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− IT革命? −

2001年1月14日
追加 2001年2月18日
追加 2003年6月16日

 
 コンピューターやインターネットの発達により、ばら色の未来がやってくるという。いわゆるIT革命である。いわく、自宅に居ながらにしてショッピングができる、商売が出来る、現金が要らなくなる、本や新聞が端末で読める、音楽もテープやCD無しでどこでも聞ける、携帯電話を使って外出先から家電の操作が出来る、などなど。
 便利で手軽で快適な生活が送れるようになるのは結構なことだ。私が子どもの頃には――というよりほんの10年ほど前でも――夢物語だったことが、もうすぐにも手の届くところまで来ている。そう期待させてくれる今の状況である。

 新しい形の犯罪が次々に現れ、ひょっとして致命的なダメージを私たちの世界に与えるのではないかと危惧している。既にインターネット・ショッピングでのトラブルが発生している。また、自殺指南のホームページなども問題となった。出会いサイトのトラブルも今後急増するのではないかと思う。ハッカーによる企業や政府の機密情報の持ち出し、書き換え、コンピューター・ウイルスの蔓延も大問題である。

 これらは便利さとの引き換えに払わなければならないリスクとして受忍すべき副作用なのかもしれない。だが、絶対に受忍できない大きな問題が存在するのだ。

 携帯電話から自宅の家電製品の操作が出来るということは、自動車の運転も遠隔操作可能ということだ。盗難車にセットした爆弾も遠隔操作で爆発できるということだ。爆薬を仕掛けた携帯電話を要人に送り付け、別の電話からそこに電話をしてその要人が電話に出たのを確認して爆発させることも可能だ。
 もっと大規模にして戦争に利用することも考えられる。A国がB国に対して戦争をしようと考えたとしよう。A国はまずある家電製品の販売戦略を立てる。頃合いを見計らってB国向けにその家電製品を大量に売り出す。但し、この製品には爆弾が仕掛けてある。B国内にこの製品が行き渡った頃、A国はB国に宣戦を布告する。そして遠隔操作で仕掛けた爆弾を次々に爆発させる。  IT革命の掛け声に、我先に進もうとしているが、とんだ落とし穴にはまる結果とならないだろうか。
 IT革命が先進国で成功を収め先進国の誰もがその恩恵を享受する、まさにそのときが、テロリスト、テロ組織にとっての一大チャンスとなる。我々は、天国を見た瞬間に地獄へと真っさかさまに転落するのである。恐竜が滅んだときのような劇的にして悲惨な結末である。
 IT革命はそんな危うさを持っている。
 有効な備えを今用意することができなければ、IT革命は見送った方が賢明である。

 ある意味、これは本当に革命の手段になるかもしれない。ITは暴力革命を企てるものにとってうってつけの道具となるであろう。
 極めて少数の革命家が、世界を相手に、脅迫し、戦争を仕掛け、操ることも可能になる。

 便利な世の中になったもんだ。

2003. 6.14 朝日新聞(夕刊)

アフガンでは遠隔操作爆弾
【ニューデリー=大野拓司】アフガニスタンの首都カブール市内の交差点近くで12日、携帯電話に仕掛けられた爆弾が見つかった。道路脇の植え込みに隠されており、遠隔操作で爆発する仕組みになっていたという。



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