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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2006年 7月14日
             Cyclone

 今年は早くも台風が来た。台風は、東経100〜180度(Malay半島から日付変更線まで)の北半球の熱帯低気圧で、10分間の平均値で最大風速が34knots=39mph(時速マイル)=17.2m/s以上のものをいう。台風がこの地域を出れば失格で、外から入れば台風となる。(1)17.2〜24.5m/sが「弱い台風」Tropical Storm、(2)17.3m/s〜が「並みの強さの台風」Severe Tropical Storm、(3)32.7m/s〜が「強い台風」、(4)43.8m/s〜が「非常に強い台風」、(5)54.1m/s以上が「猛烈な台風」で、英語のTyphoonは(3)以上をいう。なお米軍では1分間の平均値で最大風速を計る。なお気象庁は風速15m/s以上の強風域の半径の平均値で、小型から超大型まで分類し、「小型で強い台風」のように表現する。但し(1)(2)では国民が台風をナメル弊害が出たので、「弱い」とか「並みの」とかは言わずに単に「中型の台風」のように発表するように変えた。日本では台風は年間平均26.7個(Typhoonは16.9個)観測され、上陸するのは平均2.6個である。

 32.7m/s以上の国際的な一般名詞はCycloneだが、アジアではTyphoon、米国ではHurricane、印度や豪州などそれ以外ではCycloneと呼ばれる。米国では39mph=17.2m/s以上はTropical Stormとして個々に命名し、74mph=32.7m/s以上は最大風速でCategory1から5までのHurricaneとしている。世界のCycloneの軌跡を重ねた地図を見ると、日本の南方海上が世界一の台風銀座である。次いで米東海岸の沖、次に南CaliforniaからMexicoの西沖にHurricaneが多い。南半球ではTahitiから豪州北部を経てArabia半島までがCyclone地帯である。しかし米西北海岸・南米・AfricaにはほとんどCycloneは来ないらしい。

 Cycloneは海水面の熱エネルギーを食って発達する。海水が蒸発し、周りから吹き込む風で湿った空気が上昇すると冷やされて雨になる。その時放出される熱で空気は暖められ、更に低気圧となり、周辺の水蒸気を巻き込む。上陸すると海水からのエネルギー供給が絶え、急速に勢を失う。

 海流は北半球では大洋を時計回りに巡る。南で温められた海水が時計回りで日本に来るのが黒潮で、それが北で冷やされて米西海岸を洗うから、San Franciscoで霧が発生する。だから台風は黒潮で力を付けて北上するが、San FranciscoにHurricaneは滅多に来ない。同様の原理で米東海岸はHurricaneに襲われるが、米内陸は安泰だし、欧州には滅多に来ない。

 米Laurence Livermore国立研は、地球温暖化で1970年以来世界の海面温は0.6度上昇したという。米National Center for Atmospheric ResearchのTrenberth氏がCycloneのSupercomputer Simulation Programを開発し、海面温が0.6度上昇すれば蒸発が盛んになりCycloneが大きく成長し降雨量が8%増加するとした記事をScientific American誌7月号に掲げた。加えて2004年暮から2005年春にかけてEl Nino現象があり、熱帯大西洋では晴天が続き風も弱く海面から熱を奪わなかったため、海面温は0.6+0.2度上昇した。2005年夏になると逆にLa Nina現象が生まれ、中米付近の高気圧が北米の偏西風を北寄りに押し上げたため、HurricaneはMexico湾に入って来易くなり、Mexico湾の高温の海面からエネルギーを貰って強烈に成長したのがKatrinaだという。2005年8月にFlorida半島を横切ってMexico湾に入った時には最大風速33m/sに過ぎなかったが、Mexico湾の高温の海水からエネルギーを貰って海上で77m/sにも発達し、67m/sでNew Orleans市を襲った。なお翌年2006年の夏には再びEl Nino現象が顕著となり、中米付近の低気圧が偏西風を南に呼び寄せ、HurricaneをMexico湾に寄せ付けなかったため、米国の2006年はHurricaneの少ない年になったという。

 日本では2004年が台風の当たり年で、前例のない10個の台風が上陸した。台風シーズンに高気圧が日本の東側に留まり、台風が東方海上に流れないで高気圧の裾野を回って全部日本に上陸したという説明になっている。2005年、2006年は日本の台風は平年並みだった。

 上記から判るように、地球温暖化は世界中のCycloneを強め、また豪雨をもたらす方向に働き、しかし被害の大小は専ら局地的な気圧配置によって上陸し易いかし難いかで決まる、という結論のようだ。    以上