Coronavirusが話題になり、なぜCoronaなのか知りたく思った。単語CoronaはCrownと同根のラテン語ギリシャ語から来ていて「冠」だ。Auroraが北極の周りに作る光環(人はその一部を見る)、太陽や月のカサ、皆既日食時に見える環状の散乱光またはそれを生じるガス層などを示す。Coronavirusは、球形の表面に突起が無数にある。TVでよく見られるように電子顕微鏡で平面的に見ると、円形の周辺にやや薄い円環が見える。それが皆既日食のCoronaに似ているからCoronavirusと言われるようになったとも、王冠に環状にぶら下がる飾りに似ているからとも言われる。
Wikiへの敬意を改めた。一般的なCoronavirusという項目がある他に、既にNovel coronavirusという項目があり、Wuhan(武漢) Coronavirusとも言うと書いてある。Crowd Databaseの素晴らしい所だ。2019 nCoV(Novel(New) Coronavirus)という表記もあるそうだ。最近空港で求めた英誌The Economist January 18-24, 2020 号には、Emerging diseases: The Seventh Crown という記事があり、武漢発祥のVirusは人類が遭遇した7番目のCoronavirusだと、1番目以降の歴史を概説している。以下Wikiに倣ってCoronavirusをCoVと略記する。
CoV一般では、哺乳類と鳥類全般に感染し、人間の場合は肺炎を発症する。牛豚では下痢、鶏では上部呼吸器官に炎症を起こす。承認された予防薬も治療薬も無いという。半年程度の流行で終わり、ワクチンの開発が間に合わないし、たとえ開発できても商売にならないことが背景にあろう。細菌と違って顕微鏡では見えないから、電子顕微鏡が発達した1960年代から発見されるようになった。2003年以前には、カゼの患者の鼻から@A2種類のCoronavirusが発見されたが、普通のカゼの症状だったそうだ。
2002年終わりから2003年にかけて、BSARS=Severe acute respiratory syndrome=重症急性呼吸器症候群が、(後に分かったところでは)雲南省の蝙蝠から人にうつり、南中国から全世界に蔓延し、37ヶ国で死者774人、死亡率9.6%を記録する大脅威となったことは記憶に新しい。SARS CoVの遺伝子は2003年に特定された。興味深いことに、かくも猛威を振るったSARSだが、ほぼ半年で収束し、以降一度も流行は無い。
SARS-CoVを特定する努力を契機として、2種類のCoVが発見された。いずれも重症には至らず、普通のインフルエンザの症状だという。CHCoV-NL63は、2004年にオランダの幼児から発見されたが、これは新発生のVitusではなく、幼児と老人を中心に人類に昔から広く循環していて、呼吸器系患者の4.7%で発見されるものと判った。続いてDHCoV-HKU1が、深センから戻った香港の老人の患者から2005年に発見された。
Eしばらく新種出現が無かった後、Middle East respiratory syndrome-related coronavirus (MERS-CoV)が2012年にSaudi Arabia、次いでQatarの患者から発見され、2015年までに中東全域、東南アジア、中国、欧米などに広まった。1年以上中東の人々の間で循環していたことが分かった。SARSの次がMERSか、とゴロの良さに驚いた記憶のある方も多いはずだ。
そして今回武漢の主要市場を舞台として発生した F2019-nCoVである。動物肉と大型魚類を扱う市場なので、動物原性感染症だろうと推察されている。遺伝子を調べると、SARS-CoVに80%類似し、蝙蝠保有のCoVに96%似ているので、蝙蝠が原因動物だろうと言われている。蝙蝠の生肉を扱っていたのか、屋根裏に蝙蝠が住んでいたのかは分らない。今迄で世界に恐怖をばら撒いたSARS、MERS、2019-nCoVの3つの内2つが中国発祥で、しかもSARSは蝙蝠由来が確認されており、2019-nCoVもそうらしいというのは、中国では蝙蝠と人間の距離が近いのだろうか。HIVもアフリカの猿から来たとされている。動物から貰ったVirusは人間に免疫が無いから怖い。
タイ保健省の2月2日日曜日の発表では、インフルエンザの薬タミフルとHIV抗ウイルス剤(不明)を混合投与した所、中国から来た71歳の中国人女性が48時間でCoV陽性が陰性になり退院したという。希望を持ちたい。感染力は非常に強いが、早期に適切な治療を受ければ怖い病気ではないらしい。武漢では医療が追い付かず死亡率が5%越えなのは気の毒だが。以上