世界遺産

　「世界遺産を全部網羅した」本を5千円弱で買った。World Heritageは「世界伝統資産」とでも訳すべきだったのではないか。1年前に「世界遺産」の表題でうつせみを書いたのでこれは第2弾である。

　1972年のUNESCO総会での議決で、150カ国（または地域）が参加するWorld Heritage Conventionが2年に1回開催されるようになり、その下にWorld Heritage Committeeが互選21カ国で毎年開かれ、その下部組織の互選7カ国からなる The Bureau of the World Heritage Committeeが常設機関である。これらが、国境に拘らず人類が共有し未来に引き継ぐべき価値の高い(1)文化遺産、(2)自然遺産、及び(3)両者の性格をもつ複合遺産を指定する。今(00/12)世界122カ国でそれぞれ(1) 529, (2) 138, (3) 23件 が指定されていて合計690件となる。笑ってしまうのだが、その50%が欧米にある。日本には11個所あって、北から白神山地＊、日光、白川郷、京都（街全体）、奈良（同）、法隆寺、姫路城、原爆ドーム、厳島、屋久島＊、首里城であり、＊印が自然遺産、後はすべて文化遺産である。690件のうち「危険にさらされている世界遺産」World Heritage in Dangerには30件が登録されている。これには、BrazilのIguacuの滝、破壊に瀕したCambodiaのAngkor Watt、政治的に心配なJerusalem、環境悪化が進む米国のEvergradesとYellowstoneが含まれており、日本には無い。Iguacuの滝は、Brazil側とArgentina側（Iguazuと綴る）と両方指定されているが、"in Danger"リストには管理不在の理由でBrazil側だけが上がっている。Congoは指定5件の自然公園が全て"in Danger"である。

　UNESCOの予算も、企業と個人の寄付に依存したWorld Heritage Fundも、金額は限られていて、世界遺産に指定されても保存義務が増すだけでAngkor Wattのような例外を別として一般には金は一文も出ないらしい。「World Heritage in Dangerのリストに載せるだけでも保存の支援になる」と主としてUNESCOらしい精神的支援が中心である。それでも観光資源としてハクがつき国などから支援が得やすくなる。

　国別件数を見ると史跡の数に国際社会への影響力係数を掛けた様な数になっていて面白い。欧州を見ると、UNESCOの地元仏国はさすがに多く、Mont-Saint-Michel, Versailles, Seine a Paris, Notre Dame, Lyonsなど26件およびSpainとの間のPyrennees、伊国では、最後の晩餐, Firenze, Venezia, Pisa, Siena, Napoli, Pompei, Assisiなど33件＋Vaticanである。SpainではCordoba, Alhambra, Toledo, Sevilleなど最大の35件、英国はStonehange, Westminster, London塔, Edinburgh, Greenwitchなど20件、独国ではPotsdam, Koln教会, Weimar, Berlin博物館街など24件、AustriaではSalzburg市、Schonbrunn宮殿など6件、スイスはBerne市など僅か4件、チェコではPragueなど歴史都市を中心に10件、Polandでは、Auschwitz, Warsaw市など8件、RussiaではSt. Petersburg市, Kremlin, Baikal, Kamchtka火山群, Caucasusなど15件、ギリシャではAcropolis, Delphi, Meteora, Olympiaなど16件が登録されている。

　一方米州では、米国は自由の女神, Independence Hall, Smoky Mountains, Mammoth Cave, Everglades, Yellowstone, Grand Canyon, Mesa Verde, Redwood公園, Yosemite, Hawaii火山群など総出で18件、CanadaはQuebecの町並みの他は自然遺産を中心に11件＋米国との共有2件、MexicoではMexico CityとXochimilco, ピラミッド群など21件、PeruにはCuzco, Machu Picchu, Limaなど10件、Brazilでは上記Iguacuの滝と人工都市Braziliaを含む13件、などである。

　アジアでは日本の11件の他、中国は万里の長城、紫禁城、秦始皇帝の墓所、ポタラ宮などさすがに27件、韓国に7件、印度では Taji Mahal, Agra城など22件、Nepalでは釈迦生誕地Lumbini, Kathmanduなど4件、タイはSukhothai, Ayutthayaなど4件、となっている。AustraliaではGreat Barrier ReefもAyers Rockも含めて14件が指定されている。EgyptではCairo市、Abu Simbel、Pyramidなど意外に少なくて5件である。

　見てない世界遺産のみ多く一度は見たいものだと思ってしまう。　以上