人口9百万のIsraelは、3月中に16歳以上の全国民にワクチンを接種するという。Pfizer社と折衝して優先配分を貰った。「我が国の国民は全員がIDカードを持っていて、病歴、コロナ感染履歴、各種ワクチン接種日時、副作用など全て個人別に管理されている。Pfizer社にとって治験人数より2桁以上大きな壮大な実験になるはずだから」と言って、個人特定情報は勿論除くのだろうが、全データ提供の約束で優先配分の契約をしたという。日本の無用のマイナンバーカードと比べて立派なものだが、平和ボケの日本とは比較にならない厳しいテロ対策の一環でもあるのだろう。
3月11日のNew York Timesによれば、Israelでは既に人口の60%が1回以上の接種を受け、その半分は2回の接種を終わっているという。コロナの重症患者が減少し、数か月継続して来た様々なコロナ規制が解除されつつある。そこでは、接種終了またはコロナ感染後完治者を証明するGreen Passport=Green Badgeが使われている。
カフェでお茶を飲んだり、外食するのが、Israel人は好きで、それが出来るようになって自由を謳歌しているという。友達や家族と寛いで会える。外出時にはマスクは依然必須だが、意識は違って来た。レストランなどで室内で食事するには、Green Passportが必要だ。政府のソフトで携帯にダウンロードして、その携帯をレストランに見せるか、携帯からQRコードを印刷した紙を見せる。但しレストランは必ずしも全員を注意深くチェックしてはいないし、紙は自分のものかどうかは分らない。常時持ち歩くIDカード(マイナンバーカード)と照合をしている訳でもない。ただ電話で予約する時にはGreen Passportの所有者かどうかは聞かれる。客に色々問い質すことを店主は、俺は警察じゃないんだと嫌がっているという。
政府はワクチン接種を強力に推し進めて、Israelは言わばワクチンの効果の世界的実験室になっている。その中で接種者と非接種者の法的また倫理的な問題のテストケースにもなっている。接種したくない人も居て、その権利を主張している。非接種のまま先生やバーテンダーをやっていいのかは懸案だ。こういった問題は規制解除の前に解決した方が良い。
国際人権団体などは、Israelが占領している人口、特にパレスチナ人に接種の責任を持つべきだと主張している。Israelは最近国内で働くパレスチナ人に接種を始めた。彼らの多くは国境を越えてIsraelに通勤し、Israel人と一緒に働き、非接種の家族の許に帰って行くのだから、彼らに接種するのは人道的なだけでなくIsraelの保健政策でもある。
政府は、Social Distancingとマスクを条件として、ショッピングモールと美術館・博物館を一般に公開した。何か月ぶりかで、ジム、文化・スポーツのイベント、ホテル、水泳プールも開いたが、これらはGreen Passportが条件だ。こうしてIsraelは、公衆の安全、差別、選択の自由、プライバシーなどの微妙な問題に直面する最初の国になった。
保健相は、「接種は倫理的義務だ。接種しない人は取り残される」という。市によっては、非接種の先生を教壇に立たせなかったり、非接種のホテル従業員を解雇するぞと脅したりがある。専門家は、雇用者は非接種の従業員を解雇できないが、新規雇用の際に必要とあれば接種者だけを雇用することはできると主張している。これは個人の権利を若干侵害するが、有効な目標達成のためならバランスある施策は許されるとも。非接種者が公衆を危険に晒す権利はないということだ。
Israelの9百万人の人口の中で、接種の権利がある16歳以上の内2百万人がワクチンを受けようとしていない。日々の新規感染者数は4千人で高止まりしている。人口が近い東京都では周知のように、2月半ばのピークで2千人、最近は3-4百人だ。保健相によれば、接種は強制ではないが、公衆に接する非接触者は2日に1回検査を義務付ける法律を検討中だという。国が把握している非接種者名を自治体に通知できるようにするとも。
自治体はピザや菓子を用意して接種を勧めているが、それでも政府への低信頼度と、巨大製薬会社への不信が棘になっているという。 以上