7月はApollo計画が月に宇宙飛行士を送り込んでから50周年だった。1961年にKennedy大統領が議会演説で、1960年代の内に "landing a man on the Moon and returning him safely to the Earth"という国家目標を高らかに掲げた。その目標通りに1969年7月20日に、Apollo 11号の宇宙飛行士 Neil Armstrong と Buzz Aldrin が月面の埃っぽい地面に靴跡を付け、Armstrongが "That's one small step for [a] man, one giant leap for mankind."と言ったのが有名になった。月の引力は弱いから、2人が重たげな宇宙服でピョンピョン跳んだ映像が脳裏に焼き付いている。
Apollo 1号は1967年に地上実験中に火災が発生して死亡事故となった。Apollo 4-6号は無人で地球周回軌道上でテストした。1968-9のApollo 7号と9号は有人で地球周回軌道上でテストを繰り返した。Apollo 8号と10号は月を周回しつつテストした。その後にApollo 11が初めて月面に着陸した。以降1972年までに7回の打ち上げがあり、うち6回は成功裏に月面着陸を果たし、月の岩石を合計382kg持ち帰っている。1970年のApollo 13号だけは、番号が悪かったのか、月の間近で酸素ボンベが爆発して機器と電気系統を破壊したため、命からがら帰還した。
Apollo 11号の成功で東芝青梅工場では「Apollo計画に学べ」という檄文と写真が掲げられた。9か月後には"Except Apollo 13"だよな、ということになった。Armstrongは、生還率50%と覚悟していたという。
Lego社(Denmarkから世界へ)は50周年を記念して、宇宙船を先頭に載せると363ft=110.6mにもなったSaturn V ロケットの約百分の1のプラモデルを発売した。$119という広告を見て買いたいと思い、日本の通販サイトを見ると\27kとか\33kとかえらく高い。幸いAmazonだけは\14.8kだったので直ぐ注文した。ロケット表面は別だが内側はLego特有のボツボツが付いた無数の部品から構成される。普通のプラモデルなら一体成型部品にするところを、Legoは一見標準部品を巧みに組み合わせて複雑な形を作るから、部品数は約2千個に達する。それを0.1g単位で管理した手順通りの12袋で提供する。余剰品・欠品が出るに決まっていると危惧していたら、案の定欠品が1個あり、割り箸から部品を制作する必要があった。余剰部品は61個残った。設計ミスに違いない4個の部品は、2mm削って合わせた。179頁の組立説明書には感心した。翻訳は大変ということなのだろう、文章が一切無く、絵だけの説明だ。およそ十数時間の作業量だった。
Apollo以降半世紀月に行く人は居なかったが、最近また月旅行ブームだという。Apollo時代は米ソ冷戦が背景にあり、米国は一時国家予算の4.5%を注ぎ込んで月面着陸を推し進めた。以来そんな馬鹿をする国は無かったが、最近は技術が発達して、当時よりも容易に行けそうになったため、再び月旅行が熱くなってきたのだという。一番力があるのが米NASAと欧州のESA=European Space Agencyだ。印・中・露が積極的で、日本でも無人探査機を送り込む計画が進んでいる。Amazon CEOのBezos氏は、宇宙旅行会社Blue Origin社を立上げ、5年以内に月に人を送り込むという。
国際条約があるそうだ。Apollo以前に米英ソが調印し、その後参加国が増えて107国になったという。それによれば、何人も宇宙では土地を持てない。しかし誰かがどこかに着陸したら、他人はその近くは避けなければならないとしている。月には水の可能性があり、チタンなどの鉱物がある。また北極南極の山頂には年中陽が当たっていて太陽光発電に理想的な場所もあるそうだ。地球の反対側は地球からの電波も届き難く、天体観測に理想的だという。そういう有望な土地に最初にツバを付ければ、他人が近くに来難いから、最初に到達したいインセンティブが働き始めているという。中国やインドには国威高揚の意図もあるのだろう。
その中でESAの動きは特徴的だ。伊Veniceに中立のNPOを立て、欧州のみならずあらゆる国と企業に参加を呼び掛けている。国際協力で "Moon Village"を月に幾つか建設することを目指している。こういう理想主義が通用すれば世界は平和に月の可能性を追究できようが、温暖化対策すらまとまらないのに、可能性はあるのだろうか? 以上