TPPに反対している政治家の銅像を建てたらいいと思う。費用がもったいなければWeb上の仮想銅像でもよい。岐阜羽島駅前の大野伴睦夫妻の銅像と同様本人達は喜ぶと思うが、30年後には愚かな政治家として皆から眺められることになろう。評論家の寺島実郎氏は「貿易自由化には賛成だが出遅れたTPPはまずい」と言う。こういう人は例外だが、TPPに反対する人はまず貿易自由化反対論者だ。「何か変えようとするからデメリットが出る。今のままで行こう」という考えの反変革の国民は近年多い。文句を言っている割に、消極的ながら現状に満足しているということだ。
その証拠に、世界で吹き荒れたOccupy Wall Street的な現状不満の大衆抗議運動は日本では流行らない。世界に呼応して東京でもデモが行われたが、現状不満だけでは人が集まらないと見て原発反対を主題に掲げた。
いやその現状が確かなものならば、反変革・現状維持の主張があってもよい。グラフを見て欲しい。出典が財務省なのでバイアスを懸念しても、日本の公的債務残高は、欧州危機各国の比ではないだけでなく、最も激しく急増中である。一見して継続不可能なことは明らかだ。継続不可能な現状に消極的ながら満足して反変革を唱えても砂上の楼閣ではないか。
ギリシャと日本は何が違うのかを考えてみよう。公的債務が積み上がった経緯は異なる。ギリシャ経済は元来信用が無く国債の金利は高かった。しかしEuroに加入したおかげで低金利になった。国内金利も下がり、消費が盛んになったからインフレが発生し輸入が増えて国際収支が大赤字となった。物価指数リンクの公務員給与が上がり一般労賃に波及した。国際競争力を失った産業からの税収は減少して財政赤字が膨らんだ。独自通貨なら通貨安になって輸入が止まるはずが、Euroだから止まらなかった。つまりEuro建て国債が低金利で欧州金融機関に大量に売却された。
日本は80年代までの高成長の後90年代から名目GDPが上下しつつもゼロ成長になって20年間続いている。夢よもう一度という景気浮揚を期待する民意に応えて果敢に国債を発行して公的支出を増したのが小渕内閣だ。以降の各内閣もこれを踏襲し、とうとう昨今では歳出の半分しか歳入がない状態になってしまった。不況の今増税するとはけしからん、景気が良くなってからにすべきだ、と主張する議員が居る。フラットな経済が20年続いた後、「景気が良くなったら」とはどういう意味で言っているのか。
ギリシャ国債は、危なくなったら売り逃げる国外投資家が保有している。日本国債は国内金融機関が持っている。しかし国外だから危ない、国内だから大丈夫という通説は怪しく、要はこの国債は危ないというパニックが起こるかどうかだ。外国投資家が過去に何度か日本国債の空売りを仕掛けて失敗しているそうだ。例えば\100kの国債が市場で\99kで流通している時に「半年後に\98kで売ります」と大量に空売りを掛ける。この一時的供給過剰で値下がりが起こり不安に駆られた保有者が叩き売りを始め、\97kに値下がりしたらそれを購入して\98kで売却すれば儲かるという投機だ。今までは国内金融機関など国債保有者は乗らなかったが、消費税増税法案が否決され不安が募った上に空売りが仕掛けれられば、金融庁の睨みを恐れぬ一部の保有者が蟻の一穴となり雪崩が起きないとも限らない。
安藤美姫の4回転も浅田真央の3.5回転も、封印してから成績が良くなった。少女に出来る回転が成人になると出来なくなるのだと私は思う。伊藤みどりはずっと少女の体だったから何時までも3.5回転が出来た。周囲も本人も「以前出来ていたのだから、今出来ないのは何かがおかしくなったからだ」と考えて無理をするから益々おかしくなる。成人してモードが変わったのだ。日本経済も同じことだ。景気浮揚を狙って公共支出を増やしても経済が活性化することはなく、反って歪が生じてしまった。3.5/4回転ジャンプが出来るはずと無理をするのと同様に空しい。
世界各国に悪い循環が生じている。経済国際化→国内格差拡大→大衆の不満、アラブの春/英暴動/米座込→公共支出で経済活性化政策→財政赤字→緊縮財政→大衆の不満 というループに入っているように見える。
夢よもう一度と空しく願うのは止めて、現実を直視しよう。 以上