米誌Scientific American 12月号は、"Top 10 Emerging Technologies of 2018" という特集で、以下の話題の技術分野を列挙紹介している。
"Augmented Reality Everywhere" いわゆるARであり、カメラで捉えた画像に、電算機からの情報を重畳する応用分野だ。ポケモンにその機能が使われたのが、普及につながった。重畳が難しいのではなく、どういう実画像が出ているかを検知し、関連情報を持ってくるまでが難しい。一番影響が出るのは、工場のオートメの発展形のIndustry 4.0だ。
"Electro-Ceuticals"=電気信号の医療応用。痛み止め、ペースメーカー、脳を刺激してParkinson病治療、等は既に行われている。有望になっている新領域は、神経に電気信号を与えて各種炎症を鎮める使用法。薬は患部だけでなく全身に影響するが、電気信号を特定の神経に与えると、局所的に正常化のための化学物質が分泌されることが分かった。リューマチ性関節炎などに効果。携帯用の電気刺激機器が試作されている。
"Meat Grown from Stem Cells" 家畜を殺して肉を取るのではなく、家畜の幹細胞から実験室内で肉を育てる研究が進んでおり、Lab-Grown MeatとかClean Meatとか呼ばれている。数社の起業会社が、牛肉、豚肉、家禽、魚などの肉を作り出しており、Bill Gatesからを含めて膨大な投資資金が入っている。価格と味が問題だが、100g数万円までは来た。あと数年で商品になるだろう。既存食肉業者の反対や一般大衆の不安も問題だ。 "Bots That Argue and Instruct" 議論や教育ができるRobotソフトだ。昨年から今年にかけてAlexaなどのAI Speakerが普及した。自然言語認識と膨大なデータベースから成り立っている。今迄はデータベースは人手で作って来たが、IBMは、構造化されていない生データから自動学習してデータベースを作り応答するシステムを試作した。
"Implantable Drug-Making Cells" 例えばInsulinを作り続ける細胞を体内に埋め込むという糖尿病治療が注目を浴びている。
"AI for Rapid Molecular Design" 新薬剤や新材料の創作には、所要の材料の化学構造の決定と、その化学構造を作り出す化学反応の案出が必要だ。従来は推察して運を天に任せる努力の積み重ねしかなかった。しかし過去に成功し、あるいは失敗した記録を機械学習したAIが、推察を助けるようになり、百近い起業会社がAIで新薬を創出する研究をしている。例えば、Parkinson病への薬を発明しようとしている。
"Advanced Diagnostics for Precision Medicine" 20世紀には例えば乳癌の治療は誰に対しても同じだったが、研究が進んで乳癌も細かく分類され、Subgroup毎に最適な治療法が用いられるようになった。究極的には個人別ということもあり得る。糖尿病の治療も進んでいる。
"Gene Drive Gets Safety Features" 遺伝子操作技術が進んで、マラリアの流行を防ぎ、植物病を抑制し、珊瑚を環境変化に耐えられるようにする、ことなどが可能になって来た。Gene Driveとは、改変された遺伝子が子孫に広く伝わることを言う。その安全性を担保する規則が出来つつある。Bill Gates財団はマラリアと闘うGene Driveに巨額の投資をした。
"Finding Toxins with Plasmonics" ElectronicsがElectronの応用である如く、PlasmonicsはPlasmonの応用。PlasmonはPlasma=電離気体の波動の粒子であり、電磁波の波動の粒子がPhoton=光子である関係と同じ。また池の波は、水の分子の波ではなく水の分子が集合的=Collectiveに波動する。同様にPlasmaでも電離気体が集合的に波動する。この表題でのPlasmonicsは、金属の自由電子の集合的な波動を言う。金属に光を当てると自由電子が波動するが、金属がナノ粒子であると、その物理的サイズによって特定の波長の光を吸収または反射する。Toxin=毒素に限らないが、或る物質の上に金属ナノ粒子を塗布すると物質によって光の吸収反射が僅かに変化し、物質が微量でも検出できる。その応用が広がっている。
"Algorithms for Quantum Computers" 量子コンピュータは"1"と"0"が重畳されたQbitを操作するため、従来とは異なる計算アルゴリズムが必要だ。機械学習などの特定分野のアルゴリズムが急速に開発されている。 以上