Lisa Randallという理論物理の有名美人教授が居る。出身校Harvardの教授を主とするが、UCB, MIT, Princtonにも籍を置く売れっ子だ。彼女のファンである私は、彼女の新著が出たと知って早速Amazonを見た。
Dark Matter and the Dinosaurs, Lisa Randall, 2015/10/27
待てよ、「暗黒物質と恐竜?」マヤカシではないのかと一瞬疑って内容梗概を見ると、「恐竜絶滅は巨大彗星の落下による。巨大彗星の落下に暗黒物質が深く関わっている」とあったので納得してDownloadした。次のような内容の本だった。教授は理論物理以外も猛勉したらしい。
138億年前(137億年説は古いと)に宇宙が誕生し、今は直径130k光年(k=千)厚み20k光年の円盤状の天の川銀河が100億年前に出来、45億年前に太陽系が生まれ、38億年前に地球に生命が出現。しかし天変地異で何度も生物は絶滅の危機に面し、主役が交代しつつまた生物は再生してきた。
541M年前(M=百万)以降の顕生代Phanerozoic Eon(目に見える生物の意)だけでも、440M年前(寒冷化後に温暖化)、380M年前、250M年前(シベリア火山爆発で8度気温上昇。その後恐竜誕生)、200M年前(大西洋海嶺誕生で海面低下)、66M年前と5回の絶滅の危機を経てきた。66M年前はK-Pg絶滅期(三畳紀=Cretaeous紀から古第三紀=Paleogene紀への移行期)と呼ばれ、恐竜が絶滅し以降哺乳類の時代となった。その原因はMexico Yucatan半島北端に直径15kmの彗星が秒速50km以上で落下し、地震と津波の後、火事で地球上の植物の半分以上が焼けただけでなく、埃が天を覆って寒冷化した後に温暖化ガス増加で高温になり、また隕石に含まれていた青酸化合物や鉛のような有毒物が地球全体に広まり、恐竜を含む75%の種族が死滅した。
流星現象Meteorは、流星体Meteoroidが飛んできて大気で燃える現象で、時として隕石Meteoriteが地球に激突し、岩石をガラス状に熔かして飛び散らす。稀金属Iridiumが飛び散るのが特徴だ。地球に元々あったIridiumは鉄と共に地球の核に沈んでしまったので、Iridium採掘地はほとんど隕石落下地だ。66M年前のような巨大隕石になると地球全体にIridiumが散布され、地層の年代から66M年前と特定され、濃度勾配から絞り込んだ先の地形からCraterが発見されたのがYucatan半島北端だった。
流星体の出自は、火星と木星の間の小惑星帯Asteroid Beltが小惑星流星体の源、海王星の外側に冥王星を含むKuiper Beltがあって短周期彗星の源、その遥か外側に太陽系を球形に包むオールトの雲Oort Cloudがあって長周期彗星の源とされている。地球に大災害を及ぼす大流星体はOort Cloudからに限られ、30-35M年に1度1M年にわたって多くの20km以上の大彗星が落下したことが確認されている。Oort Cloudは、太陽・地球間の距離の5万倍の遠距離にあり太陽の引力は弱い。周期32M年として2M年前に大災害期があったとすると、66M年前のK-Pg絶滅ともその他とも話が合う。
太陽系は天の川銀河の中心から半径26k光年で、240M年で円盤状の銀河(地球から見ると天の川)の中を1回転しているが、厳密には同一平面上ではなく200光年x2の幅で上下運動をしている。最初円盤の重力で太陽系が上下運動をする計算をしてみたが、周期が長過ぎたという。
ここからが教授の本領発揮だ。学界は暗黒物質は1種類で太陽系に関しては球状に固まっていると考えているが、物質同様に暗黒物質にも何種類もあって、物質同様に一部は暗黒光子(のような力の素粒子)を吸収放出して徐々にEnergyを失うという仮定で計算すると、物質よりも遥かに重い暗黒原子が出来て、遠心力で物質よりもずっと厚みの薄い円盤になると計算された。物質の円盤の中に暗黒物質の薄い円盤が入れ子になるので、DDDM=Double Disk Dark Matterと呼ぶ。DDDMがあると引力が増えて太陽系の上下振動が30-35M年周期に速まり、また円盤通過時の引力の変動が急激になるので、太陽系の外縁のOort Cloudの小天体が弾き飛ばされ、または太陽に引き込まれ、一部が大彗星として地球に激突する計算になったと。
2013年末にGAIAという人工衛星が打ち上げられ、5年計画で宇宙の物質と暗黒物質の分布を正確に測定するそうだ。それでDDDMの仮説が(否定されずに)実証されれば、これはNobel賞ものだなあ。 以上