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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2010年 4月24日
           Concordeを見た

 Carib海にBarbadosという面積430km2に人口僅か28万人の島国がある。人口の80%は砂糖黍農園の奴隷の子孫でアフリカ系だが、1966年独立まで英領だったため英語の国だ。北緯13度の熱帯にあり米国の影響下で避寒地・リゾート地として栄えている。電話の国番号は1で、米国の一地方の扱いだ。観光立国だから国際空港と客船港湾施設は大都市並みだ。

 3月にそのBarbados国際空港に隣接するConcorde Museumで英仏共同開発の超音速旅客機Concordeを見た。London/ParisからNew Yorkまで来たConcordeが週末にはBarbadosまで定期就航したとのこと。乗客は全て大金持ちのリゾート客で、1泊US$1,400以上のBarbados一番のホテルに直行したという。Concordeの飛行停止が決まった時、その縁を言い立てて1機を買い受けたそうだ。Concordeの生産台数は僅か20機、うち14機が商用機で、1機は事故で失われたため、13機が今世界のあちこちで保存されているという。因みにYS-11ですら180機製造されている。

 私はConcordeに乗ったことはない。一度だけWashington Dulles空港で、Concordeが轟音と共に離陸するのを見ただけだ。会社のY先輩は或る出張の際Concordeで大西洋を横断したことを自慢していた。会社の旅費規定をどう捻じ曲げたのか不思議に思いつつも羨ましかった。

 Museumは格納庫で、全長61.66m(Boeing 747は70.6〜76.3m)、三角翼の幅25.6m(同59.6〜68.5m)の巨大な機体がBritish Airwaysのロゴも鮮やかに鎮座していた。BoeingやAirbusに比べて非常にスリムだ。格納庫に収納するために垂直尾翼の上部を一部水平に切り落としたかと思ったのは誤解で、切り落としたような形が元来だった。三角翼を天井に見立てたテーブルで軽食を取り、三々五々後部タラップを上って狭い機内の4列の客席を見学し、操縦席を覗いて前部タラップから下りた。乗客数92〜120で全席同一クラスだ。昨今ではEconomyでも通用しそうもない薄手の座席だ。頭上の荷物入れにはアタッシュケース位しか入らない。Concordeの歴史を綴ったVideoが白い機体に投影されるのを見て見学会を終わった。

 79t(t=トン)の機体(Boeing 747は162〜215t)に96tの燃料と乗客を乗せたこの巨体をMach 2.02(音速の2.02倍)で30年間、貰い事故以外は大過なく飛ばせた技術に私は感動して"Glorious victory of technology, but sad failure in business !"とつぶやいた。それを聞いた理科系PhDの米人が「いや、そうとも言えないよ。航続距離 7,250km(Boeing 747は9,800〜14,800km)が短い。San Francisco〜東京間(9,502km)が飛べれば事業的にもずっと違っていたよ」と解説した。なるほど!!

 Concordeは2000年に乗客乗員全員が死亡する事故を仏で起こした。離陸時に、先行の離陸機が落とした金属片を踏んだタイヤが破裂し、その破片が翼を打ち、衝撃波で燃料タンクの一部が壊れて火災となった。貰い事故でも安全を確保するのが安全設計だが、気の毒な事故ではあった。

 Concordeの商用飛行開始は1976年で、London-BahrainとParis-Dakar-Rioだった。一時は100機を超える注文予約をJALなど多くの航空会社から得たが、1973年のオイルショック(←乗客が数倍のBoeing 747と同程度の燃費)、航空会社の業績悪化、離着陸の騒音、超音速時の衝撃波など不利な条件が重なり、早期に超音速を諦めた米国の妨害もあり、結局Air FranceとBritish Airwaysだけが採用して、London, Paris, New York, Washingtonの間で主として運航した。そこで上記事故と2001年の9.11テロによる航空旅客減少に見舞われ、Airbus計画推進の逆風もあり、2003年に飛行停止に追い込まれた。騒音の主因は、旅客機の主流Turbofan Engineではなく、Turbojet Engineを採用したことにある。超音速での性能と、断面積小で空気抵抗小が採用理由だったが、騒音が泣き所となった。

 Concordeの"e"は余計で仏語におもねているという英国粋主義的意見に対して英技術相は「Englandの"e"と思えばいい」と応えたそうだ。すると「機首を製造しているScotlandをどうしてくれる」との声があり、大臣は「Scotlandの仏語名Ecosseでもある」と切り返したという。

 やはりConcordeはすごい、航空機技術の金字塔だと感じた。   以上