正確には、「一部の企業と従業員は一流。一部の国民は一流。国と国民の多くは二流」という国に向かって日本は移行しつつあるように思う。
戦前のBest SellerだったAdolf Hitlerの自叙伝Mein Kampfを昨年(独語で読む勇気がなく英語で)読んだ。彼は絶望的だった独を立て直すまでは真に立派な英雄だった。その後図に乗って独と世界を破滅に導いた。愚かな日本も「バスに乗り遅れるな」と「アジア新秩序」を掲げて破滅した。日本の現状を立て直すには、HitlerくらいのLeadershipが無いと無理だと思う。但し或る時点で引退して貰わないと困る。そううまくいく確率は微小だから、やはり「国は二流」にならざるを得ないと思うのだ。
日本の何が危ないのか? 財政問題だ。民主党政権時代までは歳入は歳出の半分だった。Abenomicsのおかげで2/3まで改善してきたが、まだ先は遠い。こんな状態が長く続くはずがない。増税か、歳出減か、インフレによる実質増税・歳出減か、経済発展による税収自然増か、どれも出来なければギリシャと同じ財政破綻だ。必要なレベルの増税、歳出減、インフレを採る内閣は選挙民が引きずり下ろすだろう。だから経済発展しかない。つまり日本が破綻を避けることができるただ一つの道は経済発展だ。それもなりふり構わず進めてやっと成果が上がるか否かというレベルだ。
経済発展に反対する人は居ないが、それをなりふり構わず進めようとしたら総論賛成各論反対の渦が巻き起こる。「原発反対」「安保法制反対」「TPP反対」「規制緩和反対」を見よ。感情論としては分かる。だが彼らは本気で反対している。その深層には「なぜそんな危ないことをするんだ。下手に変えてくれるな。今のままでいいじゃないか」という立場がある。「今のまま」があるのならそれも理解できるが、「今のまま」はどう考えても無い。この誤謬の保守主義を流行らせたのは、国民の不勉強と、不安を我が党の伸長につなげたい野党と、火中の栗を拾いたくない与党と、視聴率・購読数にプラスに働かぬことを避けるマスコミだ。それぞれの現状は変わりそうもないから、私は日本の将来に悲観してしまう。念を押すが「経済成長は不要、今のままでいい」という解は無い。増税と歳出減は知れており、税収の自然増がないとジリ貧と破綻しかない。
誰が考えたって日本の採るべき道は明白だ。日本国内だけで商売している限り、人口が増えないのだから経済の総計が大きく伸びるはずが無い。世界の一員として世界と共に経済伸長するしかない。輸出だけ伸長させてくれればよいが、そんなに世界は甘くない。輸出伸長は輸入伸長とペアだ。日本が尊重される世界の一員であるためには、TPPも安保法制も必要だ。経済発展には規制緩和も原発も必要だ。独は原発を止めて仏の原発から電力を買うことにした。おかげで電力需要の大きい企業は国外に出て行った。日本は中国や韓国から原発の電力を買うことすら出来ない。
だが企業は別だ。日本の労働規制は厳しくいざという時に社員のクビを切れないから、外国同様にクビが切れる非正規従業員を増やすか、外国で人を雇う。外国の経済伸長を掴むために、外国での生産・売上を伸ばして外国のGDPを押し上げる。経営者にして経済コンサルの冨山和彦氏は、自身が経営に参加するOmronと岩手交通を典型として、GlobalなG型とLocalなL型と整理し、G型は伸長を、L型は経営効率向上を目指すべきだとする。G型には大企業が多いが、特殊分野で伸長している中小企業もある。外国企業が日本でG型として活動することも増えよう。私が「一部の企業と従業員は一流」と言うのはG型企業だ。従業員は英語検定試験が課され、外人の上司に指示され、外国に飛ばされるが、高給に恵まれる。G型の企業家やProfessionalや研究者や芸術家も今後は増加するだろう。
これらのG型企業やG型人材は日本の名声を高めるだろうが、日本のGDPへの貢献は限られよう。だからL型を含めて日本経済はジリ貧になっていく確率が高い。その原因の第一は、国民の「今のままでいい」という有り得ない誤謬の保守主義だ。それを打破するにはHitlerくらいのLeadershipが必要だから、とことん困窮しない限り多分打破できないだろう。我々や家族は自衛上是非G型人間になるか、G型企業で働きたいものだ。 以上