visionのマシンは限られているので、投票の大多数は併用のTele-gong(特定番号に電話した通話数だけを計数するNTTのサービス)からのものである。IT Vision を持てば、ダイヤルせずともリモコンでワンタッチであるばかりでなく、関連情報を見ながら投票できる。なおIT Visionを持てばテレビ放送と全く無関係に電話線だけで、On-Line Shoppingやチケット予約などのサービスも受けられ、来年にはInternet接続も可能となる。Internet TVほどのハードウェアを要しないところがミソで、東芝が売り出したIT Vision TVは、IT無しのモデルより1万円高いだけである。IT Vison TVを幕張に展示したのは、東芝、松下、JVC、Sonyであった。
テレビが変わる。私としては変わって欲しいのである。 以上