山桜

 平安時代初期までの歌で、「花」と言えば梅だったのが、10世紀半ば以降は山桜を意味するようになったと言われる。吉野山を初め古くから日本人に愛された野生種だ。出っ歯の人の古い悪口に「鼻(花)より先に歯(葉)が出る山桜」というのがあるが、これが山桜の最大の特徴だ。染井吉野だけを見慣れた人は、葉を目障りに思うようだが、鮮やかな赤茶色の若葉が花に混じって美しい。

 東北以北を除く全国に分布しており古木も多い。例えば多摩地方ではあきるの市戸倉(五日市)の光厳寺の山桜が有名だ。東北では大山桜、北海道では蝦夷山桜が取って代わる。それぞれ山桜が気候に順応した変種だ。気象庁の桜の開花宣言は全国約70か所では染井吉野の標準木を観測するが、北海道13か所中8か所では蝦夷山桜を標準木としている。

 同じく地域順応変種の大島桜との間には多種類の自然交配種・人工交配種が存在する。

 写真は八王子市長沼公園で4月初旬に撮影した。


大山桜

 東北の山桜は大山桜とは聞いていたが、八ヶ岳で「山桜」と呼ばれている桜も大山桜であることを知った。色が濃い。

 写真は八ヶ岳三井の森で5月初旬に撮影した。