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− トイレのノック −
1997年9月15日
――こんにちわ。本日は、トイレのノックの是非について
話し合っていただきたいと思っています。
以前ある新聞に、駅やデパートのトイレのノックについての投書が2件ほど載っていました。
まずこれを紹介しますと…
1つは、中に入っているのを知りながらノックするのは用を足している人を急かせることであり失礼であるというもの。
もう1つは、中に入っていないと思って開けたら実は入っていたということもあるのでノックした方がよいというものです。
さて、皆さんはどうお考えか、ご意見をよろしくお願いいたします。
白河:1つめの投書の方のご意見に基本的に賛成ですわ。
用を足しているときに、急かされるのはいやなものですから。
それを急かすためにノックするなんて無神経で野蛮な行為だと思いません?
私ヨーロッパへ何度か行ったことがありますけど、
トイレでノックで急かされたことなんて1度もありませんことよ。
赤木:2つめの投書の方のケースは、私も経験ありますけど、確かにびっくりしますわよねえ。
いないと思ったら中にいるんですもの。それもお尻を出して。
私それからは中にいないと思っても必ずノックすることにしていますわ。
だって、あの時の気まずい思い、もう絶対したくありませんもの。
白河:そんなのは中にいる人がちゃんとドアをロックしないのがいけないのよ。
論外だわ。しつけが出来ていない人の面倒まで見られないわよ。
日本もいつになったら文化的な国家になるのかしらね。
青山:今の2つめのケースだけを考えるんでしたら、
中に入っていると思ったらノックを控え、空いていると思ったら一応ノックをして、
中にいないことを確かめてからドアを開けることにすればいいんじゃないかしら。
白河:そうよね。でも、中に入っているのを知っていてノックする人がいるのよ。
ほんとに頭に来ちゃうわよね。
黒井:そんなこと言うけども、待ってる方の身にもなってほしいと思うな。
催してきたからトイレに来たんだ。
中にいるもんだって、外で待ってることぐらい分かってるだろうに、
長々と用足ししているのは無神経と思われてもしょうがないぞ。
紫野:そうなのよ。トイレのドアの前で待っていると、いつまで経っても終わる気配がないのよね。
そのうちに隣のドアの方はどんどん進んでいくのよ。
「一体何やってるのよ」と言いたくなるわよ。
白河:並び方が悪いのよ。ドアの前で無くって、トイレの入り口の方で一列に並んで待つようにすればいいじゃないの。
欧米じゃみんなそうしてるわよ。
紫野:そういうの聞いたことがあるわ。確かにその方がいいわよね。
でもそれ日本じゃ難しいと思うわ。
白河:そうね。私も何度かやってみるけど、入り口で待ってる私を無視してさっさとドアの方へ行ってしまうんですもの。
黒井:フォーク並びとかいうやつかね。
駅のトイレみたいに立て込んだところじゃ無理だね。
列が長くなるだろうから邪魔臭くって。
広いところだったらうまく行くだろうが、そういうところはどのみち大した違いはない。
――フォーク並びは確かに一つのテーマですが、今はノックのことに絞ってお話を進めてください。
待ってる人はトイレの中に人がいることを知っている。
そのとき中の人を急かすようなノックは是か非か。
この一点に絞って結構です。
白河:それなら駄目に決まっているじゃない。話し合う必要なんか無いわ。
赤木:それなら私も同じだわ。余程のことが無い限り、ノックは控えるべきよ。
黒井:「余程のこと」なんだ、待ってる方にしてみたら。
紫野:そうよね。我慢にも限界があるわよ。ドアを無理矢理開けようっていうわけじゃないのよ。
「少しは急いでよ」ってお願いしているのよ。ノックぐらいいいじゃないの。
白河:そうは言っても、急かされたってこればかりはどうしようもないわよ。
何もわざとゆっくりしているわけじゃないし、努力はしているのよ。
それなのに急かされたりすると、ほんと、意地悪しちゃおうかしらって… これは冗談ですけどね。
青山:こういうことって、私たち誰でも、どちらの立場にもなるわけですよね。
世の中でよく立場の違いで対立することってあるけど、
それに比べたら相手の立場ってもっと分かってもよいと思うのよ。
黒井:そうだろ。「待ってる方の気持ちをもっと分かってくれ」と言いたい。
青山:そうね。中の人は、ノックしてる人の気持ち、状況を理解してあげる気持ちが大事だと思うわ。
白河:でも、ノックで急かされる方の気持ちも少しは考えてほしいわよ。
黒井:わかってるさ。分かってるけど、こっちも必死なんだ。
ノックしなくて済めばこっちだってわざわざそんなことはしないさ。
――お互いに相手の立場を理解する。思いやるってことですか。
それはいいんですけど、最初にも言ったように今日はノックの是非を討論していただいているんです。
結論は、ノックに賛成ということなんですか?
青山:あなた全然分かっていませんねえ。
そうやって一通りに決めようという考え方がいけないって言ってるんです。
白河:そう。外で待つ人はなるべくノックをしない方がいいのよ。でも…
赤木:本当に中に居るのか疑問を感じたり、
紫野:あまり長く待たされた場合とか、
黒井:どうしても急いでほしい事情があるときは、
青山:ノックもやむを得ないと思うのよ。
――ということは、条件付きでOKということですか?
白河:あなたまだわかっていないようね。
それぞれの状況を無視して一律にやり方を決めようっていう考えがいけないのよ。
公式があるわけじゃないの。
その時その時の状況に合わせて各自で考えることなの。
基本は思いやりよ。
赤木:あなたその言い方は司会者への思いやりに欠けているわよ。(笑)
黒井:そうだな。状況に合わせて各自で考えるべきだとは思うが…
そういう考えを押し付けるのも、これもまたちょっとまずいんでないか?
青山:そうかもしれないわ。ただ、私はやはり一律に決めてしまう考え方が嫌いなの。
一律に決めると、どうしてもそれを守れない人、守らせたい人というのが出来てしまうでしょ。
勿論ちゃんと守らないと困るルールというのはありますよ。
でも、それほどでもないことって結構多いでしょ。
それが「ノックは駄目」「いや構わない」と対立しているうちはまだいいの。
それを一方に決めてしまうと、今度はそれを守る人が守らない人を蔑むようになるんじゃないかと…
黒井:そういう意識は感じるな。
身なりなんかでも、さっぱりした身なり、むさ苦しい身なりってのは、
本人の好き嫌いとかでいろいろあっていいと思う。
なのに片方がもう片方を見下している場合が多いと思う。
僻みかもしれないが…
――あのう、そろそろ終わりにしてもよろしいでしょうか。
なんだか難しい話になってしまったみたいですが…
白河:何も難しくないわよ。好き嫌いは理屈じゃないってことよ。
議論で決められることと決められないことがあるの。
紫野:ただ言えることは、公共の場にはもっとトイレを増やしてほしいわね。
ノックのことで対立しなくて済むようにね。
赤木:小さな場での議論、思いやり、工夫といったことももちろん大事だけど、
それだけでは解決が付かないことも多いわね。
そんな時もっと大きな場へ要望を出す、改善を申し入れる、
ということももっとやっていっていいと思うわ。
青山:トイレを増やすというような要求をしていこうということですか?
赤木:そうですわ。なるべく具体的にした方がいいわ。
例えばこの近くの駅の場合は…
――お願いです。もう止めにして下さい。
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