脳科学者という肩書でよく出ている中野信子氏というTVタレントが居る。1975年生まれ、1998年東大応用化学科・医学系修士博士課程の医博。上位2%のIQを持つ人達の国際団体MENSAの会員だ。6月8日の朝日新聞に「脳から考える男女の差 起業の差」というコラムを書いていた。興味を抱いて著書を探し、読者迎合でない若干マトモそうな次の本を読んだ。
脳はどこまでコントロールできるか? 中野信子 ベスト新書 2014/8
朝日新聞記事と併せてご紹介しよう。
「女は物理・数学には向かない」と公言してHarvard大学長を追われた人が居たが、中野氏は「男は背が高く筋肉が多い。女は肌がきめ細かい。脳も身体の一部だから当然差がある」と脳の男女性差を認める。勿論ノッポの女性が居るように個体差は大きい。これは一般的感覚に合う。
人の「やる気」を制御するのが生理活性アミンSerotoninで、脳でこれを生成する速度は男が女の1.52倍だという。だから男は挑戦し、女は不安な未来を予想して慎重だという。また男女別は書いてないが、Serotoninを回収して精製し再分泌するSeratonin Transporterの数でSerotonin分泌量は上下するが、Transporterには、分泌量の多いL型と、約半分のS型との2種類があって、人口分布は
Sが多い | バランス | Lが多い | |
日本人 | 65% | 32% | 3% |
米人 | 19% | 49% | 32% |
左耳の上に上側頭溝があり、Communicationを司る。女の方が大きい。男はねたみ心が女より強く、競争心が強いそうだ。また知能の分布は、男の方が偏差が大きいという。つまり男は女よりも天才も馬鹿も多いと。
一方、中枢神経系に存在する神経伝達物質Dopamineは、ホルモンAdrenalineの材料にもなる。Dopamineは情報伝達を活発にし、運動調節を行い、快感・ときめきを強くする。その分泌量は20歳前後が最大で、以降10歳ごとに10%ずつ減少する。男は女よりDopamineが多いので、快感が大きく、覚醒剤・アルコール・オタク一般にハマり易い。異性に指一本触れなくても考えるだけで、あるいは写真を見るだけでときめくのはDopamineのおかげだそうだ。なお男は視覚的に女を選ぶが、女は記憶と整合性を重視して我が子を守ってくれそうかどうかで男を選ぶという。
Dopamineを受取って作用するDopamine受容体が各種ある中で、DRD4型蛋白質は神経細胞の細胞膜を貫通して外と中に出入りする。出入りの回数は遺伝子で決まる。その回数が多いと、好奇心が強く、より強い刺激を求める。株取引でHigh Riskをとり、新製品に飛び付き。国際結婚を恐れない。異性には目移りし、飽きっぽく、勝負を好む。日本人では出入りの繰り返し回数7回の人は稀で、多くの人は2-4回だという。それで日本人は刺激よりもおだやかで落ち着いた生活を好む。それに対して欧米人は7回がかなり存在して、勝負師が多い。これは移民民族に多い特長だという。
先日米某大学教授と一日付き合った間に面白い話を聞いた。民衆の健康を専門分野とし、老人学にも詳しい。収入と寿命が相関を持つという悲しい事実はよく知られていて、米国で顕著だが日本でも程度差はあるが同様だという。面白く思ったのは、学歴と寿命に相関があると明言していた点だ。そう言えば、この歳になって中学高校の同級生の健康状態よりも大学の同級生がより健康に見える。その理由の一面は勿論収入であったり情報収集力や克己力だが、より好奇心旺盛で活動的な人は長生きするからだそうだ。SeratoninもDopamineも受容体も関係しそうだ。筋肉痛を修復する際には成長ホルモンが出て、これが若返り作用を及ぼすので、偶に筋肉痛になるのは若さを保つ効果があると中野氏も言っている。 以上