ImagineというJohn Lennonの曲がある。このImagineを歌いたいばかりに演奏活動をしているというアマチュアバンド「Imagine」のライブを聞いた。去年8月にも聞いたので1年ぶりだ。場所はJR小海線甲斐大泉駅から八ヶ岳中腹標高1330mまで上った所にある八ヶ岳倶楽部だ。俳優 柳生 博氏が開き、NHK園芸番組で有名になった長男真吾氏が今は引き継いで経営している。「Imagine」は過去十数年毎年8月に2日間昼夜計4回の演奏をここで行っているそうだ。ワイフが八ヶ岳倶楽部の常連客と認識された昨年から招待状が届くようになり、今年は幕開けの昼の部に参加した。
顔に見覚えの無い係員に苗字を告げたら、即座にワイフのフルネームで「お待ちしていました」と迎えられたので驚いた。博氏ご夫妻の薫陶よろしく山の中には珍しい「もてなしの心」がここにはある。予め申し込んだ人は、レストランのテラス席に設けられた小舞台に近い30席ほどの無料指定席に案内される。私共はそこで昼食を注文した。テーブルを共有したのは、Webで見たこの催しのために態々島根から飛んで来られた母娘だった。ライブの故に初めてらしい客が多数来ていて、博氏と真吾氏はサインと写真のリクエストで大童だ。常連客はそんなリクエストはしない。
真吾氏の「じゃ始めましょうか」で「Imagine」の演奏が始まった。Beetlesを中心にPOPSなど幅広いレパートリを各メンバが分担し、1時間半の長丁場を休憩無しで続けた。リーダを含む男性のGuitarist-Vocalistが2名、女性Vocal、打楽器、マリンバの5人編成だ。リーダの下田秀明氏は1951年生まれ、東京工業大学のラグビー部員、物理で大学院まで行ったが、在学中から学習塾を経営し、卒業後は自由ヶ丘など3箇所に「元気に楽しく学ぶ自由学舎」を開設、2-5名のクラスで進学希望者だけでなく問題児も教えている。季節毎に山や海で特別教室を開く。他方ギター・キーボードとバリトンで各地で演奏活動を続けている。接点がどこにあったかは知らないが、柳生家は代々「下田先生」に習ったようで、「真吾君とは呼び難いから真吾と呼ばせて頂く」という間柄だった。
塾の英語の先生がギターを鳴らしてテノールで歌い、その奥さんがメゾソプラノだ。多才な打楽器奏者が新たに加わった。昨年から加わった客員らしい小栗久美子氏は東京外語大学大学院でベトナム語を履修した才媛で、横浜でマリンバ教室を開いている。博氏の奥さんがシメの挨拶で、次男の娘マコチャンの朗読を褒めたついでに小栗氏を「美人」と称えた。昨年はベトナムの竹製の木琴T'Rungの演奏家として花の刺繍のアオザイで登場したが、今年はリゾート着でマリンバを叩いた。この美人は内気らしく滅多に目を上げず笑顔を見せないので、良い写真を撮るのに苦労した。
演奏曲目の最後は必ずImagineだ。下田先生訳の歌詞を今年は教え子のマコチャンが朗読し、Vocalist 3人が英語で歌った。歌詞を見ながら聞くと、なるほど反戦平和思想に貫かれており、元米大統領Jimmy Carter氏の賞賛も判るし、下田先生が入れ込むのも必然だ。次のURLに歌詞がある。
http://www.lyricsdomain.com/10/john_lennon/imagine.html
「天国も地獄も無い」無宗教思想で「国も殺し合いもない」平和主義だ。「財産、貪欲、飢餓がなく世界を皆で共有」する社会を希求する。共産主義の起源もこういう純粋な考えだったろう。共産理想郷を実現するにはまず反革命勢力と戦う必要があると言って"No Countries,.. ..No Greed"とはほど遠いことをやっておかしくなった。尤もLennonも"No Posessions"を歌い上げて何百万ドルも稼いだと揶揄された。Imagine! と呼びかける詩の原型はOno Yokoの詩だと言われる。2人は1973年にImagineの思想に基づき白旗を国旗とする仮想国家Nutopiaの建国宣言を書いた。人はこういう理想に強く憧れるが、それと人間の性が折り合うことはない。という意見を予想してLennonは、"I hope someday you'll join us."と歌った。
Imagineで盛り上がった会場を出て車で豪雨の道を下り始めた時、会場の仲間と見えた老婦人がトボトボ歩いていたので、最寄り駅までお乗りくださいと誘った。結局東京の稲城市に帰られる方と判り、東京までお連れした。Imagineの影響で私共の心が少し優しくなっていたようだ。 以上