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短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

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うつせみ
2004年11月13日
             秋の色

 深まってきた秋の色を探すドライブにワイフと出た。住まいのある八王子にはイチョウ並木が多い。緑の葉がかなり黄ばんできた。日当たりによっては葉が全部鮮やかな黄色に変わった木もある。八王子ICから中央自動車道に入る。高尾の山にも秋が来ている。クヌギやコナラなどの落葉樹が黄色く、ケヤキなどの葉が茶色や赤く彩りを添え、山腹が錦になっている。風が吹くと山腹に落葉が舞うのが見える。上り線と下り線が段違いになっている石垣にはツタが這っていて真紅の葉で覆われている。

 小仏トンネルを抜けて相模湖の畔を西行すると、サクラの紅葉が目立つ。サクラは種類によって、ロクに紅葉せぬうちに散ってしまう種類とか燃えるような紅葉を見せてくれる種類とかもある。古い人家にはケヤキの巨木がある。ケヤキは例え近くに並んでいても、まだ緑を残す木から、黄色になり始めた木、紅葉の木、枯葉の木まで、異なる段階が共存する。恐らく他の種よりも変化が早いのではなかろうか。上野原の掘割の斜面には銀色に輝くススキの穂が一面にあった。あの穂が飛んで芽が出るとあちこちで除草が大変だなあと思う。その中にハッとするようなウルシの紅葉があった。談合坂の辺りは標高が高いだけに秋が一層深い。

 大月の町を見下ろす岩山の城跡である岩殿山はサクラの名所だが、今は紅葉だ。中腹のお寺のような建物に添うように真黄色のイチョウがスックと立っている。ここの城主が峠まで寄越すはずの出迎えが来てないことで運命を知った武田勝頼が自害したと伝えられている。大月ICが出来た時に切り出した斜面にサクラを植えた桜山がある。期待通りの紅葉の山になっていた。赤く色付いたケヤキが遠望される笹子町を眼下に見ながら笹子トンネルに入る。甲府盆地に入ると直ぐ目につくのがブドウ棚の紅葉だ。八ヶ岳では例年赤い山ブドウの葉が黄葉の唐松に絡んで見事だが、食用ブドウも糖分のおかげで紅葉が素晴らしい。もっとも黄葉のブドウ棚もあって種類によるらしい。ニセアカシアの木々が甲府盆地の高速道沿いに多く見られる。春には真っ白な花で飾られるが、今は黄色だ。落葉が進んでいるためか半透明な黄色というイメージだ。甲府盆地から長野県にかけてクルミの木が山肌に段々多く見られるようになった。クルミの黄葉は、少し大きい以外はニセアカシアの黄葉とそっくりだ。ウルシも似た葉形だが、こちらは多くは紅葉するので混同はない。前方の山にサントリー山梨ワイナリーの建物が紅葉のブドウ畑に囲まれている。双葉から韮崎にかけてススキの穂が目立ち、クルミが多くなってきた。

 須玉ICで降りて141号線を清里に向けて北上した。最初は黄色くなり始めたイチョウ並木、その内にハナミズキらしいあらかた落葉した並木の根元に真っ赤なドウダンが続く道を上る。農家の庭に柿が鈴なりになっている。リンゴ畑に果実が真っ赤に実っている。段々と山肌が迫ってくる谷合を上れば、コナラやケヤキなどの落葉樹の黄葉が続く。国道の右下の谷間に2002年登録の道の駅「南きよさと」がある。登録の2年前からフラワーパークとして開園しただけあって花がこの時期にも盛んだ。ここの特徴は栽培者の個人名が記された野菜の直売だ。しこたま野菜を仕入れたが、後で見たら巨大な白菜\200には毛虫が2-3匹住みついていた。この辺りは唐松の黄葉の見頃だった。カトリック教会の蝋燭の炎のように並ぶ。

 更に上って清里の町に入った。夏には賑わう通りだがもう閑散としている。小海線を越えて更に上ってみると唐松が既にほとんど落葉していた。もっと標高の低い所の方が綺麗に違いないと、1998年開通の清里高原道路を下り、景観のために駐車場が設置されている「八ヶ岳高原大橋」(通称パノラマブリッジ)に至った。橋の歩道から谷を覗き込むと、もうかなり落葉していて日当たりの良い場所に1本だけウルシの紅葉があった。しかし水平展望は晩秋の絶景だった。橋よりも高い位置の稜線の唐松は陽が当たるのでまだ黄金色だ。更に標高の高い八ヶ岳の山腹も黄金色に染まっていて松の緑とツートンカラーを成している。

 週末に会いたいと仕事仲間から声が掛かっていたのを、悩みつつ非情にも断って秋の探勝に来て良かったと申し訳ないが思った。    以上