Eulogy(賛辞), Panorama, Animation, 観光案内 Eulogy(賛辞), 短編随筆, 三宅島の噴煙 Pictures of the current season
Sue's recent experiences Shig's recent thoughts 自己紹介
短編随筆シリーズ「うつせみ」より代表作 Photos of flowers, butterflies, stars, trips etc. '96電子出版の句集・業務記録

Home, 目次


うつせみGeneral
2018年 3月 2日
          新幹線台車の亀裂

 新幹線N700系の川崎重工製作の台車に亀裂が見つかり、大事故になりかねなかった重大事案として報道されている。その原因は、川重の現場が勝手に部材を削って薄くしてしまい、強度不足になったからだと言われている。こういう問題にはもっと深い原因があるものだ。何も無いのに現場が勝手に手間を掛けて部材を削ったりはしない。その原因を誰も探求しないし報道しないから、Webを漁って調べてみたら、次のことが分かった。川重Topは「現場が勝手に削りました。申し訳ありません。」と言っているが、私はJRの設計乃至指示が悪いと判断した。川重としては「いえ、JRさんのご指示を守るためにはこうするしか...」と言いたいのをグッと抑えて、自社の現場の責任にしている。現場は憤懣やるかたないはずだ。

 それを暴く報道機関が1つくらいあっても良いのだが、終身雇用制の報道機関の記者にはその眼力が無い。下らないカケモリ問題で誰が何と言ったとか資料が有ったとか無かったとか、厚労省の数字に瑕疵があったとかを暴く熱意を以て台車問題を暴いた方が、社会の実利になると思うのだが、その力が無いのは残念だ。

 1つの台車には4つの車輪が2本の車軸に付いている。台車の骨格として、2本の車軸間隔よりもやや長い「側バリ」(バリ=梁?)と呼ばれる左右2本の部材があり、車体重量はその上に乗る。1本の側バリには下方に4本の渦巻き型のバネがぶら下がっていて、2本のバネで1本の車軸を支える。その側バリのバネ取り付け部付近で亀裂が生じた。

 側バリは若干複雑な構造をしているが、話を簡単にすれば、外注先でコの字型にプレスした鋼材の厚板を2つ熔接してロの字型にしている。つまりロの字の上下に熔接部がある。その下面にバネを取り付けるため、側バリの幅よりもやや幅広の長方形の分厚い鍛造品「軸バネ座」4個を熔接し、側バリの側面と軸バネ座にプレスの補強材を熔接して強化固定する。側バリと軸バネ座との間の熔接は、側バリの熔接部に重ねて熔接する。即ち軸バネ座の外側からと、軸バネ座の中央に大きな穴を開けてあるのでその部分で合計4点で点熔接をする。そんな点熔接で強度は大丈夫かと心配になるが、この部分には引っ張り応力はなく、圧縮応力だけだから、極端に言えば糊で貼ってもよい。それに上記の補強材で固定している。

 問題はこの側バリと軸バネ座の熔接の周辺で生じた。側バリの下面は理論的には水平だが、実際にはプレス材だから下方に膨らみがあり、加えてその中央には熔接部があって盛り上がっている。そこに軸バネ座を当ててもピッタリ接することは出来ず、中央を支点にグラグラする。そこでJRが指示したのは、@熔接部は削ってもよいが、側バリは(重要構造部材だから)削るべからず。A軸バネ座が側バリから浮き上がっても、浮き上がったギャップは(端が最大になるが)1mm以内(目標0.5mm以内)にせよ。

 問題は@をやってもAが守れない時にどうするかだ。根本的にはプレスからやり直して側バリ下面の平面度を高めることだろう。だが力学的にはAはあまり意味が無い。1mmもギャップがあれば2mmあっても3mmあっても大差ない。大事なのは@の側バリを削らないことだったはずだ。

 川重の現場の立場で考えてみよう。部材は与えられている。不合格にして外注先に突き返すと作業の期限が守れない。2mmもギャップがあったらJRに見付かって不合格にされてしまう。@で熔接部を削った手が滑って側バリまで多少削り平面化しても見えない部分だからJRの検査でモメることはなかろう。という条件下で側バリを削ってしまったのだと私は思う。現場の班長が指示した内容が正しく伝わらなかったとか言っているが、多分後から付けた言い訳だ。その事情を想像して同情はするが、だからと言って車体の重量を支える構造部材を削ってツジツマを合わせるか?

 だから本件の真因は、(a)そもそも木に竹を接ぐような設計が悪い。(b)設計を認めるなら側バリのプレス加工の精度指定が悪い。(c)それも認めるとすれば、上記Aの1mm以下という指定が不要だった。(d)@Aが守れない時に川重の現場から問題を上げる情報ルートが死んでいた。(e)重要構造部材を削ってはまずかろうという常識が川重の現場に無かった。以上