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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2002年10月 9日
            Bossa Nova

 JazzのコンサートでBossa Novaを聞き、忘れていたものを思い出した。V字型に置いたピアノと電子キーボードを同時に弾くリーダに、ベース、ドラム、フルートが加わり、高音が美しい女性ボーカルが歌うJazz 12曲を支えた。演目の一つがBossa Nova Medleyで、私が好きなCorcovadoが含まれていた。4月にRio de Janeiroに遊び、両手を十字に広げたキリスト像が市街を見下ろす岩山Corcovadoにも登ったから、感慨も新ただった。

 実は一番好きなBossa Novaの曲は定番「イパネマの娘」だ。 米国大学院生の頃、勉強中にBGMに流していたFMラジオでよく聞いた。A Garota de Ipanema = The Girl from Ipanemaは1960年代の大ヒット曲だが、忘れた人は次の頁で聞けばその甘美なメロディーを思い出して貰えるだろう。
www.glorydays.com/InterActive/music/Girl_from_Ipanema.htm
www.faceweb.okanagan.bc.ca/GLOBAL/BRAsong.html
RioのIpanema地区で、作詞家Vinicius de Moraesと作曲家Antonio Carlos Jobimの行きつけのバーの前を、毎日学校帰りに通る女学生が居たそうだ。MoraesはOxford大卒でLos Angeles副領事の経歴を持つ詩人、JobimはBrazilで撮影した仏映画で1959年のアカデミー賞作品「黒いオルフェ」の主題歌の作曲で名をあげ、米西海岸に別荘を持つ。二人とも米国文化に接したインテリのBrazil人である点に注意。Jobimは後に「彼女は長い金髪、明るい緑の瞳、素晴らしいスタイルで、いわば完璧だった」と述べた。彼女に想を得て二人が1962年に「イパネマの娘」を出し世界的に有名になったため、今ではこの通りはRua Vinicius de Moraes、このバーはA Garota de Ipanemaと改名されているという。英語の歌詞は、
Tall and tanned and young and lovely / The girl from Ipanema goes walking / And when she
passes / Each one she passes / Goes Aaah.
When she walks it's like a samba / That swings so cool and sways so gently / .....
Oh, but I watch her so sadly / How, can I tell her I love her / Yes, I would give my heart
gladly / But each day as she walks to the sea / She looks straight ahead not at me./......

 Rioの白砂遠浅の海岸は東から「おばさん海岸」のCopacabana、「お嬢さん海岸」のIpanema、「お金持ち海岸」のBarraと続く。Ipanema海岸は確かに、一辺10cmの正三角形の布3枚で身を飾った若いお嬢さんが多く、光学ズーム6倍 x 電子ズーム3倍のデジカメが威力を発揮した。但し太めの女性がBrazilでは美人だそうで、その意味では発展途上のスリムなお嬢さんが多く見られ、歌のモデルの女学生もかくやと思われた。

 Bossa Novaは、Carnivalで有名なSambaと、Jazzの融合から、Rioを舞台として生まれた。1910-30年代にRio郊外の工業地帯に東北部から大勢の黒人労働者が流入し、アフリカ文化に根ざした2/4拍子の情熱的で開放的なSambaの歌と踊りを発達させた。Jobimは、野生と熱狂のSambaを踏まえつつ、Jazzの中では冷静で高尚なジャンルCool Jazzを取り入れた知的で落ち着いたBossa Novaを1958年に発表した。Percussionが2/4拍子を刻む上でボーカルは、しばしば小節の頭に8分休止符を入れてSyncopationとする不思議なリズムで歌う。内省的にささやくようなボーカルを自由に歌わせるために、ピアノや打楽器はむしろ抑え気味に伴奏する。情熱のSambaに親しんだBrazil人にとってはまさにNew Wave = Bossa Novaだった訳だ。このJobimと、歌手のJoao (ジョアン) Gilbertoがブームを主導した。一方米人ではJulliard出身のTenor Sax奏者でBenny GoodmanなどともやっていたStan Getzが、Cool JazzからBossa Novaの世界に入り、またFrank Sinatraなどの有名歌手も1960年代の米国のBossa Nova人気を支えた。

 内に秘めた情熱を絶妙なリズムに乗せて語るように歌い上げるBossa Novaは心を揺り動かすものがある。久し振りに聞いたCorcovadoでそれを再確認した。この曲もJobimの作曲で、Corcovadoを望む男女の恋がテーマだ。SinatraのCDは米人の共感を得難いCorcovadoには言及せず、Quiet nights of quiet starsという表題で静かな夜の恋心を歌う。  以上