昨春の阪大入試で物理に出題ミスがあり申し訳なかったと1月6日に謝罪会見があったことが、TVで大きく報じられた。都内の予備校(どこかは不明)の講師吉田弘幸氏が8月初旬に「3つ答があるのに1つしか正解にしていないのはおかしい」と阪大に申し入れ、下旬に「間違いはない」と返答があったという。再度指摘したが回答がなかったので、吉田氏は今度は文科省に申し入れたが、回答は無かったという。その後今回の謝罪だ。
ニュースはその経緯とか善後策とかに焦点を当てていたが、私の関心は「どういう問題でどうミスをしたのか」であった。Internetで大分調べてみたが、みな物理は苦手らしくて分からない。フジTV系のニュースがInternet上に収録されており、吉田講師が阪大に出したemailが瞬間映っていたのを発見し、何度も見直して吉田講師の主張を(多分)理解した。しかし私の賛成度合はゼロだ。私の見解では阪大が平謝りに謝る必要は全く無かったと思うのだが。。。もしかしたら私が何かを見落としているのか、私の物理の知識が怪しいのかも知れないので、以下周囲条件をご提示して、愚見の不足を諸賢にご教授頂きたい次第である。
[出題]実際の出題の文字数は多いが、要点だけを示す。絵は「うつせみ」に入り難いので入れられるように変形して示す。
[設定条件] 次のような絵が書いてある。
W---------F-------------------------------M------
Wは「固定壁」、Fは音叉で点音源、Mは遠く離れた固定マイクだ。
問4 音叉Fを右方向に移動させるとマイクで感じる音量が周期的に変動。W-F間の距離dと n=1,2,3...を使い、dと波長λの関係式を示せ。
問5 2度実験し、1度目はd=50cm, 81cmで、2度目はd=49cm, 83cmで強い音が観測された。音速を有効数字2桁で推定せよ。
[私の答](問4のみ。問5に疑義なし。)
出題者は固定壁を完全反射体と考えて出題しているに違いない。W-F間の1往復距離=2d が波長λのn倍であれば、音叉の出力が倍増される。よって問4の答は 2d = nλ という1つの答しかない。なぜ3つも答があるのか理解に苦しみ、色々考えたが分からなかった。
[吉田講師の指摘]emailをフジTVが映したのを垣間見た所では、3つの答があって、2d = nλ、(n-1)λ、(n-1/2)λ であると主張したらしい。
[私の考察]
nλが正解だと思う。(n-1)λは、nλと同じで、違う所はd=0を認めるか否かだけだ。絵はd=0ではなく、音叉は右方向に動かすと書いてあるから d=0は無い。よって(n-1)λは間違いだ。また2d=(n-1/2)λだと反射波は音叉の位置には逆位相で戻って来るから、相殺して音叉の出力が等価的に最小(理想的にはゼロ)になる。よってこれも間違いだ。
地震波は屈折してほぼ下方から襲う。まず疎密波(圧縮伸長の波)のP波の縦揺れが来て、次いでS波(撓み波)の大きな横揺れが来る。だからP波で地震警報を出し新幹線を止める。弦楽器の弦はS波と同じ撓みで音を発する。W点で固定された弦をF点で振動させると、例えば上方向の波頭がW点に達した時に、固定点は等価的に下方向の波頭を生じて相殺し固定点の振幅をゼロにする。この下方向の波頭が逆位相の波としてW点からF点に戻って行く。この場合は 2d=(n-1/2)λでF点の振幅は最大となり、2d=nλでは相殺する。音波はP波と同じ疎密波で、密の波頭が壁にぶつかると、密の波頭がゴムマリのように反射して戻るから、2d=(n-1/2)λではF点で相殺する。吉田講師の指摘は当たらず、阪大が謝る必要は無い。
[Internet雀]
Internetでは、マイクは空気圧の微分で出力を出すとか、壁の分子は蠕動しているから反射波の位相が変わるとか、色々的外れなことが書いてあった。音波の壁での反射が説明してない出題が悪いというのもあった。
[感想]
阪大の大先生が挙って慎重審議して謝罪会見をしたのだろうが、私には理解できない。私が誤解しているのか諸賢のアドバイスを頂きたい。以上