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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2007年12月27日
           ダイヤモンド富士

 京王電鉄のPRに乗せられて12月20日午後高尾山山頂に登り、富士山の頂上に日が落ちる瞬間を見た。富士山の頂上は一見水平だが凹凸があるから、日が沈んでいって最後は1点となった。富士山のシルエットのテッペンに一点が赤く輝くのは想像以上に美しく感動的だった。京王線車内のポスタには、こういう「ダイヤモンド富士」が冬至前後の20日〜24日の4pm以降に見られるとあった。それを知ってしまった以上は行かざるを得ない私だった。ワイフには「そんな寒い所に行くのは嫌だ」と断られた。

 19日は人間ドックで行けなかった。幸い大過無かった。20日は新宿で仕事をして帰る電車から富士山が見えた。腕時計を見て計算すると急げば間に合う。ワイフに電話して股引を出しておいて貰い、タクシーの中でネクタイを外し、素早く着替えて同じタクシーで最寄駅に戻った。高尾山のケーブルカーでは同好の士20-30人と一緒になった。真っ先に下車して山道を急ぐ。薬王院参道では今年1年間の寄進者の名を書いた木札を打ち付けていた。昨年俄かにエコ心を起こした私の杉苗千本(1万円のこと)の木札はこれで消えた。急な階段を奥の院まで登ると、以降は比較的楽な登りだ。3:50pmに山頂に着いてみると、既に300名もの人と30脚ほどの三脚が好位置を占めており、富士山がよく見える場所に立てないかと心配になった。しかし窮すれば通じるものだ。展望台の塀の外側、石垣の肩に上って腰掛ければ、背後の塀に沿ったカメラの砲列を妨げることもなく視野が確保できることを発見した。待っていると敷いたハンカチの下からしんしんと冷たさが伝わってきて、早く時間が経ってくれることを願う。

 太陽が富士山に近付くと眩しさでモヤに霞む富士山が見えなくなったが、不思議なものでデジカメはキチンと画像を結ぶ。目を悪くしないようにデジカメで太陽の接近をモニタした。太陽は4:12pmに頂上の真ん中に接し、北半分に沈んだ。大半が隠れると眩しさは無くなり、富士山の頂上に赤い日が輝くダイヤモンド富士が見事に出現した。  21日〜23日は恐らく雲が富士山を覆っていたと思うが、24日は晴れた。態々高尾山山頂まで出掛けなくても、同じ角度からダイヤモンド富士は見えるはずだ。富士山から高尾山の延長線上に中央高速八王子ICがある。その北側の山手から見えるはずだ。感動をワイフと共有したくて誘ったら、車からあまり出なくていいならと言う。売り出し中の造成地に上った。

 待つうちになぜか太陽は富士山の頂上の北端をかすめて北斜面を転げ落ち、ダイヤモンド富士にはならなかった。富士山の火口の直径は780mだから、私共があと2-300mでも南に位置していたら頂上に日が落ちたはずで、ワイフには申し訳ないことをした。高尾山山頂でダイヤモンド富士が見える時に、数百米離れると、例えば薬王院でも、日は富士山の山腹に落ちるはずだ。それほど精密な位置取りが必要とは愚かにも夢にも思わなかった。私の失敗の原因は判った。確かに富士山と高尾山の延長線上に居たが、富士山のよく見える位置を選んだため、高尾山山頂からヘリコプタで200mほど舞い上がった位置で観測したのと同じ視角となった。冬の日は南から西に斜めに落ちるから、高尾山山頂ではダイヤモンド富士が見える時間に、山頂の上空から見れば太陽は富士山の北斜面を転がり落ちる。

 沈思黙考してExcelの三角関数を駆使し、日没の位置が季節によって真西から何度ずれるかを週単位で計算した表を作ってみた。東京周辺の北緯35.5°では、真西プラスマイナス29°の範囲だ。春分秋分付近では真西前後を足早に位置を変えていくが、冬至夏至周辺では29°未満の角度をゆっくり辿る。実は高尾山から富士山を見る角度は、真西から南に31°だ。水平線への日没は29°だが、斜めに落ちる太陽がまだ29°に至らぬ上空で富士山山頂に捕らえられてしまうから31°なのだ。因みに高尾山から富士山まで水平直線距離では55kmしかないので、2°の差は距離にして2kmに過ぎない。ダイヤモンド富士を見るためには意外に精度を要する。やはり冬至の高尾山山頂は愛でるべき位置取りのようだ。しかし真西プラスマイナス31度で富士山が見られる「さいたま市〜館山市」の範囲なら、日を正しく選べばダイヤモンド富士を見る機会があることもまた事実である。 以上