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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2006年 5月12日
              BMW

 還暦記念に買った1996年モデルの赤い三菱Diamanteは後継車種が無く、古希記念で2006年モデルのBMWに買い替えた。上位シリーズの最下位車種がお買い得だから、BMWもセダンでは一番安い320i型にした。営業マンは、Diamanteが10年15万kmと聞いた途端に下取査定の話をしなくなり、リサイクル費用の話を始めた。しかしこの10年間全く故障しなかったのは、如何にも古き良き黄金時代の三菱だ。BMWを納車した営業マンが三菱を運転して去っていく後姿に寂寥を感じたのは初めての体験だった。BMWの後部にはFreude am Fahrenというステッカが貼ってある。BMWのキャッチフレーズで「Joy in Driving / Sheer Driving Pleasure」「駆け抜ける歓び」と翻訳されている。BMWも良い車だ。ワイフは「私の気持を汲み取って走ってくれる」「守られている感じ」と詩的に喜ぶ。BMWに限らぬが近年の車の電子化は著しい。Benzを買わなかった大きな理由が、C200はモデル変更予定があり、現状では電子化が遅れていることだった。

 三菱の最高車(の最下位車種)に乗っていたおかげで、BMWでも大感動している訳ではない。評価するのはFreude am Fahrenだ。私は独国が好きで、BMW=Bayerische Motoren Werkeの南独Munchenを首都とした旧Bayern(独名)=Bavaria(英名)は好きだ。黒い輪に囲まれた円を4等分して白と青に塗り分けた社標は、白青の斜め市松模様のBayern国旗と、社の発祥がMesserschmitt向けなどの航空エンジンで、青空に白いプロペラを回したことを表現している。320iの"i"はInjectionで、直噴式エンジンを積んでいる。そのためか三菱よりかなり燃費が良い。今何km/lの燃費で走っているというメータがあり、速度計が260km/hまである。BMW 320iは残念ながらDiamanteより少しDown-sizingになった。独人用に幅と高さは増えたが、長さは245mmも短くなった。これはトランクの奥行きの差だ。

 道行く乗用車を数えた。HatchbackやVanが多くトランクのある車は1/4に過ぎない。保守的な我が住宅地でも1/3だ。トランクも奥行きが短い。車長を抑制して車内を大きくとった設計だ。狭い敷地の駐車場に入れ易いし、大体日本人はトランクをあまり使わない。ふと見かけた旧機種のBMW 320 ではトランクがもっと長かった。どうもトランクは受難の時代らしい。ただ我家の特殊事情では、荷物の多い外人を時々乗せるからPriusのようなHatchbackでは駄目で、最低BMW 320i 程度のトランクが必要だ。トランクがやや狭くなっただけではなく収納スペースがあまりない。Glove Boxは小さいし、座席の背中にポケットがなく、CDの置き場もない。当面持ち歩きたかったA5判の取扱説明書を車内に格納する場所が無いので、プラスチック細工の箱を作り座席と中央コンソルの間に格納した。

 iDriveと呼ぶ操作装置が中央コンソルにあり、Navi-TV画面に出るMenuを操作する。iDriveはラジオの音量ツマミのような形をしているが、回転だけでなく前後左右と下に動く。走行中の地点をNaviに登録するには、iDriveを押してMenuモードに入り、後方に倒してMenu群を選び、回転してMenu項目を選択してから下に押して決定する。長押しと短押しで登録記号が異なる。万能の便利なツマミだが、Menuには深さがあるし、要領を覚えるには時間が掛かる。上記走行中の地点登録操作は明らかに問題だ。

 アクセルを踏まなくても設定速度で走ってくれるCruise Controlを付けた。留学時代に米国で先輩から$70で買って初めて所有した車歴10年の高級車Buickにも、メカ式のものがあったので懐かしい。シャクの種は、Navi-TVの画面にはVideo入力端子がなく、従来視聴してきたモバイル放送鰍フ衛星放送で映像チャネルの契約をやむなく中止したことだ。

 一昔前に「Microsoftが車を設計したら」という英文記事で「エンジンを止める時にはStartボタンを押す」という一文に大笑いした。ところがBMWに限らず最近の車は、本当にそうなってしまった。但しボタンにStartとしか書いてないWindowsよりは少し親切で、ボタンにはStart/Stopと書いてある。金属のキーで電源スイッチをONにする旧方式に比べて、RFID型のキーは車泥棒にとっては難物かも知れない。

 古希記念の新車を大事にしてFreude am Fahrenを満喫しよう。 以上