・第2日め(3/14)の夜 その2・


まずは、なにはともあれメインストリートへ。そのまま例の、奥にゴーゴーバーがある一角をめざす。この時「今日はもっとカゲキなゴーゴーバー探して行っちゃおっかな」位は考えていた。だいたいそんなに危険じゃないし、ボッタもないとわかってきたからね。メインストリートはもういーかげんイイ時間なんで、ますます怪しげな空気が漂いはじめていた。いろんなニイさん、ネーさんから声がかかるかかる。ひたすらシカトして歩いていたんだけど、一人だけなんかミョーに気になる声があった。ほとんどはシカトしてればすぐあきらめるのに、その娘はしばらくついてくる。どーも気になってしょーがないんで、ふとその娘に目をやってしまった。ニコッて、ほんとニコッて感じで微笑んできた。うっわぁ。めちゃカワイイ。すっげぇカワイイ。年は20くらいかな。純粋なタイ人じゃなくて、どっちかっつーと日本人に近い。「どこに行くの」みたいな誘い文句だったと思う。英語だったからわりと普通に会話ができたせいもあり、足を止めてちょっと話してみることにした。「いや、ブラブラとね、そこらのバーで飲もうかと思ってさ」「だったら、私と飲みませんか?知っている所がそこにあるから」なんて感じなんだけど、彼女の雰囲気も態度も全然普通の娘なのだ。おいおい。ボッタのパターンじゃねーのか、と警戒しつつも、何故かその娘は大丈夫というへんな確信があって、結局一緒に行くことにしたのだった。

行った先はなんのこたぁねえ、例の一角に普通にあるスタンドバー。マイマイ・バーってとこ。ロックがガンガン流れていてNAVY達が酔っぱらって騒いでいる。全然問題ナシ。「なに飲みます?」「シンハーがいいな」確かに知り合いらしく、店員の人に手で合図して注文してくれた。しかも自分の分はちゃんと自分で払っている。いーんじゃない?その手の人だったら普通はオイラにタカるもんな。で、飲みながら世間話なんぞを始めてみる。「タイは初めてなんだけど気に入っちゃったよ」「私、実は中国系の移民なんですよ」「どーりでね、はじめ日本人かと思ったもん」「(小声になって)私、NAVYとか白人ってあまり好きじゃないのね。日本の人が好きなの」なーんて感じで。15分位は普通に会話をしていたと思う。すでにけっこう飲んでいたから、ビール1本でいー気持ちになってきた。夏の夜の生ぬるい空気。馬鹿でかい音のロック。すぐとなりにはめちゃかわいい娘。NAVYがライターを借りにきて、うらやましそうにオイラを見る。なんか現実感が薄れてきた。ウソみたいだった。2本目のビールと、今度はオゴリで彼女のコーラも頼んだ。すごくうれしそうに「ありがとう」って。なんかこのまんまでいーやって気になってきた。

しかし、ここでどーしても気になっていたことを聞かねば。「キミはこーやってお客さんをこの店に連れてくれば、いくらかもらえるの?それでオイラを誘ったの?」この質問でちょっと雰囲気が変わった。言い出しにくそうだったけど、「ホントは違うの。わかるでしょ」ときた。そーか、やっぱりそーなのか。でもさー、全然そーゆー感じじゃなかったんだよな。普通に一緒に飲んでお話ししててさ。ま、そんなこたぁあるわけねーと思っていたけど、ただ日本人と一緒に飲んで、ちょっとオゴってもらって、それでお店からいくらかバックをもらってって。それだけかもしれないなって思いはじめていたから。・・・・「そうなんだ。うーん、わかった。一応聞かせてくれる?いくら位なの?」

すごく迷った。すごくイイ娘だったから。カワイイのはもちろんだけど、話していてともかく良い娘だったから。もちろんお金はあった。話に聞いていた相場よりすこし高かったけれども、日本円にしてみればウソみたいに安い金額だった。すごく迷った。でも・・・・・やめた。まだ理性が残っていた。そういうことをしにタイに来たんじゃない、と叱っている自分がいた。行けなかった。

「ゴメンね」彼女に、しばらくつきあってくれたお礼にと、いくらかのチップを渡してビールを飲み干し、バーを後にした。彼女はそれでも笑顔で見送ってくれた。別にオイラは何も悪いことしてないのに、なんか後ろめたい気持ちになってしまった。もうゴーゴーバーなんて気分じゃなくなっていた。「ホテルに帰ろうかな・・・」

でもこの夜はこれで終わりではなかった。このあと、まだあったのだった。

まだまだ続く・・・・・


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