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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2011年12月 2日
           Euroの問題点

 PIIGS=Portugal-Ireland-Italy-Greece-Spainの金融危機に際してEuroを勉強した。まずEuroは政治的妥協の産物と知った。独仏対立から2度の世界戦争に至った反省と、盟主仏の野心から、1950年代から欧州に政治経済統一への機運が生まれ、EEC→EC→EUと発展して来た。その欧州で西独の発展が目覚ましく、西独Markが欧州の国際通貨になっていくことを懸念した仏が、欧州単一通貨を西独に持ちかけた。それを介して西独に発言権を行使したい意向があった。西独は折角上手く行っているMarkの通貨政策をおかしくしたくないから反対した。仏Mitterand大統領は露Gorbachev大統領に、東西独の再統合に反対するよう働きかけたが実らず、西独財務相をElysee宮に呼び付けて、西独が頑ななら独の占領を終了せず独の再統一(1990)にも反対すると脅し、西独の単一通貨への妥協を引き出した。

 要は独仏の対立であり、後には努力型のゲルマン民族(独・和=オランダ・オーストリア)+北国(フィンランド)と、現世型のラテン民族(仏・伊・西=スペイン・ベルギー)+南国(希=ギリシャ)の南北対立が現在でも続いている。Club Med Countriesという呼び名もあって、Club Med設置国でもありバカンス指向でもある希・伊・西・アイルランド・ポルトガルを指すそうだ。独は、解雇容易な非正規雇用の公認など労働者に犠牲を強いる労働改革で競争力を付け、財政赤字は最小限に絞り、政治から独立した中央銀行にインフレを抑制させ、経済発展を実現している。南は古き良き慣行を政府支出で支え、中銀を政治的に動かして資金を調達している。

 独は、通貨だけ統一しても財政政策が各国に残ってはうまく行かぬと反対したが、仏に脅されて妥協し、過剰消費国を念頭に参加各国に厳しい条件を課すことで代用することにした。1992年調印のMaastricht条約(和の都市名)では参加国は、@財政赤字<GDPの3%(2011年希は9%予定、2010年度日は9.3%)、@累積債務<GDPの60%(希150%、日220%)、@中銀は財政赤字を引受けず、@財政破綻しても他国は救済せず、などを定めた。

 こうして1999年元旦に各国通貨の為替が固定されて計算上のEuroが生まれ、2002年元旦にEuro通貨が発行された。10年間は大成功で、dot comバブル、9.11、中東戦争、米国発金融危機を乗り越えた。これらの危機でEuroまたはその前身に加入していた小国はショックを免れた。それを過保護と後悔する人も居る。加入していなかったアイスランド・ハンガリーは深刻な危機に巻き込まれたが、通貨を切り下げて再建に成功した。

 希は過保護組で、中東欧の欧州経済参加で国際競争力を失ったにも拘わらず対策を取らず、公共工事、健保、年金を充実して景気をつなぎ、財政赤字を肥大化させた。希単独より格段に低利で外資が導入できるようになり、国内需要が喚起され、輸入が増大して国際収支が大赤字となった。2009年10月に政権交代した首相が、Goldman Sachsの入知恵で隠されていた財政赤字があり、GDP比6%という従来報告は実は倍以上だったと白状したため希の返済能力が疑われ、希国債は年利20%にもなり、独自の外資調達が不可能となり、Maastricht条約ではやらぬことに決めた支援を受けることになった。続いてポルトガル・アイルランドも支援を受けた。

 希はEuroを脱退すれば通貨切下げで競争力を回復できるのだが、Euroに留まる限りそれは不可能で、労賃引下げしかない。しかしそれは民衆の大反対で実行困難だ。現状で支援金を幾ら注ぎ込んでもキリが無いと、北は安易な支援に反対し、南は北の説得にやっきになっている。仏は、Euro圏全体で分担償還するEuro債券を発行して救済資金を集め易くしたがっている。Merkel首相は机を叩き強い口調で反対した。本質的な独仏対立だ。

 当面はギクシャクしながら妥協を重ねるしかあるまい。しかし希は多分やがてEuroを脱退せざるを得ないはずだ。希が契機にはなったが、Euroの本質的な問題が浮き彫りになった以上は現状のEuroが将来にわたって継続するとも思えない。しかし根本的な改組は難しそうだ。空中分解するだろうと言う人もあり、North EuroとSouth Euroに二分するだろうと予想する人も居る。ローマ帝国とゲルマン民族大移動の対峙以来、アリとキリギリスが一緒にやろうという壮大な実験は遂に実らないのだろうか。 以上