・第6日め(3/18) カンチャナブリ観光 ・


今日はカンチャナブリ観光。あの「戦場に架ける橋」の舞台になったところ。橋を見てみたいという単純な観光目的もあったんだけど、そこで日本人が「したこと」を感じたかったのね。実際にその場所に行ってみたかったのね。マジで。

7:30頃起きて菜穂ちゃん手作りの朝ごはん。普段の一人暮らしの生活を考えると、もうこれだけでウレシイ。ありがたいねー、ホントに。のんびりゆっくり食べた後、おでかけの準備を始める。子供たちは学校があるので、先に出ていった。運転手サンを呼び出してもらい、9:20頃菊川君と一緒に出発。菜穂ちゃんはお留守番。

運転手サンは名を「ハッサン」という。タイ人にしては珍しくけっこうぽっちゃりしている。なんでも酒と女が大好きで40前のバツいち独り者らしい。どっかで聞いたよーな話だなー。ま、いーや。運転はハッサンにおまかせ。オイラと菊川君はクーラーの効いた車内でくつろいでいればカンチャナブリまで連れていってくれるのだ。なんて贅沢なんでしょ、コレ。

バンコク市内はわりと渋滞も少なく、ほどなくして郊外に出た。それまでの都会的な景色から、いかにも「アジア」って雰囲気に変わってくる。今日は市場(バザール?)がたつ日らしく、あちこちの街角で屋台やら露店やらが出ていた。なんかすごい活気があって、タイのエネルギーを感じてしまった。ま、窓から眺めているだけだったんだけどね。

途中ウトウトしたりしゃべったり、ぼーっと景色を眺めていたりとしているうちに周囲はどんどん田舎になって来た。田んぼやジャングルみたいな林が遠くに広がっている。いくつかの街を通り過ぎ、11:50にカンチャナブリに着いた。ハッサンが言う。「カンチャナブリは暑いねー」。・・・・おい、タイ人でも暑いって、どの位の暑さだ?カンチャナブリ駅のそばの駐車場に車を泊め、ここから歩いて観光する。車外に出てまず思った。「おい、マジ暑いって、これ」

ホントにバンコクとは比べ物になんないほど暑い。日差しの強さが違う。空気もなんか水分が少ないぞーって感じで乾いている。周りには林も川もあるのに、空気はまるで砂漠のような感じだった。めちゃめちゃ暑くてクラクラしてくる。こんな暑いところで強制労働させられたら、そりゃー死ぬよ。まともに生きていられないって。やばいな、痛くなってきた。ちょっと歩くとすぐ「クワイ河」があり、そこに例の「橋」があった。たくさんの観光客がいて歩いて橋を渡っている。するとちょうど列車がやって来た。橋の手前で止まって警笛をならすと、みんな橋の待避所みたいなとこに逃げ始めた。橋がクリアーになったところで列車はゆるゆると進みだす。列車にたくさんの観光客が乗っているのが見えて、いつかは乗ってみたいなーとも思ったが、今日はそれよりも見たいものがあるかんな。

列車が行ってしまったあと、菊川君と2人で歩いて橋を渡ることにした。橋の入り口のとこに爆弾のレブリカがある。これ、ちょっと痛いなー。そう、まぎれもなくこれがあの「戦場に架ける橋」なのだ。黒い鉄製のしっかりした橋で、実際歩いて見ると予想以上に長い。こりゃー大変な工事だったんだろーなぁ。いろいろなことを考えつつ向こう岸まで行って、なんもないんでそのまま引き返す。さて、まずは橋を見れたし渡ったし、いよいよ行きますか、「戦争博物館」へ。

興味本位じゃなく、本当に日本人がなにをしたのか、を見たかった。話には聞いているし、とてもひどい惨いことをしたのは知っているけど、それを自分の目で見ておきたかった。橋から歩いて1分ほどのところに博物館があった。改修工事中で、ほんとにやってんのか?的な雰囲気だったけど、20バーツの入場料を払い入ってみる。あちこち展示物がちゃんとレイアウトされていなかったけれど、そこには悲劇の歴史があった。当時の様子を伝える模型や絵、捕虜によるスケッチや本当に当時使われていた貨車やいろいろな資料。ほぼ全てに英語と日本語で説明が加えられている。そしてちょっと下ったところに最初に作られた木造の橋のオリジナルも残っていた。場所を変えて資料館のような所へ行って見る。そこにはおびただしい数の当時の銃や武器があり、なによりショッキングだった膨大な数の「写真」があった。

博物館の出口に書かれていた「Forgive, But Not Forget」が胸にささる。

これを見て自分が何かをしようとか、タイに対する態度を変えようとか、そんなことは思わない。ただ知っておきたかった。知っておくべきだと思っていた。自分の目で見て感じて、歴史を心に刻んでおきたかったのだ。そしてそれは深く深く心に刻まれた。やはり来なければ本当にはわからなかった。

気分を変えて、腹がへって来たので昼メシを食べることにする。博物館のとなりに屋台村みたいなとこがあったのでのぞいてみるが、昼時がすぎてしまったのでろくな食べ物が残っていない。ビールを1本飲んでひと休みし、その先のテラスがあるレストランに入った。菊川君がメニューをいろいろ説明してくれて、オイラはタイ風のラーメンとビール、菊川君は肉野菜の炒めものかけ御飯みたいなやつをチョイス。ウェイターを呼んで菊川君がタイ語で注文した。すごいなー、けっこうタイ語ペラペラなんだもん。オイラ全くわかんねぇ。

ビールを飲んでいたら料理が出てきた。タイ風ラーメンを食べてみると・・・う、うまい。麺は白くて見た目はマロニーさんみたいな感じ、スープは透明でラーメンって感じじゃないんだけど、食べてみるとラーメンっぽいんだよな。こりゃーいける。菊川君のやつは見た目は普通。うまそうじゃんと一口もらったら、これがめちゃくちゃ辛い。彼は辛いもの好きなんだけど、この辛さは尋常じゃねぇぞ。そしたら菊川君「うーん、これちょっと辛いなあ」だって。注文するときに「あまり辛くしないでくれ」と言ったはずなのに、どーやら「辛くしてくれ」と伝わってしまったらしい。「これはタイ人でも辛いと思うよ」だって。だろーなあ。一口だけだったのにまだ舌がしびれてるもん。

お腹がいっぱいになったところで、あたりをうろうろしてみる。お土産屋さんとかあるけど興味はわかない。あとはたいして見るところもないので「ぼちぼち帰ろうか」ということになった。13:45出発。帰る前にちょっとわがままを言って連合軍共同墓地に寄ってもらう。なにもできないけれど、なんにもならないだろうけれど、自分の気持ちのためにお参りをしたかった。共同墓地にはきれいな緑の芝生の中、おびただしい数の墓石が整然と並んでいた。あちこちに花も咲いている。中央の大きな十字架の前まで行き、お参りをして帰ってきた。

14:00頃出発、バンコクへ戻る。帰りはあちこちで渋滞にはまったりしたが、16:40頃菊川家に到着。いったん部屋に戻り、一休み。子供たちも帰ってきていたので、夕食までみんなで中庭のプールで遊ぼうかっつーことになった。早速水着に着替え、エレベータで一階へ。ロビーを抜けて中庭に出ると、けっこう立派なプールがあった。すげぇなぁ。そこでは、このマンションに住んでいるらしき白人、日本人、アジア人の家族が子供連れで思い思いに遊んでいた。なんかいーなー、こーゆー環境。子供たちはなんの偏見もなしに一緒になって遊んでいるし、大人たちもビミョーに距離を持ちつつ、それでも仲良く子供たちを見守っている。ホントのインターナショナルってこーゆーんだろうな、きっと。

菊川君と一緒にプールに入って泳ぐ。ちょっと水が冷たかったけど、かえってココチ良い。奥の方には飛び込み台があって、2M以上の深さになっている。知らないで泳いでいって足が付かないんでちょっとびびってしまった。あわてて浅い方にもどると、あやちゃんがミョーに気合十分で泳ぎまくっていた。「見てみてー」ってな感じで。「あやちゃん、すごいねー」って誉めたら、さらに調子にのって本人最高記録となる10Mの遠泳をかましてくれた。「やったぁー、すっげぇー」・・・オイラ子供キライなんだけどな。こーゆーときって調子がいいんだから。

ひとしきりプールで遊んで部屋に戻り、ビール飲んで一休み。やがていい時間になったので、今日は菊川家おすすめのレストランで夕食ということになった。ハッサンの車にみんなで乗り込み、バンコク市内のレストランへ。「建興(?)酒家」という中華風シーフードレストランだった。ここは菊川君が日本から来たお客さんを連れて来ると、全員が「もう一度来たいっ」と言う位ウマイ店なんだそーだ。車から降りて目に入ったのは、店の裏手の台にずらっと並べられた生きたカニ。で、その奥には水槽があり、エビや魚がいっぱい泳いでいる。おもしれーとか見ていたら、脇のドアからまさにその店の料理人が出てきて、カニや魚を持っていきやがった。えー、これ食材なんか?ドアのすきまから中を見たら、ホントに今持っていったカニや魚をサバいて料理している。うわぁー、ここにいるカニやエビや魚、注文されたら即料理されるためにいるんだー。なんかカワイソウになってしまった。でもさ、これはうまそうだぞ。

店はバンコクでも有名らしく、けっこう混んでいた。ちょっと待って、ようやくテーブルに着く。店の中の一番目立つところにやっぱりあります国王の写真。王様はほんとに国民に尊敬されてんだよな。ま、それはソレとして。なに食べようかなーとメニューを見るが、うーむ。よくわからん。結局菊川君のお勧めで料理を適当に選んでもらい、飲み物はフンパツしてワインを注文。けっこうイイ値段だったけど、今日の夕食はオイラがごちそうするつもりだったからいいのだ。みんなで乾杯。ワインはめちゃうまかった。ちょっとホロ酔いになったところで料理が登場。ワゴンみたいのに乗せられて続々やってきた。チャーハン、タイ風ビーフン、カキの炒めもの、青菜炒め、そしてメインの「カニのカレー」。おお、うまそー。

この時の料理を今思い出すだけでもヨダレが出てくる。ほんっとーにうまかった。マジうまかった。ちょーうまかった。さいっこーにうまかった。カニのカレーは、さっき見たカニが一匹そのまんま入っていて、カレーそのものがまずめちゃくちゃおいしいんだけど、そのあとカニの身をカレーで手がベトベトになりながら食べるのだ。これはもう忘れられないうまさ。完全にやられた。その他の料理も全部美味しいったらありゃしない。これはホントすごかった。ここの料理を食べるためだけにバンコクに行っても後悔しない!っーくらい、ホーントにうまかったのだぁぁぁぁぁ。

あー、満腹。幸せ。さて、そろそろ帰ろうか、と会計をする。「さんざ世話になっているし、今日はごちそうさせてくれよ」とかっこつけてチェックを見て、財布を見てびっくり。うおー、しまったぁー。余分なお金を菊川君家に置いてきていたー。た。足りねぇー・・・・・・・。「すまん。菊川くん、ちょっとだけ貸して」。あー世界一かっこ悪りぃー。なにやってんだか。

再びハッサンの車で菊川君家に戻り、さっき借りたお金をさっそく返し、一息ついて風呂。風呂上がりにビール飲みながらみんなでお話。子供たちは先に寝てしまった。タイでゆっくりできる夜も今日が最後になるかんな。菜穂ちゃんと菊川君と3人で大人の会話の時間となった。タイでの生活やら将来の話やら、昔のバンドの話やら。やっぱ純粋な友達関係だから、バカも言えるし気兼ねもないし、話していてとっても楽しかった。で、一方でオイラはここでの生活がすごくうらやましいと思った。もちろんオイラにはわからない苦労が山ほどあるだろうし、仕事は大変だし、いいことばかりじゃないだろうけれど。でもオイラは人生の中で、1〜2年でいいからこういう生活をしたい、と思った。菊川君も時々「このままずっとタイにいてもいいかなー、って思うよ」と言っていた。

やがて時間も遅くなり、菊川君がすごく眠そうだったので、先に休んでもらった。菜穂ちゃんと2人で家のこととか生活のこととか、マジな話をひとしきりしたあと、さすがにオイラも眠くなってきたので寝ることにした。菜穂ちゃんにお休みを言って部屋にもどり、ベランダで外の景色を見ながらタバコを一服。なんとも言えない気分になってきた。素晴らしい家族だよな、こいつら。本当にいいやつらだよな。タイに来て良かったよな。なんかすごく名残惜しいよな。タイっていい国だよな。菊川君と友達でよかったよな。・・・・・・いろんな思いがごちゃまぜになって、ちょっとしんみりしてしまった。

時計を見たら、まだ22:30だった。でも今日はこのイイ気分のまま寝ようぜ。なあ。

いよいよ明日は日本に帰る日だ。


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