Eulogy(賛辞), Panorama, Animation, 観光案内 Eulogy(賛辞), 短編随筆, 三宅島の噴煙 Pictures of the current season
Sue's recent experiences Shig's recent thoughts 自己紹介
短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

Home, 目次


うつせみScience
2021年 9月 3日
             LGBT

 やっとLGBT=Lesbian, Gay, Bisexual, Transgenderという言葉を覚えた と思ったら、最近はLGBTQIA+=Questioning genders, Intersex, Asexual, +=Othersなどとやたらに長くなって、その概念も把握し難い。

 「LGBTの人は左利きの人と同程度の人口の10%」という或る記事を見て 私はウソだろうと思った。左利きと違って公表し難いとは言え、私が生涯 出遭ったLGBTはGの2人しか居ない。1人は女性役の男性だと私が勝手に想 像した女性的な中年男性だ。もう1人は、Gを公言している極めて男性的な 若い男だ。言われなければ判らなかった。魅力的な女性を感じる幸せが無 いなんて、こんなお気の毒は無いと私は感じてしまうが、ご当人達は、魅 力的な男性を感じないお前の方が不幸だと言うのだろうと頭では思う。

 NHK BS Premiumで、木曜夜に「Humanience」という造語の番組があり、 様々な人体科学を取り上げている。「あなたの好きな井上あさひアナウン サーの番組が始まるわよ」とワイフが注意してくれる。何か月か前になる が性別の話があり、「男と女に二分されるものではなく、中間的な存在が Spectrumのように連続している」と紹介していた。その時私が疑問に思っ たのは、異性愛が無いとか弱い人は、子孫が残せないか、残せても少数の はずだから、数百年のうちにその形質は消滅してしまうはずなのに、綿々 とその遺伝子が生き残っているのは何故だろうという点であった。人口の 10%がLGBTなのに、それを抑制し隠して普通の結婚生活を送っている人が ほとんど、と仮定しなければいけないのだろうか。

 この疑問に答える記事が8月23日のNature Briefingにあった。但しLとG だけについてであり、それもLとGを区別しないで(異なる蓋然性があると 思うのだが)解析している。"Genetic patterns offer clues to evoluaiton of homosexuality", Sara Reardon 同日にNature Human Behaviourに発表された論文を紹介している。

 従来は"No Gay Gene" と言われ、Gayになる遺伝子は無いとされてきた 謎を解いている。豪州BrisbaneにあるQueensland大の研究者Brendan Zietsch氏と彼のグループがその論文を出した。米英3か所のデータベース にあった欧州人(白人。男女区別せず)の遺伝子とアンケートを調べた。 同性と交わった経験者478千人と非経験者358千人の遺伝子を比較した。但 し体の性で分類し、心の性がもし異なっていても考慮していない。

 結果は、特定の遺伝子が異なるということではなく、だからNo Gay Geneなのだが、経験者の場合は小さな変異=Markerが多数、遺伝子の中に 散在していることが分かったという。そのMarker群の一部だけを持つ場合 には影響が見られない一方で、そのMarker群を一揃い持つ人が、見方で経 験者の8%乃至25%居たという。ComputerでSimulationしてみると、この Marker群を一揃い持つと子孫を残し難いので、60世代を重ねるとMarkerは 消滅してしまったという。つまりLやGには別の要因が働いている。

 そこで上記の非経験者を調べ直すと、上記Marker群を一揃い持っている 訳ではないが一部持っている人が非経験者の中に居たので、その共通点を 求めた。結果的には、@身体的に魅力的な人、A多数(Numerous)の異性と 交わったと自己申告した人、Bリスクを犯して新体験を求める傾向がある と自己申告した人、に一部のMarkerを持つ非経験者が多かったそうだ。

 つまり上記Marker群は、その一部だけを持っていても、LやGとして発現 することはないが、世代を重ねる内に偶々Marker群が多数揃った人が生ま れて、LやGが発現するという主張だと私は理解した。

 この論文に対しては、結論が早過ぎるという批判が殺到したそうだ。そ の典型は、著者が自ら指摘しているそうだが、LやGが公にできない時代に は、自由であれば経験者になっていたはずの人が自制して、非経験者に留 まっている可能性があるという議論だ。また男女を区別していないことに も不安要素があるし、自己申告は正確だろうかという疑念もある。

 愚見では、科学思考の入り難い分野に一石を投じた論文には違いない し、冒頭の私の疑問への1つの答にはなっている。それにしても私も周辺 の人々も新体験を求める傾向が強いが、LGBTでなくて良かった。 以上.