さーて、バンコクだぞ。なんつったってタイの首都だかんな。都会だかんな。都会にゃー悪いヒトがいるんだぞぉ。気をつけるんだぞぉ。と一人でキンチョー感を高めて、まずはバゲッジ・クライムへ荷物をとりに向かう。他の白人ツアーはみんな乗り継ぎで別のロビーへ行ってしまい、例の「巨大ベルトコンベア荷物とり場」に来た人はすごく少なかった。すかさず荷物が出てくるいちばん近いところに陣取り、周囲に注意を払いながら荷物が出てくるのを待つ。へへ、ここならぜってー盗まれねーぞ。どーだい。
しばらくしてベルトコンベアが動き出し、荷物が出てきた。ま、いつも遅いほうだからな、とのんびり構えていたのだが・・・・・来ねぇ。いつまでたってもオイラの荷物が来ねぇ。よく見ると、出てくるのはファーストだかビジネスだかの札がついている、ゴルフクラブとか高そうなスーツケースばっか。おいおい、こんなとこまでロコツに差別しなくたっていーじゃんかー。待つこと10分、やあっとオイラのリュックが出てきた。やれやれ。リュックを背負い、空港の外へ向かう。ここから市内まではシャトルバスで行こうと機内で決めていたので、まずはバス乗り場を見つけなければ。でもプーケットでやらかしているので、今度こそ絶対客引きにはひっかかんねーよーにしないとな。ちょっとミケンにしわが寄るくらいスルドイ目つき(のつもり)でロビーへ向かう。でもただの近眼野郎に見えてたりして。
こんな大空港だからロビーに出たら客引きの嵐だろーなー、と身構えつつ出てみると、あら? これがびっくり、全然いない。警備員のよーな人達と、まじめなそうなタクシーの客引きが数名いるだけで、意外なほど静かだった。ちょっとガッカリ。カナリ気合い入れてたのになー。ま、安全にこしたこたぁねぇ。そこらへんの係の女性をつかまえて、バス乗り場を素直に聞いてみる。「えっとね、シャトルバスに乗りたい。どこ?」。路線によって乗り場が違うらしく、ホテルを聞かれたので答えたら「A2だからあそこね。窓口があるからわかるわよ」なーんてな感じで親切に教えてくれた。なんだー。プーケットより全然安心じゃんか。楽じゃんか。いわれた通りに窓口へ行き、ホテルの場所を説明してA2ルートの乗り場でバスを待つ。タバコを1本吸いおわる前にバスが来た。向こうのターミナルですでにたくさんの客が乗っていたが、なんとか座ることはできた。よしよし。バスに乗り込んで車掌サンに行き先のホテルを告げ、料金を払う。70バーツだった。
バスはすぐには発車しなかった。他の客を待っているんかな。その間なんとなく周りの会話を聞いていたら、やけに日本語が多い。ぐるっと車内の客を観察してみると、なんとほとんどが日本人だった。ちょうどJALかなんかが着く時間だったんじゃないかな。で、すぐとなりの若(バカ)者2人が、ものすげぇきったねー格好で大声で自慢気にしゃべっているのが耳に付いた。猿岩石気取りでアジアを旅してきたらしいが、おめーらは飛行機でタイに来たんだろ。しかもシャトルバスに乗ってんだろ。金があるんじゃん。フツー以上にさ。これ見よがしに「俺達貧乏旅行なんだぜぇ」って威張ってんじゃねーよ。みっともねぇ。他は卒業旅行ですぅーって感じの若者のグループとか、普通の観光客みたいなの。オイラ一人だし、真っ赤に日焼けしてるんで、ちょっと浮いちまっていた。そんなにじろじろ見んなよな。ま、別にカンケーねーけどな。
19:30頃、ようやく発車。バスはすぐにハイウェイに入ってバンコク市内へ向かう。空港からちょっと離れたら、ハイウェイ沿いにいきなり巨大ネオンや看板が現れはじめた。さっきの空からの景色がウソみたい。でっかいホテルやビルがばんばん出てきて、想像もしてなかった、もんのすごい都会の景色が広がる。やべぇ。バンコクをなめていたぜ。こんなに発展しているとは。こんなに大都会だったとは。マジで驚いた。こりゃーますます気をひきしめなきゃな。
やがてハイウェイを降りて一般道に入ったとたん、来ました!世界に名高い大渋滞。これがホントにすげえ。3車線ある道路がぜーんぶ車で埋まっている。道路のずーっと先まで車で埋まっている。しかも全然動かない。まいったねー。ここで地図を取り出し、オイラのホテルまでどれくらいか、今どのへんなのかを調べてみよーかね。・・・・・・わかんねぇ。全然わかんねぇ。だいたい、今いる通りの名前すらわかんねーんだもんな。分かるワケねーよなぁ。と、あきらめていたら、あっちの席に同じようなことしているヤツがいた。5人位の大学生卒業旅行グループの1人だ。必死で回りと地図を見くらべて、現在地を見つけようとしている。仲間らしき他の4人はノーテンキにしゃべりまくっているだけで、そいつ一人にまかせっきりなんだけどさ。おめーら、それでいーんか?
渋滞中の車内から通り沿いのお店とかを眺めていたら、なんか見慣れた看板を発見。おおっ「ファミリーマート」ぢゃあないか。マークやロゴも日本のものと全く同じだぁ。と、反対側には「ローソン」。これも全く同じ。外から見える店内の雰囲気まで同じように見える。「セブン・イレブン」は海外で見たことあったけど(つーか、もともとアメリカだもんな)、それ以外のコンビニを異国の地で見たのは初めて。ちょっと新鮮なオドロキだった。
なんとか渋滞を抜けてしばらくしたら、突然車掌サンがホテルの名前を叫んだ。さっき地図を見ていたヤツがあわてて「あ、俺達のホテルだよ、もう着くよ、降りるよっ」と他の連中に知らせる。他の連中はあたふたと降りる準備を始めたが、準備が終わる前にホテルの前でバスは停車。バタバタとそのグループはあせって降りていったが、地図を見ていた彼がいなかったら、残りのヤツらどーなってたことか。それにあの調子じゃ、誰か忘れ物とかしているぞ、きっと。個人旅行なんだからさ。自分の面倒は自分でみなきゃいけないんだぞ。もーちょっと自覚しとけよな。
でも奴等のホテル名のおかげで、今どこにいるかがやっと分かった。もうすぐオイラのホテルのはずだ。よゆーで降りる準備をしておく。しばらくして、交差点の信号待ちになった。ここで車掌サンがオイラのホテル名を叫んだ。リュックをかついで前に行くと「ここからすぐだから」とその場で降ろされることになっちまった。「どっちに行けばいーの?」「ここをあっちに渡ってまっすぐだ」へいへい。ま、こんなもんだろーね。後ろからくる車に注意しつつ、道路の真ん中でバスを降りて言われた方向に向かう。バスは交差点を右折して行ってしまった。なーんだ、どっちにしろホテルの前は通らなかったのだね。
そのまま歩いてたら、ちょっと心配になってきた。今度のホテルも日本でテキトーに選んで予約したやつなので、どんな外見でどれくらいの大きさか、よくわかんないのだ。比較的大きくて安全な中流クラスを選んだつもりだったんだけど、はたしてどんなんだろう。見落としたりしねーだろーなぁ。キョロキョロしながら歩いていたらセブン・イレブン発見。そーだ、ホテルに着いたらすぐビール飲みてぇよな。よし、ここで買っておこう。お気に入りになりつつある「ビア・チャン(象の絵柄のヤツ)」とシンハーを数本買って、今すぐ飲みたいのをこらえつつホテルへ向かう。おーい、オイラのホテルはどこだぁー。
と、通りの反対側に巨大なネオン発見。ホテルの名は「ASIA HOTEL」。あれ?まさかこれか?って、ホントにそーだ。うわあ、こんなでけぇホテルだったんかー。マジびっくりした。ま、ともかく見つかってよかったぞ。ビールがぬるくなんないうちにはやくチェックインしなきゃな。でもまずはあっち側に渡らなきゃな、と横断歩道を探すがどっちを見てもそれらしいものがナイ。たまたま目の前に巨大な歩道橋のよーなものがあったので、しかたなくそれを登ることにした。でもこれがまたすげぇ高い。ビルの3階くらいの高さ。なんなんだ、コレは?スーツケースだったら絶対登らねーぞ。リュックだったからよかったんだけどさ。よーやく上り切って、ふと見るとなんか改札のよーなものがある。なんと、コレは電車の駅だったのだ。昨年の12月に開通したばかりの高架電車、人呼んで「スカイ・ウェイ」だったのだ。ゆっくり見たいけどさ、今はなによりチェックインしてビールが飲みてぇんだよな。そのまま素通りして反対側へ降りる。階段を降りると目の前は目指すホテルのロビーだった。
ロビーに入るとこれがまたびっくり。チョー高級ホテルみたい。少なくともツラがまえは高級ぶってるぞ、ここ。間違えてねーよな、オレ。ど、ど、どっちに行けばいいんだろう? あ、あ、あれがフロントかなぁ? ううー。わっかんねーよ。 などと戸惑ってたら、すかさずベル・ボーイがやってきてオイラのリュックを奪おうとしやがった。いーよ、大丈夫だよぉ。自分で持ってくよぉ。ほっといてくれよぉ。こーゆー扱いに慣れてないのがモロばれ。かっこ悪りぃー。動揺を必死で隠しつつレセプションへ。バウチャーを出してチェック・イン。やっぱ間違えてなかった。ホントにこのホテルだった。ここまでちゃんとしたホテルとは思ってなかったぞ。ちょっとうれしいんだけどさ、この雰囲気にオイラ全然なじめないんですケド・・・・。
チェック・インが終わると2日分の朝食券と、ウェルカムドリンクのチケットを渡された。どーやらタダ酒が飲めるよーだぞ。ラッキー。さて、部屋に向かうか、と振り返ったらすでにベル・ボーイがいる。有無を言わせずオイラの小汚いリュックを抱えてしまい、そのまま部屋まで案内してくれることになってしまった。しょーがねぇな、案内してもらうか。部屋は709号だった。7階のエレベータのすぐそば。部屋に入るとこれがまた広い!とーぜんベッドは2つ。ツインルームだ。贅沢だぞ。わーい。ベルボーイにチップを渡してとっとと帰ってもらおう。と、財布を見たら小銭がナイ。全然ナイ。あっちゃー。さっきビールを買ったときに小銭を使い切ってしまっていたのだ。「ヒジョーに申し訳ないが、小銭がない。チップをあげたいのだが、大きいのしかない」一生懸命説明したら、ベル・ボーイは「うんうん、わかったよ。いーよ、気にしなくて」てなことを言って帰っていった。おーい、チップをケチったわけじゃないんだぞ。ホントに無かったんだぞ。
さて、荷物をバラして落ち着こう。着替えや洗面道具などをセッティングして、一息ついたところで待望のビール。プシッ。窓際のソファーに腰掛けてビールを飲む。あ゛ー、うめぇ。落ち着いたぁ。やっぱ移動って疲れるよな。ま、ともかく無事ここまで来れた。よかったねー。・・・・・と、安心したら腹が減ってきた。もう20:00過ぎだ。ホテルの中に当然レストランはあるが、めちゃめちゃ高いに決まっている。そもそもそんなとこ行く気ナイし。やっぱいつものよーにまずは周辺を散策しなきゃな。で、てきとーなとこでメシを食べればいーや。よし、そうと決まれば早速行こう!
出かける前にパスポートや日本円、航空券などをひとまとめにする。セーフティボックスに預けなきゃね。あとはカメラと地図をリュックに詰め込み部屋を出る。ロビーに降りてレセプションへ行き、セーフティボックスを頼むと、奥のカウンターへ行くように言われた。そこには見るからにオバチャ〜ンって感じの女性がいて、どうやら彼女が両替とセーフティボックスの係らしい。なんかムッとした顔つきをしていて、ちょっとコワイぞ。彼女に貴重品を預けたいと説明するとカウンターの奥の小部屋へ通された。この部屋は1回に1人しか入れないようになっていて、必ずオバチャンが付き添ってくるのだ。すげぇ厳重。貸し金庫みたいなヤツにパスポート等を入れてオバチャンのキーとオイラのキーでダブルロック。こりゃーカンペキや。このとき、それまで仏頂面していたオバチャンがなぜかニヤっと笑って、日本語でこう言いやがった。「オットコマエヤネー」 ああん?いまなんつった?キョトンとしてたら、知ってる日本語はこれだけなのよー、なんてことを言ってニコニコしてるんだよね。さっきまでとはまるで別人。わっかんねーもんだよなー。
さて、これで身軽になったぞ。行くか!と思ったが、タダ酒チケットがあることを思い出し、忘れないうちに使ってしまうことにした。こーゆーのはさっさと使ってしまわないとね。ホテルにありがちな、ロビーの一画のいかにも高級ホテルのバーですって感じのとこがそれだった。めったにこーゆーとこには足を踏み入れないのでドキドキしながら席につき、キレーなドレスを着たねーちゃんを呼ぶ。「あのう、すみませーん、このタダ券で飲めるヤツ下さい」。うわー、カッコ悪りぃー、オレ。でも向こうも心得たもんでニコッと笑いながらちゃんとオーダーを受けてくれた。ちょっとしたら気取ったカクテルグラスでピンク色をしたフローズンドリンクを持ってきてくれた。一口飲んでみるとこれがめちゃ甘い。うまくねぇ。酒じゃねーよ、これ。失敗したなー。でもメニューを見たら結構イイ値段だったりして、トクしてんだか損してんだか。
3口ほどで一気に飲み干し、長居は無用、とっととバーを後にして、いよいよホテル周辺の散策へ行くことにした。いーかげん腹も減っているし、早いとこなんか見つけなきゃな。時間はすでに20:40位だった。なんかいい店ないかなー。