先週訪れたIcelandはユニークな国だ。日本の1/3の国土に僅か33万人の人口で、その2/3が近代都市の首都Reykjavikに住む。太平洋や大西洋の真ん中には海嶺があって、マグマが噴出し海底のプレートが東西に広がっていることは良く知られているが、大西洋の海嶺が地表に出てきてしまったのがIcelandである。従って国土の中程を南北に貫く地溝帯があり、その西側は北米プレートに、東側はユーラシアプレートに属す。地溝帯は年々広がっており、数年前も岩山が突然2-3m東西に割れるようなことが起こったそうだ。6km幅の所も、30mの割れ目もある。幅30mの谷を隔てて、一方が北米に、他方が欧州に連なるとは不思議な感じではある。
地球の割れ目だから常時ではないが頻繁に噴火が起こり、粘性の低い熔岩を大量に吐き出す。国土の11%は氷河に覆われている。しばしば噴火は氷河の下で起こり、熔岩流と洪水が災害を起こしてきた。氷河は土石流で時々覆われるため、氷と土砂の積層になっている。平地のほとんどは、広大な平原状の熔岩の鬼押出しか、氷河から流れ出した真っ黒な熔岩砂から構成されている。その表面に苔が育つようになれば草が生えるから、羊・馬・牛の牧場に使える。そういう平地に農家が点在する。
この国には軍隊が無い。冷戦時代は西側の最前線としてNATO軍が駐在したが、撤収した。世界で最も平和な国の第1位だそうだ。日本国民に尋ねれば日本のランクは低いと思うが、国際的な評価は10位だとかで高い。
Icelandの電力は水力が7割だそうで、次いで地熱発電が盛んであちこちにある。地中1-2kmから高温高圧の蒸気を取り出し、日本製のタービンを回す。排気の蒸気は空中に放出するが、冷えて温水になる分もある。それを何十kmものパイプで店舗・住宅の床暖房に利用する。それでも余る排水は、熔岩原に放出し広い池にして蒸発と地下浸透を図る。シリカ=SiO2が多いとかで青白色の広大な池ができている。或る1か所では巨大な天然温泉の浴場として運営し、Blue Lagoonと名付けて観光資源としている。水着着用の男女混浴に夫婦で2時間浸かる機会があった。打たせ湯もあり、不透明な湯の色などの雰囲気は白骨温泉の露天風呂そっくりだが、ただ熔岩に囲まれた不定形の湯の池が広大で、面積が陸上競技場ほどあった。
氷河に穿ったトンネルも初体験だった。Monster Truckと呼ぶ特殊バスで氷河上を標高1200mまで登った所に斜坑入口がポツンとあり、直径4mほどの円形坑道の滑りやすい坂を下っていくと、オスの印のように直線の先に周回坑があった。坑道の壁が融けるため、常に零度に保たれる。寒い中をガイドが氷河の生い立ちや性質を説明してくれる。当初深い坑道を作ったが、氷圧が大きく自然治癒作用ですぐ縮小してしまったそうだ。今は数十mの深さで年数cmほど狭くなるとか。圧巻はクレバスを横断した部分だった。割れ目程度の簡単なクレバスは坑道の周囲に黒い筋が入っている程度で、自然に修復されてしまうという。パックリ開いたクレバスを横断すると、鍾乳洞を横断したように白い鍾乳石状の氷が多数見えて美しい。
地球の温暖化はここでも例外ではなく、数十年前の写真と比べると後退は顕著だ。後退した跡は低地だから氷河湖ができる。そこに氷河の先端から崩れ落ちた氷山が浮かぶ。南米南端や南極の氷山とは異なり、ここの氷山には噴火時の土砂流の黒い筋が入る。縞模様の氷山など初めて見た。
古い熔岩台地には10cmほどの草木が生えている。丁度ベリーの収穫時期の終わりだった。Blue Berryは日本では1m余りの灌木だが、ここでは背丈数cmだ。葉が赤橙色に紅葉していて遠目でもすぐ群生地が分かる。空色の実は大きさも味も日本と同じだ。公害とは無縁のIcelandでは野生の実を摘んでそのまま食べられる。この時期家族揃って大量に摘み取りジャムなどにして1年間楽しむという。初霜が降りると実が裂けてまずくなる。日照や風向きで既に初霜に出遭った実とまだの実とが混在する時期だった。樹形が類似しているが赤い実のBear Berryは食べられないと言われた。杉苔に似た緑の樹形で黒い実のCrow Berryは食用だ。
人口僅か33万人から、過去にMiss Universeなどの世界一の美女を3人も輩出しているそうで、長身・金髪・色白の予備軍を多数見かけた。 以上