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うつせみ
2012年11月23日
          超電導とHiggs粒子

 超電導は電気抵抗がゼロになる現象だ。Linear Motor Carや医療機器MRIの電磁石に実用化されており、長距離の送電線にも使われている。

 1957年にIllinois大Bardeen教授と、大学院生Schrieffer、それにIllinois大で教えたことがあるCooper教授が超電導の原理=BCS理論を発表した。この功績で3人は1972年のNobel物理学賞に輝いた。Bardeen教授はTransistorの発明で1956年に同賞を貰ったので、2度目となった。

 Spinが反対の電子2個がペアになる現象をCooper Pairという。これが超電導を惹き起す。極低温になると、熱振動エネルギーが弱まり、Cooper Pairを離婚させる力が無くなるので、Cooper Pairは安定状態となる。但し必ずしも一夫一妻ではなく、乱婚状態である。温度が上がるとCooper Pairは出来るそばから壊されるので、超電導現象は生じない。

 通常の導体内で電気抵抗が生じる理由は、導体の格子結晶の間を自由電子がすり抜ける際に、格子に振動を与えるエネルギーを電子が失うからだ。ところが超電導状態では自由電子は存在せず、Cooper Pairだけが存在する。Pairの一方が失ったエネルギーを他方が回収し、Cooper Pair群全体としてはエネルギーを失うことはなく、従って電気抵抗はゼロとなる。例えばPairの一方の電子が格子を引き寄せるためにエネルギーを失った後に、他方は引き寄せられた格子の正電荷に惹かれて加速する。

 超電導体の内部では、満ち満ちたCooper Pairと反応してPhoton=光子が質量を持つと、Harvardの美人有名教授Lisa Randallはいう。Photonは通常は質量を持たず、従って光速で飛ぶ素粒子で、電荷(磁荷も同様)と電荷の間を往復して吸引力や反発力を電荷に伝える。Cooper Pairが沢山ある中でPhotonは、電荷に力を伝えることにかまけて光速で飛ぶことが出来ない。中々加速しないからこれが質量である。超伝導体の内部では、Photonが自由に飛び回れないから、電磁力が働かず電磁波も通らない。

 宇宙の4つの力は、(1)電磁力、(2)弱い力、(3)原子核の陽子と中性子(を構成するQuark)を結び付ける「強い力」、(4)重力、である。(2)弱い力=Weak Forceは判り難い力だ。真空中に勝手に素粒子が現れたり消えたりする仮想素粒子が、偶々弱い力を伝えるWeak Gauge Boson粒子であると、中性子(または陽子。以下同じ)に弱い力を及ぼしBeta線(電子)を出させ、中性子(陽子)を陽子(中性子)に変えるBeta崩壊を起こす。

 Lisa Randall教授は、著書Knocking on Heaven's Door 16章で、Higgs粒子と上記の超電導体内のPhotonとは相似形だと言っている。この喩えで私のHiggs粒子に関するモヤモヤが晴れ上がった。即ちBCS理論--Higgs理論=Higgs Mechanism、Cooper Pairの電荷--Higgs Charge=Weak Charge=Weak Forceが作用する(電荷のような)Charge、超電導体内の場--Higgs Field、Photon--Higgs Boson=Higgs粒子、という対応だとする。

 Big Bang直後の高エネルギー状態では弱い力と電磁力は同一の力だったことが知られている。およそ250GeV以下になってから、全宇宙にWeak Chargeが満ち満ちた状態が、何も無い状態よりもエネルギーが低く安定という奇妙な事態が生まれた。これをSpontaneous Symmetry Breaking=自然的対称性の破れと呼ぶ。鉛筆を立てた対称性のある状態よりも対称性が破れて倒れた状態の方がエネルギーが低く安定なことに譬えられる。Weak Chargeが宇宙に満ちているため、(電荷には反応するが)Weak Chargeには反応しないPhotonを例外として、弱い力を伝える粒子Weak Gauge Bosonを含めてWeak Chargeに反応する素粒子は邪魔されて自由に飛び回れなくなった。つまり質量を得た。Weak Gauge Bosonは巨大な質量を得て、原子サイズ以下の短距離でしかWeak Forceを及ぼすことが出来なくなった。

 Higgs Fieldに或るエネルギーを与えるとFieldに波動が生じる。光の波動がPhoton粒子で表現されるように、Higgs Fieldの波動がHiggs Bosonを生む。CERN研の加速器LHCで、Higgs Bosonと思しき新粒子が発見されたという発表が7月にあったが、加速した陽子を正面衝突させた反応の中から新粒子が出現したのではなく、正面衝突のエネルギーが与えられた真空空間のHiggs Fieldから新粒子が出現したという筋書きとなる。   以上