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うつせみ
2011年 1月 1日
           電子書籍の年

 iPadが発表された2010年1月27日当日、New York Timesの2人の記者が次のような対照的な署名記事を書いた。(A)を読んだ記者が直ちに(B)で反論した形で、経営的に大変面白い論争だった。
Three Reasons Why the iPad (A)WON'T (B)WILL Kill Amazon's Kindle:
(A)は by Brad Stone: 5:57pm、(B)は by Nick Bilton: 7:05pm
なお当時のKindleは、2009/2発売の6"表示の2nd Generation Kindleと、2009/6発売の9.7"表示のKindle DXが市場にあった。その後2010/8に3rd Generation Kindleが発売された。iPadは2010/4出荷以降変化はない。

 (A)の3つの理由は次の通りだった。
(A1) The Kindle is for Book Lovers, and the iPad is Not.
本をあまり読まない人はiPadに流れようが、Kindleはe-ink表示装置だから読み易く電池は2週間もち(当時。今3rd Gen.では4週間)、価格も$259(今は$139)と安く、290g(今は241g)と軽いと。
(A2) Amazon Will Continue to Improve on the Kindle.
(A3) The Kindle Store Will Continue to Thrive(繁盛).
Kindle Bookstoreで購入するためのKindle Appは、Kindleの他 iPhone, iPad, PC, Mac, BlackBerryなどにも搭載でき、Kindle Bookstoreは繁盛する。1つの端末で読み掛けの頁を、他の端末でも開いてくれる。

 (B)の3つの理由は次の通りだった。
(B1) Content is Changing, but the Kindle is Not.
New York TimesでもWeb版にはVideoが掲載されるマルチメディア時代に、モノクロの読書だけのKindleは時代遅れと。(A1)と韻を踏んでいる。
(B2) The Kindle's Technlogy isn't Evolving Fast Enough.
(B3) The Kindle is Too Expensive for a Single Purpose Device.
2nd Generation Kindleは$259もするし、Kindle DXに至っては$489とiPadとほぼ同じ。汎用端末iPadに比べ単機能端末としては高過ぎる。

 丁度11カ月後の2010年12月27日に、(B)のNick Biltonが「俺の1月の予言記事は間違っていた」と敗北を認めた記事(C)を掲載した。
(C) Third-Generation Kindle is Top-Seller: 12/27 by Nick Bilton
KindleがiPadと競争したらひとたまりもないと1月には思ったが、Amazon CEOのJeff Bezosはそういう競争はしないと明言し、8月に3rd Generationを出荷した。同じ6"でより軽く、簡単で、安く、電池が2倍もつ機種だった。この機種は、Amazon史上トップの売上を誇ってきたHarry Potter第7巻を抜き去り記録を更新した。Bezosは「多くの顧客がKindleと(iPadなどの)汎用端末と両方持ち、Kindleで読書、後者でGame、Movie、Webなどを楽しんでいる」「$139と安いので機種選択を迷う必要はなく、必要なら両方買っている」「Kindleからでも汎用端末からでもどこからでもアクセスできるKindle Bookstoreは伸びる」と言っている。つまりAmazonは例えKindleが売れなくてもe-bookが売れれば問題ないという考えらしい。

 さて、私はその「両方を持つ顧客」だ。雑誌では同一内容の紙の出版物をダブって購読してもいる。私の評価は次の通り。
1.National Geographic MagazineはiPadで読む。写真中心に見て興味のある記事はじっくり読むという私の読み方にiPad版は向いている。日経ビジネスはiPadでは読めないので、紙またはPCだが、2本指で文字を拡大縮小し指で画面上を前後左右に移動する機能がPCには無いので、紙で読む。New York Timesなど英字新聞は、iPad用要約版は物足りないが、Web版は紙に勝る。見出しと最初の2-3行が表示された索引頁から本文に跳べる機能が能率的で良い。日本語の文庫本をiPadで読んだが紙には敵わない。
2.読書はKindle(今日本語は無いが)に限る。本が安いし、持ち運びに便利だ。単語検索ができ、単語にカーソルを合わせれば辞書が引ける。
3.Kindle/iPad共通の欠点として、「斜め読み」「読み飛ばし」に不便だ。「窓から覗く読書」では大局感が掴み難いのがその理由だ。

 SonyのReaderはKindle路線、SharpのGalapagosはiPad路線と見える。これらを加えて、2011年は間違いなく電子書籍の年になると思う。  以上