染郷正孝教授著「桜の来た道」(信山社)によれば、桜に限らず広葉樹は全てヒマラヤで生まれたのだそうだ。そのヒマラヤのNepalの首都Kathmandu(北緯28度は徳之島と同じだが標高1350m)周辺の標高1300m〜2000mに、ヒマラヤ桜=Wild Himalayan Cherry=Prunus Cerasoidesが晩秋初冬に満開になるという。日本にもヒマラヤ桜は移植されている。立派な3本が1本であるかの如くまとまって熱海市下多賀の熱海高校下にあり、12月初旬が満開時期だ。花は素人目には山桜を連想させるが、ずっとピンク色が濃い。実生で自然に生えたらしい若木が1本高校との間にあり(2018年11月に探したが無かった)、高校の北に近年出来た公園に何本か若木が植えられている。こちらは白い花だが、ススキや紅葉と共に撮影できて面白い。空気中の窒素酸化物を吸収する力が強いとかで、近年若木の栽培が進んでいることは喜ばしい。東大の赤門の南奥に位置する懐徳館の西隣にもあるが心無くも近年建てられた物置の蔭になっている。2本かも知れないが一かたまりになっている。小石川植物園の温室の西隣に若木が1本ある(2013/4訂正。枯れたからか切り倒され、ひこ生えを待つ?)。大井町線の戸越公園の正門(薬医門)前に若木が2本ある。一方には標識看板がある。看板の無い他方も同じと判定した。この2本の花は他よりも白い。
上記熱海高校下のヒマラヤ桜を2018年11月30日に見に行った時、熱海市多賀には他にもあると聞いた。熱海市立多賀中学の道路沿いに樹齢50年と言っていた太い樹が3本あり、高校下に匹敵するほど見事だった。また高校と中学校を底辺として山側に描いた正三角形の頂点の辺りに、幹の直径が25cmほどのピンクと白の2本があった。実生で白い花の木が生まれたか。また全然別の場所だが、熱海親水公園の桜の1本は若木だがヒマラヤ桜だ。
ヒマラヤ桜は秋に落葉後、山桜のように花と葉が同時に出る。つまり日本の寒い冬季に葉を維持しなければならない。冬が寒くないKathmanduではこれでよいのだが、寒い場所では困ることは明らかだ。ヒマラヤでも2000m〜2600mの高地には、ヒマラヤ緋桜=Prunus Carmesina (なぜかCamecinaという資料もある)とヒマラヤ高嶺桜=Prunus Rufaがあり、何れも春咲きだという。落葉後に冬季は冬眠し暖かくなってから花と葉を出すように適応したそうだ。桜は中国を経由して春咲きの形で日本に伝えられたとしている。ヒマラヤ緋桜は新宿御苑の新宿門と温室の中間点に数米の巨木がある(2021年訂正。枯れたのか2020年春には切り倒されていた)。日本では珍しい木でこの1本しか私は在処を知らない。花は寒緋桜と酷似しており同時期に咲く。強いて言えば寒緋桜よりやや色が薄く花弁がやや広く開いているように見える。ヒマラヤ高嶺桜は樹皮の美しさで販売されており、日本の高嶺桜を連想させる花の写真はWeb上にもなかなか無い。
上の写真がヒマラヤ桜で、熱海高校下の日本で一番立派なヒマラヤ桜を12月上旬に撮影。
下の写真は新宿御苑のヒマラヤ緋桜で、寒波で全ての桜が半月遅れた2012年の3月末に撮影。